宇治三室戸寺


寒さも次第に緩み心地よい天気に恵まれた3月の某日、桑名市で開催された同期生の集まりに参加した帰途、久しぶりに宇治に行き、かねてから訪問したいと思っていた三室戸寺(みむろとじ)を訪れた。 

 (写真にマウスポインタ-を置くと説明が出ます)
三室戸寺・本堂 明星山三室戸寺(みむろとじ)(宇治市菟道滋賀谷)は宇治橋から20分ほど北東へ歩いた明星山の西麓にある古刹で、本山修験宗の別格本山です。同寺の大庭園は枯山水・池泉・広庭からなり、躑躅・石楠花・あじさい・ハスなど四季それぞれの花が楽しめます、今回は残念ながら時期外れで花は見られませんでした。
 
 開基は宝亀元年(770)光仁天皇の勅をうけて右少弁(※1)犬養が宇治川の支流・志津川の清淵から千手観音を発見し宮中に持ち帰った。光仁天皇は南都・大安寺の僧行表を招き、御室をこの地に移してこの観音像を安置し、御室戸寺と称するよう勅されたものと伝わる。 当寺創建以来、光仁、花山、白河の三帝の離宮となったため、この頃から「御」を「三」に改め三室戸寺と称するようになった。 以後歴代天皇の崇敬を集め逐次寺域も拡大したが、寛正3年(1462)大伽藍悉く焼失(本尊、阿弥陀三尊像、釈迦如来立像は焼失を免れる)した。その後再び寺運隆盛に向かったが、織田信長により寺領没収され衰退に向かうも、文化11年(1814)本堂の改築が成就現在の本堂はこの時のもの(この項、三室戸寺略誌参考)

(※1)…太政官の三等官で事務を司る役人

  標石      (写真にマウスポインタ-を置くと説明がでます)
蛇体橋山門三室戸寺の標石に迎えられ、戦川(※2)に架かる蛇体橋という曰くのありそうな名前の小橋を渡るとすぐ右手に受付がある。入山料500円を払い受付を済ませて参道を行くと前方に朱塗りの簡素な造りの山門が見えてくる。

(※2)…明星山の山水を集めて上流部は三室戸寺の境内流れ宇治川に注ぐ。
               
         
 (写真にマウスポインタ-を置くと説明がでます)
「ようおまいり」の石柱と「みむろどう」と書かれた灯篭本堂へ通じる石段 山門をくぐり暫く歩くと本堂に通じる最後のアプロ-チ石段があり、「みむろどう」と書かれた灯篭と、中央の「ようおまいり」と刻まれた石柱に誘われ石段を登ると正面に唐破風付重層入母屋造りの本堂(本尊の二臂千手観音が安置されている)が見える。 本堂の前庭には蓮の鉢が整然と並んでいたが、残念ながら時期的に花は見られなかった。

 
十八神社本殿、室町時代(重文)三重塔、江戸時代本堂西側の小高い所には、当寺の鎮守の十八神社本殿がある、明応3年(1494)の建立で三間社流造・杮葺(こけらぶき)で組物、蟇股などに室町時代の特徴が表れている。
本堂東側に阿弥陀堂、更にその東に元禄17年(1700)建立の三重塔(もとは兵庫県三日月町の高蔵寺にあったものを明治43年(1910)に当地に移築したもの)がある。


宝勝牛本堂右手前にある牛の像は宝勝牛といって勝運祈願の牛とのこと、くわえている玉に観音像が付いていてこれに触れると勝ち運に恵まれるとのことです。

「浮舟」の古蹟 また、本堂と三重塔の間に「源氏物語」宇治十帖の主人公「浮舟」の古蹟があります。


 同寺の宝蔵庫には、いずれも藤原時代の仏像(重文)5躯及び如来立像(ガンダ-ラ仏)が安置されいる。偶々、訪れた当日(17日)は公開日で(別途300円必要)あったが、拝観は私達2名だけであり、ゆっくり時間をかけて拝観することが出来た。
ただ、このペ-ジで写真をお見せすることが出来ないのが残念。

・木造阿弥陀如来坐像・藤原時代(重文)…三尊形式の中尊である。よく整えられた小粒な螺髪、額に白毫を嵌め、温和な表情で、上品上生の印相で、偏袒右肩に着けられた納衣の衣文は浅く彫られ、蓮華座に結跏趺坐している定朝様式の像である。
・木造聖観音菩薩坐像・藤原時代(重文)…阿弥陀如来坐像の脇侍。宝髻を結い、天冠台を付ける。胸飾を付け、左手に蕾の蓮華を持ち、右手は胸前で施無畏印を結び蓮華座に跪座(きざ)(※3)す。切れ長の目、浅い衣文の彫りなど藤原時代の様相を表す。
・木造勢至菩薩坐像・藤原時代(重文)…阿弥陀如来坐像の脇侍。像容は聖観音坐像とほぼ同じ、印相は合掌印を結ぶ。
・木造釈迦如来立像・藤原時代(重文)…縄状に巻いた頭髪、胸部や両腕を覆う衣、流水状に彫られた衣文など、京都・清涼寺本堂の釈迦如来立像を模刻したもので、一般に清涼寺式釈迦如来と呼ばれている。本像は全国に多数ある模刻像の内最古の像と云われている。
・木造毘沙門天立像・藤原時代(重文)…通常は左手に宝塔を、右手に三叉戟(さんさげき)を持つが、本像は左手に三叉戟を持ち、右手を腰に当てている。寄木造の彩色像で身に着けた甲冑には所々に戴金文様が残る。

(※3)…正座のように両足を揃えて座り、腰を少し浮かした座り方。