魔王、ペット(犬)小姓を得る





 噂を聞いた我らが家長(?)信長様は供も連れず、一人馬を駆って最前線へと向かいました。

馬に乗るとき一人だと箔が付かないなぁ、と一人思ったのは秘密です。

けれどもきっと今までに歴史の中でしか知ることの出来なかった様々な将達に出会えるでしょうからとっても楽しみで心が浮かれていました。


「クク・・我が傍らに相応しいものを・・・・な。」


信長様はとりあえずはぐれなかった光秀と秀吉は居て当然なので頭数に入れません。

それに彼らを常時傍らに置くことはできませんでしたから、やはり傍らにいてなんにでも興味を持ってくれる人が好ましいのです。

お蘭と別れたのもまた一興。

信長様は高笑いをしながら雑魚兵を蹴散らしていきました。




 信長様は突然飛ばされた別の世界がいたく気に入っておりました。

西洋から渡ってきた読み物の中にはそのようなたぐいの話が結構あるので、訳者を良い金で釣っては軽く一年は監禁して翻訳に当たらせたものです。

うむ、なつかしい。

信長様は馬の歩みを止めると傍らの城を見上げました。

規模としてはどこぞの小領主クラス、ただ地面が焼けていることからどこからか持ってきたか、それともまがい物か・・。

「クックククク・・・・。」

信長様的には笑いが止まりません。

その場で大笑いを始めてしまったものですから連れている歩兵達がどよめきだちます(まぁいつものことですが)。



ともあれ、小姓が必要です。

小姓とは言わなくても傍らに連れて損傷のない者。

というかお濃はどこいったんだ?まぁ彼女のことだから女王様にでもなってるだろう、美形を侍らせて。



 「というかー信長様ー、」

「うん・・・?猿ではないか、いかがしたのだ?」

行軍が止まったのでもしかして、と思った秀吉は割合と近くにいたので様子を見に戻ってきたのでした。

そして案の定、思考の中へトリップした主が高笑いして兵達がドン引きしている始末。

秀吉としてもこの信長に突っ込みを入れられるか、ともかく一緒に笑うことのない側使いが欲しいところ。

「いいかげんに先に進んでくださいませんかー?・・・もう、話すすみませんぞー?」

「くっくくく・・・で、あるか。」

クッククック笑ってる信長様(鳩ではない断じて)にとりあえず言うことは言ったと秀吉は元居た場所へ戻っていった。

しかし信長様は真顔になると「いいかげん進まなくてはな・・・。我が崇高な目的のために・・・。」誰にでも言うともなく、やっと行軍を開始しました。

目指すは襄陽城です。



 暫く行軍していると、信長様の片眉がひょいと上がりました。

そして馬の腹に蹴りを入れると一気に走って言ってしまいました。

「来る・・来るぞ・・・・フッフフフフフフ!!!」

高らかなフフフ笑いと共に走って行かれた先には、さて。








 「はぁ・・・まだ拙者はここで死ぬわけにはいかないのに・・・!」

斬っても斬ってもきりがない!それに早く城へ戻らないと黄中殿が落ちてしまう!

ああ・・もう手に力が・・・!!

視界もぼやけて・・・・。

けれども周りにいた敵兵達はバタバタと倒れていきました。

誰?!

何とか顔を上げてみれば黒馬にまたがった漆黒の人がこちらを見ていました。

そしてその人は襄陽城の敵を蹴散らすと言ったのです。

「うぬらの命・・・信長が拾うてやろう。」と。

主もおらず、なんとか所領を守っていたものの敵兵は絶えず壊滅寸前だったのに。

この人は少ない手札と共に一気に片を付けて仕舞われた、遠呂智軍の配下になってしまった曹魏の将を敗走させて。





 「拙者、名を関平と申します!あなた方のおかげで危機を脱することが出来ましたっ!」

「まったくもってのう!儂らじゃぁ防ぎきれませなんだわい!儂は黄中と申しますわ。」


信長様達は戦の片が付くと襄陽城へと招かれ、やっとまともに彼らと顔を合わせました。


「ともあれー儂らはお察しの通りはぐれたものではありますわい。しかし今後とも、お力になれるようでしたら嬉しいですのう!のう関平やぁっ!」

「はい!黄中殿。信長様達とお会いできて関平、大変うれしいです!!」


関平という、まだ少年と青年の間のような眼差しをもった彼は大きな信長様をみあげました。

大きな目をキラキラさせて、そして口は大きく笑みを象っていて。

極めつけは、耳と尻尾。

ピンと立たせた三角耳とパタパタ揺れるふさふさの尻尾。


「これぞっ!!!」


その声は爆弾のように爆ぜました。

そして耳がキーン!となっている関平をだっこすると頭をワシワシ撫でたのです。

というか信長様、抱き方が犬抱きですぞ!


「まさにこれっ!此度の戦、無駄ではなかったのう・・・フッフフフフフフ・・・・ハーッハッハッハッハッハ!!!!」




パキン、と場が凍ったところで関平はその腕の中でたくさんの?を浮かべて凍り付いている諸将を見下ろしていました。



「さて・・・此度は関平(ペット兼息子)とそのじじぃが手に入った。・・・次は・・・娘か息子かのう・・・・クッククククク・・・・・。」




これより信長公の華麗なる疑似家族探しの旅が始まるのでございますが、続きはまたの機会で。

さてときなん。