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ともだち

 友だちが欲しい。
 ある日突然サチは思い立った。慣れない都会、引っ込み思案。サチは何をするにも一人きりだったので、それがさびしくなったのだ。思い立つと居ても立ってもいられない。即、ロボット派遣会社に電話する。
「ご希望のタイプをおっしゃってください」
「同世代の女性がいいな。一緒に遊べるような・・・」
「かしこまりました」
 翌日、早速友人ロボットがやってきた。ヒューマノイドタイプなので、外見は人間そのもの。美人でスタイルもいい。
「“ユリ”トイイマス。ヨロシク」
 サチはユリとショッピングに出かけたり、映画に行ったりと、喜々として飛びまわった。
 ところがユリは美人すぎた。ヒトはみんなユリを見て、サチは完璧に引き立て役。がっくりして、また電話する。
「もっと顔が地味なのがいいんだけど」
 次の“友人”マリアはよく気のつくロボットだった。が、一週間もすると疲れてしまった。何でも「私がやってあげる」と手出しされ、「一人じゃ寂しいでしょ」と片時も離れない。
 ぐったり疲れてまた電話する。
「もっと厳しいロボットはない?」
 次のはなるほど厳しかった。ある日ちょっと愚痴をこぼしたら、返ってきたのが「人間やめたら?」。迷わず取り替えを依頼する。
 しかし、こういうことは弾みがつくもので、どうもピンとくるロボットがいない。男性型も試してみたが、女心をわからなすぎたり、わかりすぎたり。受付嬢の対応も次第にぞんざいになってきた。
 意地になって、38台目を要求する。
「申し訳ございません。お客様のご要望にお応えできるような商品は、当社では取り扱っておりません」
 カっとなってサチは怒鳴った。
「なんとかするのが商売人でしょ!さっさと持って来なさいよ!あなた、やる気あんの?!」
 翌朝。
 ドアベルと同時に38代目がやって来た。今までのどのロボットよりさえない感じのファッションで、目つきもえらくきつい。失望を隠そうともせず、サチは手を振った。
「ま、5分ほど遊んであげるから、帰りなさいね。で、早いとこ次まわすよう言っといてよ」
 とたんにビンタが飛んできた。
「もうロボットはないわよ!」
 キョトンとするサチにさらに激しい言葉。
「あたしは受付やってるの。あなたみたいな人、初めてよ。ロボットはもううちの会社には残ってないわよ」
 サチはしばらくキョトンとしていたが、やおら彼女の肩をガシュっと掴んだ。
「これよ!こんなのが欲しかったのよ!」
「あたしはロボットじゃないですってば」
「人間でもかまわないわ」
 そしてポロポロ涙をこぼす。
「もういや。ひとりぼっちはもういや」
 彼女はしばらくサチを見ていたが、やがて背を向けた。サチは初めて見送るさびしさを感じた。

 数日後。部屋に閉じこもったきりのサチのもとへ珍しくハガキが舞い込んだ。サチはうつむいたきりハガキを抱きしめて動けなくなった。
『人間の友人一名いかが?先日はごめんなさい』