平成13年10月、私は、ちょっとした冒険をしました。生まれて初めて白杖を相棒に一人で東京まで出掛けました。行く先々で人々の親切に助けられ、無事目的を果たすことができました。
 「在来線から新幹線に乗り換えて…」確かにそんなに大層なことではないのですが、駅の案内表示も時刻表も見えない弱視の私には、やはり少々大変なことでした。いつも歩いているところなら特に問題はないのですが、知らないところを歩くのは、たった5cmの段差が判らなくて恐い思いをすることもあり、お手洗いを探すのも一苦労です。
 でも、白杖を相棒に遠出をして、ほんの少し冒険をすることの楽しさを知りました。人の優しさに出会うこともできました。
 「バリアフリー」という言葉が聞かれるようになって久しいですが、社会のバリアをなくすことは勿論大切なことです。でも、障害者自らが、自分のバリアをつくっているとしたら、まずそのバリアから抜け出すことが最も大切なことなのではないでしょうか
 確かに、自分の部屋のなかに居れば、傷つくこともなければ、嫌な思いをすることもありません。しかし、それでは、何時まで経っても、何も変わらないと私は、思います。
 日常生活の中で、相棒である白杖が、時にとても重たく、疎ましく感じることもあります。でも、私は、これからも機会があれば、この相棒と冒険をしたいと思っています。

小さな冒険