SYNCHRONICITY TWINS STORY

NECRONOMICON

ACT.1 01日 木曜 午後 (セイ編・告別式)

親父が死んだ・・・・・。
俺は親父なんか嫌いだった。
なのに何故か・・・・・涙が出た・・・・・。

俺が親父の訃報を聞いたのは昨日の夜。
いつもどおりダチとバカやって帰ってきたらお袋が言った。
     「あの人が・・・・・死んだ・・・・・」

お袋は無表情だったが、かすかに目が赤かったのを俺は見付けちまった・・・・・。

俺は親父の棺にすがりついて大泣きした・・・・・。
今思い出しても顔から火が出そうだ。
明(メイ)は意外にもケロッとしてて、俺の醜態を驚いて見つめていた。
明が驚くのもムリはない。
なんせ自分でも信じられないんだからな・・・・・。

棺には親父の躯は入ってないということは後から聞かされた。
化け物にやられて死体も残らなかったらしい。

ちなみに俺の家は先祖代々、陰陽師とかいう化け物退治屋だ。
親父が死んで、本来は長男の俺が跡を継ぐはずなんだが、
俺はいろいろデキが悪いから、双子の弟の明が当主を引き継ぐことになっている。
ま、俺は面倒臭いことはまっぴらなんでちょうどいい。
それに兄といっても双子だ。
どっちが兄だなんて大した問題じゃない。


今は葬式の真っ最中だ。
家はその独特な家柄だから、わざわざ寺から坊さんを呼ぶ必要もない。
葬式も他とは一風変わった儀式だ。
ウチには葬式専用に『印間(インマ)』っていう豪華な部屋がある。
ほれ、前の壇上で明がワケのわからん舞を踊ってるだろ。
あれが我が家に伝わる『弔いの舞』らしい。
親父の遺書にもこうして弔ってくれと書かれていたらしい。
どうせ死体も無いんだし、どうでもいいがやはり変なしきたりだ。

そうそう、遺書っていえば遺産相続なんかも書かれてたらしいが、
俺には難しいことはよくわからん。
ちなみにウチはかなりの豪邸だ。
相続税なんかもバカ高いんだろう。
親父は他にも事細かにいろいろ書いてたらしい・・・。
だが、マヌケな事に当主を誰に引き継がせるのかを書き忘れてたらしい。
まったくマヌケな野郎だ。
一番大事な事を忘れてたなんてな。

当主を明が引き継ぐ事はお袋が決めた。
まあ、俺もそれが妥当だと思うし、反論なんか無い。
お袋は昔から明をかわいがってたし、俺は嫌われてたからな。
こうなるのは当然の結果だ。


・・・・・。
どうやら舞が終わったらしい。
非常に退屈だった。
退屈だから色々余計なことを考えちまった。
いつの間にかもう夜だ。
もちろん今日は学校は休んだ。
だが明日は行くことになっている。
早いって・・・。

喪主であるお袋が挨拶をしている。
これでやっと終わりだ。
なんか今日は、死ぬほど疲れた・・・・・。


メイ   「セイ、・・・・・」
セイ   「・・・メイ、おつかれだったな」
メイ   「うん・・・。
      終わったよ。全部ね・・・・・」
コイツが俺の双子の弟『阿部 明』(アベ メイ)だ。
かなりの時間舞ってたからな、かなり疲労困憊気味だ。
セイ   「今日は座ってただけなのにスゲー疲れた。
      舞ってたオマエはもっと疲れてんだろ。
      明日は学校だし、さっさと寝ちまえよ」
メイ   「うん。セイも今日は早く・・・・・」
伊吹   「お疲れ様でした。メイ」
メイ   「あ、伊吹(イブキ)・・・。
      うん。これで終わりなんだね・・・」
伊吹   「きっとお師匠様もご満足されているでしょう」
いきなり登場して俺をほったらかしてるこの女は『相楽 伊吹』(サガラ イブキ)。
ウチに住み込みで退魔師の修行をしている女だ。
つまり親父の弟子ってことだ。
俺達兄弟と同い年・・・つまり女子高生だ。
今時珍しい大和撫子ってヤツだな。
誰の影響か知らないが、しゃべり方が時代がかってるのが特徴だ。
あと、かなりの貧乏性だってことが欠点だな。
伊吹   「・・・セイ。何か言ったか?」
セイ   「イヤ、ナニモ・・・・・」
伊吹はなんつーか鋭い。
親父に言わせりゃカナリの才能があるらしい。
親父が認めるんだ、相当のスゴ腕だな。
退魔術ではメイの方が上だが、退魔剣術では・・・・・、
親父が死んだ今となっちゃあ、日本最強かもな。
伊吹   「さっきから何だ、セイ。
      人の顔をジロジロと・・・・・」
セイ   「イヤ、喪服姿が色っぽいなと・・・」
伊吹   「キサマ、こんな時になんという不道徳な!!
      叩き斬る!!!」
メイ   「わっ!伊吹、落ち着いて!!」
セイ   「斬るって、カタナ無しでか?」
伊吹   「はっ、しまった!!」
セイ   「さすがに葬式には刀を持ち込めねーよな」
伊吹はいつもマジで刀を持ち歩いている。
あきらかな銃刀法違反だが、誰も本物を持ってるとは思わないようで、
警察にも止められたためしがない。
伊吹   「お、おのれ〜・・・ならば手刀だ!!」
セイ   「オイオイ」
満恵   「何を騒いでいるのです!」
伊吹   「お、奥様!」
メイ   「母さん」
一括とともに現れたこの人が俺達のお袋だ。
つまり死んだ親父の嫁だな。
名前は『阿部 満恵』(アベ ミツエ)。
本日の葬式の喪主であり、阿部家の裏ボスだな。
満恵   「伊吹さん、明さんは疲れているのです。
      早く休ませてさしあげなさい」
伊吹   「す、すみません・・・」
メイ   「か、母さん、僕は別に・・・」
満恵   「メイさん、ご苦労様でした。
      早くお休みなさい」
メイ   「は、はい」
満恵   「・・・・・。
      清さんも」
セイ   「ああ。わーってるよ・・・」
満恵   「では、失礼・・・・・」

お袋は奥に行っちまったぜ・・・。
メイ   「それじゃ、僕たちも寝ようか。
      明日も早いしさ」
セイ   「そうだな。寝ようぜ」
伊吹   「フン、セイ。今日の所は退いてやるが軽口には気を付けることだ」
セイ   「へいへい」
まったくお堅いことだ。

俺達はそれぞれに自室へと戻った。
さっさと風呂入って寝ちまおう。
俺は速攻で風呂を済ませ一足早く眠りについた。
俺は寝るのは早いんだ。
朝は苦手だがな・・・・・。


?    「・・・・・う・・・・う、ぁああああああ!!!」
セイ   「なんだっ!?」
誰かの叫び声だ!
どっかから苦しそうなうめき声が聞こえる。
どこからだろう・・・・・メイの部屋だ!!
俺は布団を飛び出してメイの部屋に駆け込んだ。

セイ   「メイ!どうした!!」
メイ   「う・・・ううううう・・・・」
セイ   「メイ!!」
メイ   「う・・・うう、・・・セ、セイ・・・・・」
セイ   「メイ、気がついたか・・・」
メイ   「セイ・・・僕、うなされてた?」
セイ   「ああ。大丈夫か?凄い汗だぞ」
メイ   「大丈夫みたい、だけど・・・」
セイ   「だけど?」
メイ   「ううん、なんでもない・・・・・」
セイ   「・・・そうか。ま、あんな事があった後だし、
      気をしっかり持てよな」
メイ   「うん、ありがとう。セイ」
セイ   「しっかりしろよ次期当主、じゃあな」
メイ   「うん、おやすみ」


・・・・・。
一体何だったんだろう。
今までメイがうなされた事なんてなかった。
顔には出さないが、実は親父の死がよほどのショックなのかもしれないな。
ま、当然といえば当然だが・・・・・。
満恵   「清さん」
セイ   「うわっ、お袋!?」
満恵   「明さんに何かあったのですか?」
セイ   「いや、ただうなされただけだとさ」
満恵   「そう・・・」
セイ   「・・・・・」
満恵   「・・・・・清さん」
セイ   「な、なんだよ・・・」
満恵   「これから明さんを頼みますよ。
      兄として・・・・・」
セイ   「なんだよ、急に・・・」
満恵   「・・・そうですね。
      今更言う必要などないことでしたね。
      では、おやすみなさい」
セイ   「あ、ああ・・・・・」


やっと布団に入れたぜ・・・。
しかし、なんだったんだ?あの二人は。
親父が死んで動揺してるのかもな。
なんだ、結局一番泣いた俺が一番落ち着いて・・・・・。
チッ・・・、ヤなコト思いだしちまったぜ・・・・・。



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