−愛月−








織り姫:「かの人は歌った、愛逢月(めであいづき)に待ってます」

牽牛:「私は歌った、涙雲が貴女を連れて行く」

牽牛:「別れの言葉などいらない」

織り姫:「分かっております愛しい貴方」

牽牛:「朔の夜はそなたが隠れる」

織り姫:「わたくしにはどうしようもないのです」

牽牛:「またそなたに触れたい」

織り姫:「またあなた様の腕に抱かれたい」

牽牛:「ああ、なんということだ。私はそなたを守ることが出来なかった」

織り姫:「いいえ、私は貴方に救われました。わたくしにすべてを与えてくださった貴方」



牽牛:「私は大帝から光を奪ってしまった」

織り姫:「・・・わたくしは働く者達から希望を奪いました」

牽牛:「愛している」

織り姫:「愛しております」

牽牛:「今すぐ抱きしめて  川に零れ落ちる涙を止めたい」

織り姫:「今すぐ抱きしめてください  わたくしが消えてしまわぬよう」



牽牛:「私たちの間を分かつ川よ」

織り姫:「わたくし達の悲しみを届けておくれ」

牽牛:「鵲たちよ、私達の悲しみを伝えておくれ」

織り姫:「鵲たちよ、私達の幸せな記憶を紡いでおくれ」」



牽牛:「ああ、もう時が終わってしまう」

織り姫:「どうか、どうか天浪にお聞き下さい  わたくしがどうしているか話してくれます」

牽牛:「天浪に聞こう  私のことは昴に訪ねよ」

織り姫:「見えなくても忘れないで、わたくしのことを、わたくしの姿を」

牽牛:「聞こえなくても忘れてくれるな、伝えてきた私の言葉を」