過去のごあいさつ
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2011年のごあいさつ
 しょうりき山里公園を始めて早くも3年目を迎えました。こうして今期もしょうりき山里公園ができるのも、多くの方のご支援とご協力によるものだと本当に感謝しております。

 この事業を始める際、私なりに3年計画を作りました。1年目は「走りだしてみる」。2年目は色々「試しながら加速する」。そして3年目は「事業として離陸させる」。すなわち、今期の目標はこの取り組みを永続できるよう、事業として利益を生み出し、この事業を支えて頂いている関係者の皆様にキチンと利益還元できる状態を作ることです。

 その実現の鍵となるのが、昨年オープンした「be」という飲食店としょうりき事業との連動です。

 一つは、農家と飲食店をダイレクトに結ぶことで、お客様から見れば手ごろな価格でこだわりの新鮮な野菜をたくさん食べて頂け、生産者から見れば丹精込めて作った野菜を正当な価格で売ることできるようになります。既に市場を経由して卸されるスーパーはもちろん、産直市でさえも厳しい価格競争にさらされており、場所代や搬入・引き取り労力まで考えると採算が非常に厳しいものとなっています。これからの農作物輸入自由化の流れも含め、ここに農家の未来があると私には思えません。

 野菜そのものの販売だけで農業経営を成立させようとすると、大規模化するしかその道はありません。しかし、大規模化した場合何が起こるか想像できますでしょうか。大規模化の最大のメリットは生産効率の向上です。単一作物を広い面積で、機械化を進めて省力化し労働生産性を相当上げないと価格面で海外と太刀打ちできません。

 基本的に農作物は同じものを作りつ続けるとその害虫や病気が増え、その対策が必要になります。人手が潤沢であれば人力でその防除もできるかもしれませんが、省力化を進めた農地はどうしても農薬に頼らざるを得なくなります。もしくはハウス内で完全に外界から隔離した栽培方法(水耕栽培など)を採用するしかありません。時期を問わず完全に制御された状態でドンドン生産される野菜は工業製品として考えた方が良いと思います。

 そう考えると、大規模化出来ない中山間地域の農地で栽培される小量多品種の“旬の野菜”を相応の価格で買い取れるのは、高い調理技術を有する飲食店が最も適していると思われます。新鮮な美味しい野菜を存分に活かした料理にすることでお客様に高い満足感をご提供でき、またそのような野菜を使っていることが店の信頼感や期待感の醸成に寄与します。

 また、beにお越し頂いたお客様が野菜作りや農業体験にご興味をお持ちになれば、しょうりき山里公園にも足を運んで頂けたり、野菜宅配をご注文頂く機会も増えるでしょう。こうして、街と田舎を「野菜」と「人」と「貨幣」が循環する状況をキチンと作り、その輪を太く大きくしていくことで、事業として成立する土壌ができ、人と地域の活性化につながると確信しています。

 このしょうりき山里公園は「子どもの体験教育」と「旬の野菜をご家庭に届ける」ことを目的として始めました。2年経ち、こうして協力農家も増え、広島市内に飲食店も持ち、いよいよ事業として離陸いたします。当初の志を忘れず、変化を恐れず、細部に手を抜かず、真っ当にやっていきたいと思います。

 今年も何卒よろくお願いいたします。
20112月吉日  有政 雄一
 2010年のごあいさつ
 2010年のごあいさつにあたり、まずは2009年のお礼申しあげます。

 思えば、2008年の年末に長く離れていた故郷に帰り、相当な思い(込み?)と理屈のない使命感と根拠のない自信でしょうりき山里公園を始めました。長く音信不通だった私を多くの同窓生が応援してくれ、社会人時代にお世話になった方々に支援いただき、そして地元農家さんの温かいご協力があり、頼りになる仲間を得て、2010年・しょうりき第2期を始めることが出来ます。

 昨年、親友にこう指摘されました。
「アリさん、やろうとしていることはスゴイいいことだと思うけど、こりゃあ儲かりそうにないね」

 私もずいぶん悩みました。自分がやっていることは“私”ではなく“公”の領分なのではないか、もしくは成功した人が社会貢献でやるべきことなのではないか、一個人が徒手空拳でやることではないのじゃないか、と。本を読んだり、人に聞いてもみましたが、解など発見できるはずもありません。

 ただ、「どうしてもこれを形にしたい、事業として長く続けることがきるようにしたい」という思いは、悩めば悩むほど大きくなっていきました。行事に参加してくれた子どもたちの表情や変化、野菜の感想を送ってくださる会員さんの存在、一生懸命野菜を作ってくれる農家さん、スタッフの笑顔、それが思いの源です。

 幸い1年間やってみて、ヒントらしきものはたくさん見つけることができました。上手くいかどうかはわからないけど“やってみる価値”のありそうなこと、第2期はそれにチャレンジしていきたいと思います。具体的な内容はコチラでご確認下さい。

 私は慈善事業をやりたいのではありません。本当に良いことで価値のあるものであれば、その価値がお金に交換され、それが次の資金となり、さらに新たな価値を生む。これが継続する事業の本質だと思います。価値を感じて頂けるぐらいサービスに磨きをかけ、価値の循環を作るために、今期は“手づくり感のある野菜”に徹底的にこだわっていきます。我々なりにそれを表現し、多くの方から価値として感じていただくことができれば、この事業は大きく前進できると確信しています。

 幸い、強力な助っ人を新たに得ることが出来ました。弟の英治です。養鶏家として名が知られはじめた矢先に農業を再度勉強するため大学に入り直すという一風変わったヤツですが、情熱だけでなくしっかりとした理論に裏打ちされた野菜作りは、しょうりき山里公園の大きな戦力となってくれるはずです。

 初年度のメインであった農業体験などの子ども教育に関わることを『まなび事業』、野菜宅配などの農業に関わることを『あぐり事業』として、その両輪が事業の推進力となり、会員の皆様によりご満足いただけるよう、スタッフ一同全力を尽くしてまいります。

 今期もどうぞ宜しくお願いいたします。
 20102月吉日  有政 雄一
2009年のごあいさつ
〜しょうりき山里公園開設にあたって〜
 12歳から実家を離れ、広島市内・福岡・大阪・東京と居を移しながら昨年40歳を迎えました。大学を卒業後、リクルート人材センター(人材紹介)と、そこから独立したベンチャー企業・スピリッツ(人事コンサル)に参画し、営業・キャリアカウンセラー・社員教育・事業経営に携わってきました。結果的に人材業界に17年従事し、これまで社会人2500名以上のキャリアカウンセリングをお受けしました。そこで常々感じていたことは、なかなか自立できない人の多さでした。

 私の在籍した会社は、いわゆる幹部やリーダー候補を対象にしていたため、ご相談に来られる方の多くは高学歴で立派な会社に在籍している方でした。幼少から厳しい競争を勝ち抜いてきた、いわゆるエリートです。しかし、何かの理由でその会社を離れようと思った時に、次にどうするかを自ら決められない、もしくは誰かに答えを求めてしまう、または失敗を極端に恐れ悩まれる方々を目の当たりにしました。十分な能力を持っているだけに、本当にもったいないと感じていました。

 難しい判断が不要な仕事であれば、記憶力と要領と人柄で何とかなるのでしょう。しかし、マネジメントの責任を背負ったり、新たな事業を任されたりした時には、それだけではなかなか通用しません。また、与えられた仕事をするだけでは本当の仕事の面白さを実感できないし、収入の安定感・安心感だけでは高いモチベーションを長く維持できません。自分で考え、方針を決め、情報を集め、実践して、工夫改良し、結果が出るから、たとえ失敗しても楽しいし本気になれるのだと思います。

 本気で、楽しんで仕事をしている人は結果的に周囲から頼りにされますし、より高次の仕事にチャレンジする機会を得ていきます。そして、彼らは無変化や現状維持が大きなリスクであることをよく知っているから、成長にも貪欲です。

 そんな、前向きに自分の将来を考え行動している人にインタビューを重ねるうちに、幼少の体験や育った環境が、社会人になっても強く影響している場合が多いことに気がつきました。その人の基本となる性格は幼少期に形成されるのです。それは社会人になっても大きな影響を及ぼします。このことを直観的に感じ取っている方も多いのではないでしょうか。

 自分自身を振り返ってもそうです。たった12年しか住んでいなかった、当時の広島県高田郡向原町大字戸島7区(通称:正力地区)で、悪ガキ仲間と一緒になって野山で遊んだ経験がその後の自分に大きな影響を及ぼしてきました。工夫すれば山でいろいろな遊びができたし、稲刈り後の田んぼは絶好のグランドでした。腹がへれば食べられる木の実を見つけておやつ代わりにし、誰かからアザミの根が食べられると聞き試してみたら腹をこわしたこともありました。そこに親や先生の介在はありませんでした。

 ただ、遊びや自然の知恵を教えてくれる地元のおじいちゃん達がいました。物知りのお年寄りは僕らのヒーローでした。今にして思えば、敬い→教わり→考え→探し(試し)→学び→次に活かすという循環を自然と繰りかえしていました。実社会でも立派に通用する行動サイクルだと思います。

 子どもは好奇心旺盛で、危ないことも大好きです。わからないから興味もわくし、スリルがあるからドキドキする、たまには怪我もする。触ってはいけない虫を触ると刺されたりかぶれるのです。だからこそ知識を総動員し、五感をフルに使って遊ぶのだと思います。野山は格好の遊び場であり学びの場です。安全が確保された、2次元の、アウトプットが全てプログラムされたゲームでは決して得ることができない「大切な何か」が自然の野山にはあると思います。

 また、家が兼業農家だったので農作業は間近で見ていました。平日は仕事で遅く帰ってくる両親が、日曜日の朝早くから起き、炎天下の田んぼで汗をびっしょりかきながら草取りをしている。子どもながら米を作るのは大変だなと感じていました。稲刈りが終わり、初めて新米を炊いた時の、父親が美味しそうに食べる姿は今でも瞼に焼き付いています。ごく普通に、私は食事前に必ず手を合わせるようになっていました。

 前々職では、社員教育の責任者であったため、集合研修の企画やトレーナーを何度もやりました。知識や対処方法のノウハウ取得には良いと思いますが、結局現場の体験には敵いません。研修でいくら教えても、実際に仕事を任せて強烈な成功や失敗を重ねる方がよほど深く心に刺さるし学びます。本当に教えたい・伝えたいことがあるのであれば、用意されたプログラムを学習するのではなく、最低限の知識を与えた上で、自ら考え行動し体験できる環境をいかに用意できるかが重要だと強く感じました。

 そんなことが背景にあり、20085月に埼玉に住んでいた頃に懇意にしていた4家族(子ども名)を招き、23日で田植え合宿をしました。大人でも結構大変な苗床のトレー洗いを懸命に頑張り、普段は遅くまで起きている子が21:00にはすっかり熟睡し
6:00にはバッチリ目を覚まして朝ごはんをモリモリ食べ、何も言わなくても年長者は小さな子どもの安全を気にしながら一緒に遊んでいる等々。そんな子どもたちを見て「まだまだ子どもだと思っていたのに」というお母さんの言葉を何度も聞きました。たった3日でしたが、主催した私自身にも予想以上の学びがありました。

 これが「しょうりき山里公園」を企画するきっかけとなりました。公園といっても全く整備されていませんし、現時点では遊具もありません。ここは用意されたプログラムをこなす場ではなく、ありのままの自然と農家の営みをベースに、考え、遊び、作り、美味しく食べて、思いっきり楽しむ山里を活用した公園です。

 ぜひ季節の変化や農作業の過程を、年を通して体験して頂きたい。目が届き、ふれあいの持てる関係で運営をしたい。できれば子どもたちだけでなく、親同士も交流が持てるようにしたいと思い、不特定多数に開放せず会員制の公園にしました。ここから先はぜひ会員の皆さんにもご参加頂き、一緒に考え、話し合い、もっともっと良い環境を作り上げていきたいと考えています。


 私には子どもたちに教えたい特定の価値観や習得してほしい技能があるわけではありません。人それぞれに個性があるし好みもある。ただ、この環境の中で、いろいろな子どもたちが交わり、遊び、体験し、自分たちで作った物を食べることで、それぞれが自分なりの「大切な何か」を持ち帰ってもらえるならば、それ以上望むものはありません。

 子どもたちは未来の希望であり日本の財産です。そして自然の山や田畑には、どんな子どもにも楽しみや大事な気付きを与えてくれる、そんな力があると信じています。
20091月吉日  有政 雄一
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