ハイヒール


 東京1泊旅行で何が一番心配だったかといって、それは
 仮にも中央省庁に行くんなら、きちんとした服装しなくては・・・と思った。
 服はスーツがあるからよいとして、問題は靴。  持っているよ、もちろん。フォーマルなパンプス。
 けど、普段カジュアルシューズかスニーカーしか履かないし、大体仕事中は靴じゃないもんね。今はナースシューズ使ってるの。
 だから、
パンプスを一日履いて歩き回るなんて、すごぉい難行苦行なんだ!
 予想通り、初日の夜には足が痛くなっていた。私、右の方が若干大きいのね。右の小指にマメができかけてました。

 学生のころ。ちょっとオトナぶった気分でパンプス履いて。靴ずれができてカカトから血がでてたことがある。
 痛いなぁ・・・と思ってたけどまさか出血してるとは思ってなくて、発見した友人にあきれられたことがありました。
 「
よくそれで歩けるね!」って。
 
歩いてしまうんだよね。そういう頃ってさ
 ハイヒールのパンプス履くと、私は
人魚姫を連想する。
 王子様への思いから、声の代わりに得た足。そしてそれは、ふみしめるたびに痛みが体をつらぬく足。
 象徴的だなあと思うの。
 
恋する女の子がかかえる何かしらの痛みの象徴
 でもそれを顔にだすことなく、いつもやさしい笑顔で王子様のそばにいて、結局風になってしまう人魚姫。
 
パンプスは、オトナの女であることの象徴

 そして、
オトナの女にはヤセ我慢がつきものだ、と再確認してしまうの。
 痛くてもつらくても苦しくても、涼しい顔して背筋のばして立っている。たとえ一歩ふみだすたびに痛む足であってもね。
 でなきゃやってらんない、ってのもあるな。
プライド?

 東京旅行で、空港からの帰り道。
 私はとうとうパンプス脱いで、車に積みっぱなしだったスニーカーに履き替えた。
 そんなもんかも。
いつもすぐそばに一番心地いいものはある

 
人魚姫は、背伸びしなかったら幸せになれた、のだろうか?