(夜。大きなビル。下から上へとアングル。) 
 





(暗いオフィス。鳴り響く警報機。画面は右方向にカメラが動く。)







 (カメラ停止。男が怪人に首を絞められている。)







 山田 純二:うっう〜。







 怪人:クハァ〜〜







 刑事:オラー!
 (ドアを蹴破って突入。)












 (カメラ引きながら、球体が近づく。)







 (地面に激突。飛び散る土砂。)







前田 公洋(まえだ きみひろ):畜生。また逃げおうせやがった。











 怪人:フジュルルルルゥ〜〜。







 怪人:フジュルラァーー!!


 




(パチンコ店前。軍艦マーチと玉の音。)







 (店内。)







 (タバコをくゆらせつつ、パチンコに興ずる男。左手をせわしなく動かす。)
 荒羅 虚仮太(あらら こけた):あれ?玉が無い。玉が無いぞ。






 (パチンコ終了。手前、虚仮太の頭。画面徐々に引き。)







虚仮太:ふざけんなや!ワシの三千円返せ、コラ!
 (パチンコ台に罵声を浴びせ、叩く。)






 虚仮太:まいったか。まいったか、この野郎。







 虚仮太:ごめんなさい。







 (子供たちの歓声。タバコの煙。画面下にずらす。)







 (公園のベンチに腰掛けている虚仮太の後姿。)







 (ボケーッと虚空を見つめたまま微動だにしない。タバコの灰が落ちて、タバコを吐き捨てる。)







 (箱にタバコ無く、放り捨てる。男女のいさかいの声が聞こえる。)







東海林:オイ!どうしてくれんだ。







 東海林:俺の一張羅にアイスぶつけやがってよ〜。
 希美:すみません・・・。
 東海林:謝って許してくれるような青少年に見えますかってんだ。
 希美:どうすればいいんですか。
 朋子:ちょっと何言ってんのよ、希美。



 東海林:アフターケアも含めて、今日一日俺等と付き合ってくれたら許してやるぜ〜。
 天毛:ウヘへ。






 朋子:アンタ達いい加減にしなさいよ。それ以上イチャモン付けると痛い目にあうわよ。
 希美:とっ朋子・・・。






 (虚仮太、立ち上がる。)







 東海林:痛い目にあうんだとよ。
 天毛:こわーい。






 (女子高生、チンピラの頬を平手打ち。)







 東海林:テメエー!
 虚仮太:ちょっとすんません。
 天毛:何だてめーは。
 虚仮太:いや、ちょっと。
 天毛:邪魔すんじゃねえー!



 (スティーブン・セガールばりに天毛を投げ飛ばす。)
 天毛:イヤーッ!
 東海林:おい、何しやがる。
 (東海林、虚仮太の肩をつかむ。)




 東海林:イテテ・・・。







 東海林・天毛:チクショー!覚えてやがれ!







 朋子:ありがとうございます。しつこく付きまとわれて困っていたんです。助かりました。







 (虚仮太、突然しゃがみ込む。)







 虚仮太:うひひ。タバコ、タバコだ〜。







 女子高生達:しけもく、しけもく男よー!
 (後ずさりする女子高生。)
 虚仮太:ワシのモンじゃ。ワシのモンじゃけんね〜。





 女子高生達:イヤ〜〜〜!!







 虚仮太:う〜ん。うめぇ〜。







 虚仮太:ぷっは〜。
 (公園の木の背後に人影。)






 
  






虚仮太:フンフンフフン♪







 (喫茶ポエム。虚仮太、店内へ。)






                                                                                                          虚仮太:マスター、やってるかい?
 マスター:やってるかいじゃねえだろ。バイト遅刻してんぞ。
 虚仮太:しけもく拾ってたら夢中になっちゃいまして。 





 虚仮太:マスター、コーヒーちょうだい。
 マスター:そういやぁ・・・。お前に会いたいってやつが尋ねてきたぜ。
 虚仮太:誰だろ。
 マスター:借金取りじゃねえの。




 虚仮太:借金は全部、親が払ってくれたはずだけど。
 マスター:この親不孝者。ろくな死に方しねえぞ。
 (テレビがニュースを報じ始める。)
 女性キャスター:昨夜未明、山田コーポレーション社長・・・。




 女性キャスター:山田純二氏がお亡くなりになりました。警察報道によると何者かに殺害されたもようです。
            山田社長は産業廃棄物の不法投棄にかかわっているとされ、今回の事件との関連性が
            疑われています。





 女性キャスター:それでは次のニュースです。田中さん家の犬のタマちゃんが三つ子を産みました・・・。
 マスター:普通タマは猫だよな。
 虚仮太:うちの実家の犬もタマですよ。
 マスター:へえ〜。




 (夜。一人で夜道を歩く虚仮太。手前、ジュースの自販機。)







 (自販機の釣り口を探る。それから地面も。)







 虚仮太:やった!百円見っけ。







 虚仮太:ぐびぐび・・・。
 (だんだんパトカーのサイレン音が近づいてくる。)
 虚仮太:ん?なにごと。
 (自販機の裏側から物音。)




 (塀の裏側から突然、回転しながら球体が現る。)
 虚仮太:うおう!






 虚仮太:何これ!何かの撮影!
 (手前に怪人。激しいブレーキ音。ドアを開ける音。そして銃声。)





                                                                                                           虚仮太:ひぃ!
 警察:いたぞ。打ちまくれぇ!






 (思わずしゃがみ込む虚仮太。鳴り響く銃声。恐る恐る目を開く。)











 虚仮太:ど、どうも。







 警察:あっ!逃げたぞ。
 (パトカー、怪人を追って去る。)






 虚仮太:もったいね。ゴクゴク・・・。
 






 (後尾より黒煙を上げるヘリコプター。眼下に広がる密林。)







 虚仮太:和美。大変な仕事だけど、しっかり博士をサポートしてくれよ。
 平 和美(たいら かずみ):うん、大丈夫。






 和美:アマゾンだってどこだって、私のお父さんのことなら任せてよ。







 (カメラ記念写真。)









 和美:じゃ、行ってきまーす。お土産期待しててね。







 虚仮太:手紙書くから。ちゃんと返事くれよ。







 和美:虚仮太・・・・・。











 虚仮太:和美!







 虚仮太:夢か〜。
 (ドアを激しくたたく音。汚い部屋。机の写真立てを見る。)








 岡崎刑事:荒羅虚仮太さんですね。
 虚仮太:消費者金融の方ですか。あの月末までには何とか都合がつきますんで、それまで待っていただけないでしょうか・・・。
 岡崎:佐伯署の者ですが。伺いたい事がありまして・・・。
 虚仮太:年金は払えません。今からバイトなんで、それじゃ。
 (虚仮太、ドアを閉めようとする。)



 岡崎:ちょっと、ちょっと待ってください。
 虚仮太:受信料ならテレビ持って・・・・・。
 (別の刑事がドアを押さえる。)





 虚仮太:うおう!
 前田:オイッ!






 前田:手前、しらばくれてんじゃねえぞ。







 虚仮太:えい!
 前田:ギャーーーッ!!
 (ドア閉めて、手が挟まる。)
 虚仮太:ふぅ〜。
 前田:・・・・・・・。



 前田:オラー!!







虚仮太:何なんですかアナタ!警察呼びますよ。







 前田:俺がその警察だ、馬鹿野郎。







 前田:正直に答えろよ。俺の指は嘘が嫌いだ。
 虚仮太:うっ。






 岡崎:不味いですよ、前公さん。署長に知れたら今度こそ辞職もんですよ。
 前田:お前は黙って周りを見張ってろ。
 (前田、懐から写真を取り出す。)





 前田:この男、知ってるな。
 (虚仮太、うなずく。)






 前田:誰だ。
 虚仮太:石関 健一。大学の後輩。
 前田:最後に会ったのは。
 虚仮太:もう何年も会ってねえよ。




 虚仮太:嘘じゃねえ。嘘じゃねえよ刑事さん。本当に会ってねえんだ。頼むからその物騒なもんを早くしまってくれよ!
 前田:ところで、企業の経営者だけを狙った連続殺人事件は知ってるな。
 虚仮太:ああ。聞いたところによると廃棄物やら有害排水やら、悪いうわさの絶えないとこばっからしいね。





 前田:その悪徳企業共の不正の現場で、この石関って野郎が何度も目撃されてる。しかも殺人現場周辺でも同様にな。
 虚仮太:そりゃ石関が犯人だよ。決定!俺は関係ないよ。
 前田:関係ねえじゃねえ!
 虚仮太:ヒィッ。




 前田:実行犯ってのは警察の包囲網は突破しやがる、拳銃はきかねえって化け物だが、お前はそいつに会ってんだよ!
 虚仮太:えっ?
 前田:昨日の晩、奴に助けられたろうが。
 虚仮太:あっ!




 (主人公の住んでいる下宿の外観。大家のおばさんが階段を上がっている。)







 虚仮太:つうことは、あれはあんたが撃ったってことか。
 前田:うるせえー!
 虚仮太:えー!





 大家:ちょっとそこ退きなさいよ。あたしゃ、荒羅さんに用があんのよ。
 岡崎:ここはお通しできません。少ししてまた来て下さい。
 大家:アタシャここの大家だよ。やんのかい。





 前田:人殺しの化け物が、何で手前みてえなカスを庇ったりすんだ、コラ!お前が仲間に決まってんだろうが!
 虚仮太:ひどい。ひどすぎだよ。そんな言い方ってないよ。






 虚仮太:嫌だよ〜。もうこんなの止めてよ〜。
 前田:手前しらばくれてんじゃねえぞ!
 大家:荒羅さん!あんた何か月分家賃滞納してると思ってんのよ。あっ!ドアがない。このド畜生がぁ!
 岡崎:ちょっと、ちょっとちょっと。
 大家:邪魔すんな言うとろうが!
 (大家、岡崎を突き飛ばす。)
 岡崎・前田:うわおっ!

 (前田の銃が暴発。)







 (置物が破損。)







 前田:今回はこれで帰るが、次は必ず吐かせるからな。行くぞ!
 岡崎:は、はい。どうも失礼しました。






 大家:ドアも家賃もきっちり払うまで逃がしゃしないよ。
 虚仮太:善処いたします。






 岡崎:前公さん、あれはやり過ぎです。犯人と関係あるかどうかもはっきりしないんですから。荒羅を助けたことだって、ただの偶然かも
     知れないんですよ。何か確信でもあるんですか。
 前田:さあな。ただの勘だ。
 岡崎:勘って・・・。
 前田:だが、叩いて何も出ねえような身ぎれいな奴じゃねえことは確かだ。あんな犬の糞は踏み潰しちまえばいいんだよ。
 岡崎:前公さん!足下。
 前田:ん?

 (犬のウンコ。ぎりぎり踏んでない。)







 前田:おおっと!
 岡崎:危なかったですね。
 前田:よっと。
 (前田、ここで軽く前にステップ。)




 (別のを踏んでしまう。)







 







(虚仮太、ポエムへ。)







 マスター:なんだ、一段と冴えない顔してるな。
 虚仮太:起きてから災難続きで、生きてく自信が無いですよ・・・。
 マスター:ツイてるお前も見たこと無いがな。昨日言ってた、お前に会いたいってお客が来てるぞ。
 虚仮太:えっ?




 石関:お久しぶりです。荒羅先輩。







 虚仮太:あー!石関だ!







 虚仮太:おお石関。久方ぶりじゃないか。相変わらず眼鏡だ。
 石関:先輩も元気そうですね。
 虚仮太:そういえば、朝から警察にお前のことを色々聞かれて大変だったよ・・・。





 虚仮太:ヒー、ヒー、人殺しぃ〜。ぼ、僕は何も喋ってないですから。何も聞いてないですから。だから命だけは、命だけは〜。
 石関:ちょっと先輩。あわてずに僕の話を聞いてください。






 虚仮太:ごめんなさい。ごめんなさい。
 石関:実は先輩に相談したいことがあって来たんです。
 虚仮太:んっ?





 石関:うおっ。
 虚仮太:そうか、そうか。自首しようって思ってるんだな。それで俺と一緒に警察まで付き添って欲しいと。そういうことだったのか。
       お前は人を見る目がある。エライ!ところで一つ提案なんだが、俺に金を預けてみないか。刑務所じゃ使うことも無いだろう。
       もちろんお前が出て来たら十倍にして返してやる。千円なら一万円。一万円なら十万円。十万円なら百万円だ。
       ひゃ、百万円!チクショー!そんな金返せるかこの野郎。めちゃくちゃじゃねえか。オイ!こら、何とか言ってみろ!!
 石関:先輩。


 石関:ここじゃなんですから、場所を変えませんか。







 虚仮太:うん、いいよ。じゃ、居酒屋でお前のおごりね。マスター、今日バイト休みます。
 マスター:あいよ。






虚仮太:イヤー、楽しみだな酒。にしてもお前があんな大それたことやるなんてなー。
 石関:先輩は、この社会をどう思いますか。
 虚仮太:別にぃ。





 石関:僕はこの世界を変えたいんです。
 虚仮太:なになに、深刻な話?暗くなるから止めようよ。
 石関:おごりませんよ。
 虚仮太:聞かせて下さい。ぜひ!




 石関:この世界の不幸は、一部の人間の特権と利益を守る行為によって成り立っているんです。
 虚仮太:はぁ・・・。
 石関:僕は来るべき人類への幸福を導くため、そういった人々を排除しているんです。
 虚仮太:デカイね話が。




 (斜め上アングル。信号機の上にカラス。手前に風船を持った子供。奥二人が虚仮太と石関。)
 石関:大袈裟ではありません。近い将来、思想を共有する同志達が世界中で一斉に行動に出るでしょう。






 石関:そうすれば貧困も環境破壊も戦争も無い、新たな世界が誕生するのです。
 (カラス飛び立つ。)
 虚仮太:でもなあ・・・。





 虚仮太:ようは人殺しってことだろ。
 石関:まあそうですが、仕方ありません。目的のためですから。
 (虚仮太立ち止まり、石関は数歩先で止まる。)
 虚仮太:そりゃ解決できても殺人はねぇ。環境問題だって、俺等が生活するうえでしょうがない部分もあるんじゃないの。
       金儲けも開発も悪いことじゃねえよ。悪どいことやりゃ捕まるだろ。
 (石関、振り返る。)


 石関:先輩。もう手段を選ぶような時間は残されてないんですよ。







 虚仮太:見解の相違だな。んっ・・・。
 (虚仮太、前方を気にする。石関もそちらを向く。)






 (横断歩道の手前で、荷物を持ったお婆さんが力尽きてへたり込んでいる。)







 お婆さん:すみませんねえ、持ってもらって。
 石関:いえいえ。お婆さんこそ、こんなに重い荷物を持たれて大変だったでしょう。何が入ってるんです。
 お婆さん:鉄アレイですよ。お若いのに奇特な方じゃ。ナンマイダ、ナンマイダ・・・。





 子供:うえ〜ん、うえ〜ん。
 石関:どうした少年?
 子供:風船が木に引っかかっちゃったよ〜。
 石関:なるほど・・・。




 石関:よ〜し、お兄さんが今すぐ取ってやるからな。
 子供:ぐすん、ぐすん。






 石関:先輩、ちょっと荷物持ってもらっていいですか。
 虚仮太:ごめん。今、両手ふさがってる。
 石関:チッ。





 石関:よっよっ。
 (何度も小刻みジャンプ。荷物がずっしり重くて届かない。)






 石関:う〜〜ん・・・。
 (しゃがんでからの大ジャンプ。)
 石関:とおっ!!







 一同:お〜〜〜。
 (突然、女性の悲鳴。)
 女性:キャ〜〜〜!





 女性:引ったくりよー!







 石関:待てコラー!







 一同:ありがとうございました。







 みんな一斉に:ありがとうございましたーー!







 石関:いえ、どういたしまして・・・。









 虚仮太:ここにするか。
 






(夜の街の遠景。犬の遠吠え。)







 虚仮太・石関:うひゃひゃひゃひゃ。







 石関:いやー、最高。それにしても先輩変わりましたよね。もっと真面目な人だと思ってましたよ。







 虚仮太:どっこい。酒もギャンブルも好きだが童貞だぜ。
 石関:うひひひ。






 石関:先輩・・・。僕も童貞なんです。誰かいい娘いたら紹介してください。
 虚仮太:馬鹿野郎。童貞だっつうの。
 虚仮太・石関:イヒヒヒヒヒヒ。
 虚仮太:あ、小便したくなっちゃった。
 石関:僕も膀胱がパンパンだ。





 (画面手前に足。)







 東海林:登田さん。いましたアイツです。







 石関:・・・先輩。
 虚仮太:ん?
 石関:やっぱり五年前のことを引きずっているんですね。
 虚仮太:・・・・・・。
 石関:お話しないといけないことがあるんです。
 (虚仮太、背後が気になり振り返る。)






 (虚仮太、撃沈。)
 石関:せっ先輩!突然何をするんだ。






 東海林:おおっと、怪我したくなきゃ黙って見てな。
 天毛:大人しくしてなさい、メガネ君。






 登田 昇(とだ のぼる):・・・・・・・・。







 東海林:けっ、口ほどにもねえなあ。ん?
 (東海林、隣を見る。)






 東海林:げげっ!







 東海林:ぶっ!
 天毛:ぶべら!


















 登田:ぐはぁ!!







 登田:ぐっ。









 虚仮太:・・・畜生。すっかり酔いが醒めちまった。







 虚仮太:うん?コラー!







 虚仮太:これ以上すると死んじゃうでしょうがー。







 虚仮太:ヒギィッ。







 (車のヘッドライトの光がかすかに映りつつ、車が去っていく。)







 







 虚仮太:う〜ん。ん?







 虚仮太:なんじゃこりゃー!くそぉショッカーめ、ぶっ飛ばすぞー。







 平 等一郎(たいら とういちろう):やっと目覚めたようだね。
 虚仮太:貴様、ショッカー・・・。あ、石関。
 平:やれやれ思い出せないかな。実に・・・。







 平:五年ぶりと言ったところか。
 虚仮太:たっ平博士!






 虚仮太:お亡くなりになったはずじゃ・・・。
 平:確かに五年前のワシは死んだ。
 虚仮太:幽霊!





 虚仮太:ヒエー!!







 平:ごめん。ビックリさせちゃったね。違うからホラ、幽霊じゃないよ。
 虚仮太:だって死んだって言ったもん。
 石関:大丈夫だから、ね。戻りましょう先輩。





 平:ワシと和美がアマゾンの環境視察と保護のため、ジャングル奥地に向かい、その途上でヘリコプター事故に遭ったのは知っているだろう。
 虚仮太:はい。
 平:あれは事故ではないんだよ。
 虚仮太:どういうことです!




 平:実はワシの調査地一帯には、膨大な量の地下資源が眠っていたのだ。
 (ジャングル上空の画面を矢印方向に移動しながら進む。)






 平:それを知った企業家共が、金儲けの邪魔になると恐れて、







 平:反政府ゲリラを装い、ワシを消そうとしたのだ。











 虚仮太:和美は無事だったんですか。
 平:和美は死んだよ。ワシの腕の中でな。
 虚仮太:そんな・・・。







 平:和美しっかりしろ。すぐに助けが来てくれるからな。
 和美:ごめんねお父さん。せっかくお仕事の手伝いが出来ると思ったのに、迷惑ばかりかけちゃうね。
 平:馬鹿者。ワシは迷惑だなんて一度も思ったことは無いぞ。





 和美:これからもお父さんのこと、必要としてくれる人達が沢山いるんだから、絶対お仕事やめちゃ駄目だよ・・・・・・。
 平:和美。和美!!






 平:ウアァァァァァァァー!!







 平:ワシは今まで何をやってきたのか。環境保護だの人権だのと高尚なことを言いながら、自分の身はおろか、
   一人娘さえ守ることが出来ないとは。ワシは自らの非力さに憤りを覚えた。いや、非力さこそが罪悪なのだ。






 平:ワシは悟った。世界に広まる、ありとあらゆる悪を根絶やしにするため、さらに強力な悪の組織が必要なのだと。
   そして、五年という月日を費やしついに完成させた。殺人、破壊活動、テロ、すべての非合法な手段を用いて
   世界平和を実現させるための組織・・・。





 平:悪のNGO。恐怖の慈善団体。「W・P・C」「ワールド・ピース・クラブ」を。







 虚仮太:あんたのやってることは、ただの犯罪だ。
 平:そうだ。だが、和美が殺されたことは犯罪ではないのかね。
 虚仮太:・・・・・。
 平:それに、気付いていないかも知れんが、君は立派な我々の同志なんだよ。
 虚仮太:えっ?
 


 平:君はすでに我々「WPC」の手術によって、改造人間にされているのだ。







 虚仮太:ひっひどい。傷物にしたのね。許せない!







 虚仮太:保険は利くんでしょうね!
 平:まあ、そう興奮するな。君のためにかっこいい変身ポーズもちゃんと考えてある。
 虚仮太:それって気になる。





 平:仮面・・・。







   ライダー!







   ダブル・・・。







   ピースッ!!







 虚仮太:なめんなコラ!二十七にもなってそんな真似出来るか、ボケ!
 平・石関:ヒーッ!






 平:おのれえ。
 虚仮太:きゃあ。






 平:自発的に協力してもらおうと思ったのだが仕方ない。洗脳手術を始めるぞ。
 石関:博士!
 平:なんだね石関君?
 石関:もう三時です。
 平:おやつの時間じゃないか。よし、一時間後に手術だ。



 石関:今日のお茶請けは何ですか。
 平:つほみ堂の二重焼きだよ。
 石関:ワーイ!楽しみだな〜。





 虚仮太:ヤベエ。小便したくなっちゃった。あれ?







 虚仮太:トイレだ・・・。







 虚仮太:ふぅ〜。









 虚仮太:・・・・・。







 虚仮太:思い込みって奴は恐ろしいもんだぜ。







 虚仮太:そ〜〜とっ。
 (自販機。)






 虚仮太:小銭小銭・・・。







 虚仮太:小銭見っけ。・・・はっ!
 








 虚仮太:ひーひー。









 病田 凶作(やまいだ きょうさく):大丈夫ですか。







 病田:顔色が悪いですが、どうされました。
 虚仮太:少し気分が悪くなりまして・・・。
 病田:医務室までご一緒しましょうか。
 虚仮太:いえいえ。ちょっと外の空気を吸えば治ります。ですが、どうも道に不慣れでして。
 病田:じゃあ案内して差し上げましょう。
 虚仮太:助かります。


 (WPC秘密基地出入り口。病田に頭を下げる虚仮太。)







 (病田が去ったのを見届けてトンズラ。)







 虚仮太:イヤッホーい。







 虚仮太:ふ〜。ちょろいもんだぜ。







 (風圧で髪がなびく。)







 (木に鉄球が激突。)









 虚仮太:何さらすんじゃ、ワレ!







 







 虚仮太:すみませんでした。失礼します。
 石関:先輩。
 虚仮太:へ?





 虚仮太:石関!
 石関:博士はおっしゃらなかったですが、和美さんは、彼方への手紙を託してお亡くなりになったそうです。






 石関:あんたそれでも逃げるのか!







 虚仮太:俺のことは放っておいてくれ・・・。







 石関:彼方には本当に失望させられました。大人しく戻らず抵抗するようなら、僕は彼方を殺してしまうかもしれません・・・。







 石関:フジュルラァ〜。
 (石関、変身。)






 虚仮太:ま、まさか、お前が・・・。









 虚仮太:うおっと!







 虚仮太:ひっ!







 虚仮太:殺される。マジ殺される。・・・はっ。
 (心の中で平博士の言葉を思い出す。)
 平:君はすでに「WPC」の手術によって改造人間にされているのだ・・・。
 虚仮太:仮面ライダーダブルピース・・・。




 虚仮太:恥ずかしいが背に腹は変えられん。いくぞ!
       仮面・・・。






       ライダー!







       ダブルピース!!







       とおっ!
 (ジャンプ。)






 (空中で回転。)







 (着地。足元から徐々に上へ。)















 











 虚仮太:すげー!なんて跳躍力なんだ!











 虚仮太:ギャフン!







 (地面に着地し、強烈に土埃を上げる。)







 (球体から元に戻る。)







 虚仮太:ギャッ!







 虚仮太:イテテ・・・。







 虚仮太:・・・うん?
 (頭上に影。)






 虚仮太:ひえ!







 虚仮太:うお!ひゃ!ぎゃ!







 虚仮太:ド畜生〜。









 虚仮太:ウオオオ・・・。







 虚仮太:ウオリャァー!









 石関:・・・・・。











 石関:!?







 













 (足をつかまれる。)

















 (空中。)
 虚仮太:へ。どんなもんだい。






 (木がしなる。)









 虚仮太:なんだと!







 (両腕を交差して防御。)







 虚仮太:ぐっ!







 虚仮太:・・・畜生。漫画じゃねえか。

















 虚仮太:ぐあああああああ!
 (煙出る。)










 (虚仮太を見下ろしている。)







 (石関、背を向けると同時に変身が解ける。)







 







 虚仮太:・・・おい。







 虚仮太:勝手に死んだと思うんじゃねえよ。







 虚仮太:まだ終わってねえぞ。







 石関:そのまま倒れていれば助かったものを。そういうのは負けず嫌いと言うんじゃありません。







 (変身。)







 石関:ただの馬鹿だ!











 石関:グハハハハハァー!







 石関:ぐはっ!







 石関:フン!その程度。・・・え?







 石関:何ぃっ!











 石関:・・・がは。











 石関:こっこれが・・・。







 石関:これが仮面ライダーの力なのか・・・。







 石関:だが僕の・・・。







 石関:僕の正義が・・・。







 石関:僕の正義が・・・。







 石関:砕けてたまるかー!!











 







 (映像スロー。虚仮太、上体を後方に反らしながら倒れる。)













 (空中。回転が徐々に緩やかに。)







 (停止。)







 (球体で無くなる。)







 (遥か眼下に虚仮太。)







 虚仮太:ウオオオオオー!







 (ジャンプ。)







 虚仮太:ライダー!







 虚仮太:キィーーークッ!!













 石関:ガハァ・・・。
 (少しずつ石関は画面下方に下がる。)








 虚仮太:ハァハァハァ・・・。







 虚仮太:ハァハァハァ・・・。
 (変身とける。)








 虚仮太:あー、しんどい・・・。
 (虚仮太、立ち上がり振り返る。)
 虚仮太:石関、大丈夫か?







 







 虚仮太:ひっ。
 (振り下ろす途中で止まる。)
 虚仮太:うん?











 石関:ぐはっ!
 (血を噴出し、前方に倒れこむ。)








 虚仮太:石関、しっかりしろ!
 石関:・・・はぁはぁ。ダ、ダメみたいです。
 虚仮太:すまん!つい力が入った。
 石関:・・・先輩。昨日の晩・・・まだお話してないことが・・・あるんです。




 石関:僕は・・・和美さんのこと・・・憧れてました。す、好きでした。・・・だから、先輩がダメ人間になっていて・・・
     ちょっと気分が良かったです。
 虚仮太:・・・馬鹿野郎。





 石関:ガハッ!
 (大量に吐血。)
 虚仮太:石関!
 石関:・・・はぁはぁ。も、もし和美さんが生きてて・・・僕のやってきたことを知ったら・・・。嫌われ・・・ちゃうんでしょうね。




 虚仮太:和美は、お前のことをひどく説教したって、嫌いになんてなったりしないさ。







 石関:・・・そっか。・・・そうですよね。・・・安心・・・しま・・・した・・・。







 (石関、絶命。)







 (画面上方に移動。)







 (両端に木々。中央は青い空。)









 (虚仮太、倒れこみながら「ポエム」に入店。)
 女性店員:いらっしゃいませー。
 虚仮太:み〜〜〜ず〜〜〜。水をくれ〜。
 女性店員:どうぞ。
 虚仮太:ぐび、ぐび。ぷっはー。生き返ったぜ。ん?君、誰?



 前田 朋子:今日からこのお店で働かせてもらっています、前田朋子です。よろしくお願いします。
         荒羅虚仮太さんですよね。先日は助けていただき、ありがとうございました。






 虚仮太:ああ、チーマー共にからまれてた女学生さんか。何でこんな安いとこでバイトしてんの?







 マスター:この娘さんはな、わざわざお前のこと探してたんだぜ。
 朋子:はい。あの時、一心不乱にシケモクを拾う虚仮太さんを見て、本当に気持ち悪かったんです。
     だけど逃げながら私、思ったんです。もしかしたら、こんなかわいそうな人はいないんじゃないかって・・・。
 虚仮太:えっ?




 朋子:マスターに聞いたんですけど。就職もしていない、貯金も無い、彼女もいない、二十七歳にもなって
     親の脛をかじってる屑だって。
 虚仮太:くっくず!?
 朋子:だから私、決めたんです。私があなたのこと、絶対真人間に変えてみせるって!
 (朋子、台詞を言い終える前に、決意を浮かべた眼差しで顔を上げる。)



 虚仮太:ほお〜。どうやら君は、ボランティア精神あふれる、心根の優しい娘さんのようだね〜。
 マスター:朋ちゃん危ない!虚仮太から離れるんだ!






 虚仮太:さっそくで悪いんだが、この救いようのないゴミ野郎に金を少しだけ貸してもらえないだろうか。なあに五千円でいいんだ。
      なんなら三千円でもいいんだよ。す〜ぐにパチンコで二倍にして返すからね〜。






 (出した手の平をはたかれる。)







 朋子:甘く見んじゃないよ、カス。しっかり真人間になってもらいますから。







 マスター:なんだか面白くなってきたじゃないか。ハッハハハ・・・。







 (喫茶ポエムの外観。)
 三人の笑い声:あはははははは・・・。
 
 (第一話 完。)