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手紙

 白やぎさんからの手紙を読まずに食べた黒やぎさんと、黒やぎさんからの手紙を読まずに食べた白やぎさんが、お互いの家をたずねる途中、森の広場でばったり出会った。
「あたしって、紙が大好物なの、メェ」
と白やぎさん。
「僕だってさ、メェ」
と黒やぎさん。
 結局、紙の代わりにビニールを使うことに決めてその日は別れた。ところが数日後。
「あのー、つい悪食してしまって」
 三分の一になったビニールの手紙を持って、二匹はバツが悪そうにまた会った。それなら食べられないプラスチックはどこだ、と二匹は考えて、その日は別れた。
 ところがプラスチックは光を反射してキラキラする。光るもの好きのカケスが横取りして届かない。
「困ったわねぇ、メェ」
「困ったもんだ、メェメェ」
 二匹はまた相談。今度は光らない平べったい石を使ってみることに決めて、その日も別れた。
 ところがこれには三月ウサギの郵便屋が大文句。重すぎて走れない、という。
 仕方ないので今度は布を使うことにしたが、便せん代でお小遣いが消えていく。これではたまらない、と二匹は例の広場で額と角を寄せて考えた。
 ガラスは?光るからだめ。
 皮は?布よりもっと高い。
 木の葉は?だめだめ。食べてしまう。
 それじゃあ、それじゃあ・・・
 万策尽き果てて二匹はため息をついた。それをじっと見守っていたキツツキおじさんが、おかしそうにクスクス笑った。
「おじさん、何がおかしいんだよ」
 ムッとした黒やぎさんが上を見て言うと、おじさんはクスクス笑いながら言った。
「こんなに何度も会うくせに、どうして手紙を書かなくちゃいけないんだね?」
 白やぎさんが答えた。
「だってお手紙をもらうと嬉しいもの」
「なるほどなるほど」
 キツツキおじさんはコンッと一回木を叩いてにっこり笑った。
「それじゃ、配達してもらわなくてもいいようにすればいい。そうすればプラスチックでも石でも使えるよ」
「そんなことできるの?」
「できるさ」
 二匹はまた額と角を寄せて考えた。そして決めた。そしてその日は別れ・・・なかった。
「そうさ。いつも一緒にいればいいんだ」
 黒やぎさんがにっこり笑って言った。