氷の世界 

龍造寺 右京 の場合

色白で病弱そうな青年。しかし絵の才能はそれなりのものを持っている。
父親は、大会社の社長で、彼もゆくゆくは、父の後を次がなければならない。
しかし、彼は、画家になりたくて、密かに芸術大学に入ることを夢見ている。

彼が、小学生のとき、女性家庭教師に受けた性的嫌がらせ
がもとで、その家庭教師を階段から突き落として殺してしまう。
そのことが原因で、女性恐怖症に陥っている。また中学に
入った彼は人間嫌いの性格がたたってか、いじめにあってしまう。

顔につばを吐きかけられ「かわいそうに。」と雑巾で拭かれる。
朝、教室の席に座ろうとすると画鋲が並べられている。
彼は訳がわからなくなる。自分自身をコントロールできなくなり
自分より力の弱い人間をいじめてしまう。そのことが理由で、
また彼自身いじめられる。そんな生活の中彼は心を閉ざし誰
とも喋らなくなる。

そんな彼の心のよりどころが絵を書くことだった。彼は一日
中、山にこもって絵を描いた。
またそうすることで自分自身をコントロールしていたのだ。

中3の時、彼は、上杉や、沙羅をはじめ、他の仲間達にかば
ってもらい、彼自身も彼らに心を少しずつ開いて立ち直るこ
とができた。しかし心の傷は深く今でも夢でうなされることも
しばしばである。

高校に入った彼は美術部に入部。美術部顧問の小早川慶子
先生にその才能を認められ少しずつ自分自身を取り戻す。
現在は、展覧会に出展する絵を制作中で、自分の生まれた
町を描くため。町の景色が一望できる丘に、日曜日になると
出かけてゆく。

しかし、彼の両親は、彼の心の支えである絵を理解しようと
しない。彼は、絵描きになりたいのだが。両親は「そんなも
のは、大人になってからでもできるだろ。」と、まともに受取
ってくれない。

彼は、諦めるべきかどうか、小早川先生に相談する「先生は、
自分の思うように生きたほうがいいと思う。あなたには、そ
れなりの才能があるし、それに夢は、追いかけるものだと思
うの。諦めたら夢はそれまでだし、絶対後悔すると思うの、も
う一度両親とよく相談してみたら。」の言葉と、上杉や朝倉の
行動に、自分は今何をすべきかを悟る。


上杉 輝 の場合

シンガー・ソング・ライターを夢見る18歳の青年。もの凄い
才能を秘めている。某音楽会社主催の新人オーディションに
デモテープを送る決意を固めている。楽器屋の息子。

密かに朝倉に惚れているが本人の前ではいつも素直にな
れない。
 彼は、幼い頃ちょっとした、いじめにあったが、それを自分の
力で解決している。中学に入り3年のとき、龍造寺がいじめ
られている現場を目撃して昔の自分を思い出し彼を助ける。
また、彼も、そんな彼らの心に応えようと立ち直り始める。

しかし所詮龍造寺はいつも一人で育った人間(ひとりっこ)、し
だいに仲間の中でも孤独を感じ始める。いつしか彼は仲間
からはぐれ、また孤独な生活に入ってしまう。

そんな彼の態度は当然上杉の反感を買ってしまう「あまえ
るなよ、みんな苦しみや悲しみを乗り越えて生きてきてるん
じゃねーか、いつまでもそんな自分の殻に閉じこもってんじゃ
ねーよ。」。
しかし龍造寺の幼なじみの沙羅だけは彼を見捨てようとしなかった。

有村 沙羅 の場合

龍造寺とは、幼なじみで彼の暗い過去も知っている。弓道部の
キャプテンと女だてらに級長&生徒会長を勤めているため
女生徒や後輩からラブレターをもらうこともしばしば。
でも当人は、その事でとても深く傷ついている。
また、彼女は龍造寺を立ち直らせたいのだが、彼は「僕のことより
自分のことを考えろ、僕に付き合っていると君を苦しめてしまう
君や上杉にはとても感謝している、ただ借りを返せなくて
すまない・・・。」と言い相手にしてもらえない。


朝倉 勇(ゆう) の場合

シンガー・ソング・ライターに憧れる17歳の少女。しかし、才
能に限界を感じている。
そんな時、バイトの帰りに偶然寄った、町の楽器店で上杉
の歌声を聴き、好きになってしまう。
また彼女は家に病気の母を抱え。父は、酒とギャンブルに
明け暮れ。妹は家を飛び出したまま帰ってこない、という苦しみ
にも耐えている。そんな彼女のたった一つの心のよりどころが
音楽である。しかし、父は、彼女の気持ちを理解しようとせず。
勇に内緒でギャンブルの資金にするためギターを質に入れ
てしまう。(ギターを買う金さえない貧しい家)
絶望に打ちひしがれた彼女は、自殺を図ろうと海の見える
断崖まで行くが、上杉に自殺を止められ一命をとりとめる。

その後二人は、デモ・テープを送る、しかし、上杉だけ合格し
てしまう。その後、家を飛び出した彼女は上京する上杉の後を追う。