♪光と影の Reality 一瞬の中のEternity〜♪
『乾いた心と体に! 飛び出せ、野生の力っ!! 四ツ矢サイダー!!!』
♪野生のソウル解き放ち 俺は俺を越える〜♪
『・・・今こそ、自分を越えろ・・・!!』
「あ、このCM、」
「ん?宍戸ぉ、これがどーかしたのか?」
「あ〜いや、この曲がよ〜。」
「あ、いいよなぁこれ。ロングバージョン見たことあるか?」
「いやねぇ。岳人は?」
「まだ一回しか見たことねぇけど・・・、曲とCMがあってるよなぁ。」
「だよなー。モデルも言ってることもかっけーし。・・てか誰が歌ってるんだろー。」
「今度オンエアされたらみてみよーぜー。」
「だな。」
謎
それは帰り道での出来事。
たまたま電気屋のディスプレイ用液晶テレビがおなじCMを流していました。
とある清涼飲料水のCMの、二人が気になっているテーマソング。
壮大感溢れるさわやかなサビ部分がメインで使われいる曲で、ロングバージョン内で聞くことのできる出足はどう聞いてもロック調の音楽。
そんな一風変わった音楽を気に入った宍戸亮と向日岳人。
次の日の部活で彼らは注意深く見たそのCMについて話を始めました。
「で、宍戸見た?」
「あ〜みたみたロングの方な。かっけーなぁあれっ!」
「だろだろー?でもKEIGOなんてな〜。」
「そーそー。」
「なん?自分ら跡部の話か?」
「違うぜ侑士〜。何が悲しくて跡部の話なんかしなきゃいけねーんだよー。」
「CMの話だって、四ツ矢サイダーの曲?あれいいなって話。」
「あ〜自分らもそうおもったん?」
「忍足も?」
「そうや。あ〜、それでKEIGOか。」
忍足が遠い目をして何気なくみていたCMを思い出します。
CMの中では“♪KEIGO”としか表記されておらず、ネットで検索してもこの曲が『Wild Soul』という曲だということしか解らなかったと二人にいいました。
そこへやってきたのが宍戸スキーの鳳。
彼はいきさつを聞くと、その問題の清涼飲料水を飲みながら携帯を取り出しました。
勿論部活中は携帯禁止なので部長跡部に知れたら大目玉を食らいますが、そこは鳳。
「俺も気になっていたんですけどね、オ○コンで視聴できるようになってたんですよっ!」
そういっていそいそと携帯を弄って「じゃ、かけますね☆」といって、はいスタート。
エレキバリバリのハードロックな前奏がかかりました。
♪がんじがらめの枠の中に 嵌る気はさらさらないのさ
体裁(かたち)ばかり気にする街じゃ はみだすくらいがちょうどいい
「お、かっこいいじゃん☆」
「ですよね!宍戸さん!」
「し、うっせえ。」
♪〜いつでもTly to win〜
ちゃ〜ちゃ〜ちゃ〜ちゃ〜ちゃっちゃちゃ〜♪
「てめぇらなにさぼってやがるっ!!!」
「「「「わあっ!!」」」」
いよいよサビというところで真後ろから怒鳴りあげられた4人が恐る恐る振り返れば、文字通り、頭に角を生やした我らが跡部部長様。
「俺様の目から逃げられるとおもってんのか・・あーん?」
「違うって跡部!小休止言われたから俺たちCMの話してただけだって!」
「CMぅ〜?」
跡部様視聴中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・な?かっこいいだろ?」
曲が終わって宍戸は嬉しそうに言いました。
しかし跡部はむっすりしたまま。
去り際に「おまえら外周30したらあがっていいぜ。」と爆弾を落として4人を凍り付かせるとさっさといってしまいました。
・・ちなみに時刻は部活終了30分前で、アップ時に20周走ってもいました。
その日の晩。
「いてててて・・・くそくそ跡部めー!」
「横暴だよなぁ・・・・。」
「お若いお二人さんもう筋肉痛なん?ええなぁ。」
遅くなった二人は学校に近い忍足の家に押しかけていました。
ちなみに泊まりです。
学会で出張だとか急患で医者が研修医しかいないとか様々な理由で忍足の両親は留守がちなのを良いことに入り浸っていたり。
そして午後八時。
忍足姉も外出のようで、リビングでまったりしていた少年達に声を掛けました。
「ほなガキ共ー、大人おらんくなるけどええ子にせぇやー。」
口は悪いですが美人で忍足そっくりの姉は3人の頭をひと撫でするといいました。
「おねぇ、オール?」
「せや、飲みとカラオケ。」
「いってらー。」
と、玄関へ向かった姉がいいました。
「そういや今日の○ステ、例のKEIGOがでるらしいで?侑士気にしとったやろ。」
「そうなん?せやけど今日のテレビ番には何も書いてへん。」
「話題のあの人って書いてあるやろ?」
「ほうか・・・おねぇもたまにはええこというやん。」
「ほないってくるわーv」
そしてリモコン権をもっていた岳人がチャンネルを変えると○ステは始まったばかり。
しかし珍しく速攻で歌が始まるようで司会者は
『今夜は飛ばしますよー!早速行きましょう!一曲目はCMで再び話題沸騰!昨年に続いて堂々のオリ○ン上位ランクイン!!』
『今年も来ましたねー。KEIGOでWild Soul!!!』
前奏に乗せ、早口でいうと真っ黒いステージにバッとライトが照らされ、中央に立つKEIGOが現れました。
そして、
「「「あとべー!!!!!」」」
その絶叫は非常な音量であり速攻で周りの家々から内線で苦情が殺到しました。
そのくらいの音量だったのです。
テレビに映った跡部はサビの部分に併せた白シャツのさわやかさと、出だしのハードさを表すようにごっついブーツを履いた姿でした。
・・・というか白い賺し柄の入ったサテンのシャツに(胸腹チラあり)黒いデニムにブーツ、アクセサリーにスパイスを利かせた灰色に近い淡い黒の髪・・・。
あれはいったいどうしたものかと3人は首をひねります。
しかし泣きぼくろの位置といい、どうみても彼らのよく知る跡部景吾。
名前もKEIGOときているし・・・。
首をかしげたまま翌朝を迎えた3人は問題の跡部景吾に聞きました。
ついでに言えば茶金髪に青い目の我らが部長様です。
しかしバッくれるだけ。
らちがあかないと朝練の為にコートへはいった忍足・向日ペア、コート待ちでベンチに座った宍戸。
その隣に跡部が座ると彼は何か言いました。
しかしよく聞き取れません。
「跡部ー?なんて言ってんだよー。」
自分の方を向いて言ってるのだから対象は自分だろう。
宍戸はそう思って真横に座ると耳を近づけました。
♪・・・・光と影のReality 一瞬の中のEternity この手に掴めないものはない〜♪
「!!!!」
酸欠状態の魚みたく、口をぱくぱくして跡部を指さす宍戸。
常ならば「人を指さすんじゃねぇ。」と一活して手が飛んでそうなものですが跡部は優雅に足を組み、楽しそうに何かを口ずさんでるご様子でした。
そしてとどめ。
「やっぱてめぇじゃねーか!!!!」
そんな宍戸亮の大音声はコート中に響き渡ったわけでございます。
「ぁあ?・・・俺様の生声、アカペラを独占できたんだぜ?嬉しくて天にも昇る勢いだろーが。あーん?」
大胆不敵に笑う跡部様。
後日、忍足と向日にもばれた跡部様でしたがすでに二枚目のアルバムだということを聞かされて頭を真っ白にしていたのを目撃されていました。
オリ○ンもtop10内で、音楽に詳しい人なら名前だけは知ってるほどの知名度。
しかし本人曰く、顔を出したのは初めて。
「俺様の余りある才能だ。・・・俺様の美声に・・・酔いな。」
この決まり文句と共にその日の朝練は終わりました。
時は過ぎて放課後。
あるCDショップでKEIGOの1stアルバムと出たばかりの2ndアルバムを手に、
2枚買ったら6千円かっ飛んでしまう、と買おうか買うまいか悩む宍戸の姿が見受けられました。
おわっとく。