ひょっとしたら本当にあったかもしれない怖い話

第一話 偶然・・・その話を

これは当時ネタに行き詰まっていた頃に先輩から聞いた話です
その頃オカルトネタは結構売れていた時代だったそうで
小説や映画など、いろんなグッズが売れていたと言っていました
特に非売品のポスターなどは数が少ないためオークションなどに
出展されると結構な金額になるんだと教えてくれました
彼は、その当時・・・「これがしたい!」っ言う仕事も無かったらしく・・・
オカルトネタ・・・つまり怪談話を探し投稿する・・・
といった生活をして暮らしていたそうです
しかし・・・この時代、有名タレントの山川純一の怪談キャンプや
夏になると必ずやってると言って良いほど、怪談を中心にしたTV番組のように、
現実には、そんなうまいタイミングで話のネタは集まらない
集まれば収録の際、怪現象に見舞われるというアクシデントもあり
かと言って盗作ってのはちょっと・・・と思いながら、
通りかかった公園で休憩をしていたそうです・・・
辺りでは親子連れで賑わっている、が、
その中で不振そうな俺が一名だけポツンとベンチに座っている
俺の周りには間違っても子供が通り過ぎもしない・・・ってことは・・・
「あ〜あ・・・完全に不審者がられてるよ・・・(汗)」
そんなことを俯(うつむ)きぎみにグチっていると・・・
「おじさんどうしたの?」
と小さな女の子が俺に話しかけてきた
「べっつにー・・・君も友達と一緒に遊んだらどうだい?」
と俺が顔を上げてから、そう言うと、
そこには十歳ぐらいだろうか?真っ赤な洋服を着た小さな女の子が立っていた
「そうしたいんだけどダメなんだ・・・」
その女の子は足元に落ちていた小さな石ころを軽く蹴りながら答えた
「どうしてなんだい?」
「だって・・・あたし怖い話しかしないから、みんな怖がって近づかないの」
こんな小さな子が?
「どんな話なのかおじさんに聞かせてよ」
「いいの?・・・」
「ああ・・・聞きたいな、君がどんな話を知っているのか・・・」
「うん・・・いいよ」
俺は奇妙に思いながら、その女の子に普段している話をしてもらう事にした
その子の話は今から一年ほど前にお父さんの実家で起こった出来事だった・・・

・・・・・・・・・

その日はね、今日と同じぐらい暑い日だったの・・・
夏休みに家族でお父さんの実家へ里帰りした時の、お話なんだけど
電車の中で、お爺ちゃんが田舎に住んでるって聞いて
「お祭りとかはどんな事をするの?ってお母さんに聞いたら」
「(町の人達がみんなで(おみこし)担いで楽しいよ)って教えてくれたんだ・・・」
・・・都会の、お祭りって決まった人達が担いだりするって聞いてたから
もしかしたら・・・あたしも担げるかも!って思ってワクワクしてたんだ
それでね?お爺ちゃんの住んでる場所はね・・・
港の見える山の中に立っていたんだけど
でも・・・お父さんの実家に着いた頃、大変な事聞いちゃったの・・・
お祭りの日に台風がやって来るってね・・・
あ〜ああ・・・せっかくお祭りが見れると思ってたのに・・・
あたし達・・・がっかりしながらお爺ちゃんの家に泊まる事になっちゃったのよ
お祭りの終わった次の日に帰ろうって話になってね
前の日までは、海に行って泳いだり山でキャンプしたりしてたの・・・
えっ!?怖い話はまだかって?
友達もここまではうらやましがってたんだけどね・・・・

・・・・・・・

やっぱり、お祭りの日に台風がやってきたの・・・
その日の夜は、お爺ちゃんの家でお祖母ちゃんとテレビを見てたんだけど
怪談話の特番をやっていてね、あたしとお祖母ちゃんは二人で見てたの
ほかに見たい番組がなかったからなんだけどね・・・
お爺ちゃんは、その日・・・台風対策の為に雨戸を修理してたらしいんだけど・・・
終わってハシゴを片付けていた時に腰を痛めちゃって・・・その後ずっと寝こんでたし
お父さんとお母さんは町に買い物をしに出てった時に、
お父さんの昔の友達に久しぶりに会ったからって
二人して、そのまま飲み会に行くって電話があったの
だからあたしとお祖母ちゃんが、お留守番になっちゃった訳!
二人でテレビを見てたんだけど、その内容がまず自宅であった怪談
次に学校の怪談・・・最後に病院での怪談・・・ありきたりよね?
内容はあたしが前に家で見た事があったから、知ってたけど・・・
お祖母ちゃんは、そう言うのが大のニガテみたいだけど・・・
でも怖い物見たさなのかな?ジット真剣に見てたのを覚えてる・・・
まず自宅であった怪談を見終わって、あたしがおせんべいを食べていると
お祖母ちゃんはトイレに行っちゃった・・・勿論テレビのコマーシャルの間に
そしたら・・・トイレに行ったとばかり思っていたお婆ちゃんが
ガタガタ震えながら部屋に帰ってきて
「で・でで・・・でたっ・・・・」
って言うのよ・・・
「お祖母ちゃんどうしたの?何が出たの?」
さすがにあたしも、お婆ちゃんが震え上がっているもんだから気になって
聞いてみると・・・
「お爺さん・・・お爺さん・・・」
って言いながらお爺さんが寝ている寝室にヨタヨタしながら行ちゃったの・・・
あらら・・・大丈夫かなぁ・・・お祖母ちゃん・・・・って思ってたら
そのあとに、近くの木に雷が落ちたらしくてね停電になっちゃったの・・・
こまったなぁ・・・と思っていると・・・
「ギャーーーー!」
って、廊下からお祖母ちゃんの悲鳴が聞こえた
さすがにあたしも怖くなって悲鳴がした方に走って行ったの、
そしたら廊下でお婆ちゃんが倒れてた・・・
その先には、お爺ちゃんがオドオドしながら立ってるし・・・
目の前で、お祖母ちゃんの悲鳴を聞き、
どうしたらいいか分からないでいたそうだ・・・
その後、停電から回復し、お祖母ちゃんを介抱していると
「ちょっと何の騒ぎ!?・・・ちょっとあなた!こんな所で寝てると風邪ひきますよ!?」
と、お母さんの声が聞こえてきた・・・
お祖母ちゃん・・・何を見たんだろう?と思っていると
「あらっ?義父さんどうされたんです?」
お母さんが眠っているお父さんを引きずりながら部屋に入ってきた
「婆さんが廊下でわしを見たとたんに倒れおったんじゃ・・・」
と言いながらお爺ちゃんは頭を抱え(やれやれ)と言っていた・・・・
ここから先は意識を取り戻したお祖母ちゃんのお話・・・
友達はね・・・この次のお話の始めで怖くて逃げちゃったんだ・・・
どう?おじさん・・・聞きたい?

・・・・・・・・

へえ〜聞きたいんだぁ〜・・・じゃあ続けるね?
次の日、目を覚ましたお祖母ちゃんから聞いたんだけど
トイレに行こうと廊下を歩いてたんだって・・・
廊下の明かりは付いているんだけど古くなっていたのか暗くてね・・・
おまけに玄関の明かりが切れていたの・・・
玄関の所を曲がった突き当たりにトイレがあったんだ・・・・
それで恐る恐る歩いていると玄関の方から
(ずるるる・・・びちゃん・・・ずるるる・・・びちゃん・・・)て何かが
水を滴らせながら這ってくる音がしたんだって・・・
その音がだんだん、お祖母ちゃんの所まで近づいて来る!
お祖母ちゃんは、さっきテレビで見た怪談話を思い出して
足を掴(つか)まれたら、そのまま墓まで引きずり込まれると思ったんだって・・・
それでガタガタ震えながら部屋まで戻ってきて、
(そうだ!お爺さんに助けてもらおう!)と思ちゃったらしく
すぐに寝室に向かったって言うの・・・あたし、いたのに・・・
でも・・・その途中に寝室と物置に続く廊下まで来た時
停電になっちゃって・・・どうしようかとオロオロしていると
近くに雷が落ちて、その弾みで物置の扉が開いたんだって・・・
扉が開ききったその時!稲光がして一瞬物置の内部が見えたんだって・・・
その時!物置の中には人が首を吊っているのが見えたんだって言うの!
もう・・・どうしていいか分からなくなった、その時!
そこにやって来たお爺ちゃんがお祖母ちゃんに
声を掛けた瞬間に恐怖のあまり気を失ったんだって言ってた・・・
・・・・どうだった?おじさん・・・
「確かに怖い話だね・・・その後どうなったの?物置にあった首吊り死体は?」
「無かったわよ?」
「無かった?・・・」
「そう・・・無かったの・・・その物置の入り口は、あれくらいの大きさだったと思うけど・・・」
「へえ〜どれくらいかな?」
俺は女の子が指差した方を見るとそこには砂場があったが他に何も無い・・・
「ねぇ・・・どこだい?」
俺は再度女の子がいた場所に振り向くと・・・そこには、もう女の子はいなかった・・・
「「どぅ・・・怖かった?」」
その時!女の子の声だけが響き渡ったんだ・・・・って彼は言った
・・・やっぱり、この話・・・使ったらまずいよな?
彼は、そう言い俺の前で苦笑いをした・・・