SYNCHRONICITY TWINS STORY

NECRONOMICON

ACT.1 02日 金曜 午前 (セイ編・起床)



伊吹   「そろそろ起きぬと、遅刻するぞ」
セイ   「くー・・・・・」
伊吹   「さっさとしろ、私まで遅刻の巻き添えはゴメンだ」
セイ   「くー・・・・・」
伊吹   「いつまで布団にくるまっているつもり・・・キャー!!!」
セイ   「うわぁっ!!なんだなんだ!!!」
伊吹   「この変質者ーっ!!!」
セイ   「なんだーーー!!!???」
朝っぱらからなんだってんだ!?
セイ   「伊吹じゃねーか、なんなんだよ朝っぱらから・・・」
勝手に人の部屋でギャーギャーわめきやがって。
伊吹   「黙れこの色情魔が!朝っぱらからはこっちのセリフだ!!」
セイ   「はい?」
伊吹   「貴様、起きた早々、永遠の眠りにつきたいようだな!」
セイ   「ちょっと待て、オマエ何言ってんだよ!」
伊吹   「問答無用!」
セイ   「オマエ、なんか誤解してんじゃねーの?」
伊吹   「誤解だと!?そのような状況で何をぬかす!!」
セイ   「ん?・・・・・・・・・・。
      バカ、これは自然現象だ。・・・指さすな△」
伊吹   「どうせいつものように
      『男が女に欲情するのは至極当然の自然原理だ』などと
      戯言をほざくつもりだろう!」
セイ   「それは間違いなく真理だが、そういう事じゃなくてだな・・・」
伊吹   「聞く耳持たぬわ」
セイ   「だいたいなんで今日はめずらしく伊吹が起こしにきたんだよ」
伊吹   「いつものようにメイが起こしていたのでは遅刻間違いなしだからだ!」
セイ   「遅刻・・・?!な、なんでもうこんな時間なんだよ!!?
      なんでもっと早くにメイが起こしにこねーんだ!?」
伊吹   「当主としての務めというものだ」
セイ   「なにワケわかんねー事言ってんだよ。さっさと行くぞ!!」
伊吹   「バカ、私の前で着替えるな!!」
セイ   「だったらさっさと下で待ってろ!
      だいたいここは俺の部屋だ!!」
ヤベーよ!遅刻だ!!
いつもならもっと余裕もってメイが起こしに来るんだ!
こりゃ朝メシ食ってる暇なんてねーぞ!!

俺は高速で階段を駆け下り、一目散に食堂へ向かった。
食堂に入りぎわ、おふくろと衝突事故を起こしかけたが、
おふくろが巧みに回避したため難を逃れた。
満恵   「朝から騒々しいですね」
セイ   「うるせー!メシは!?」
満恵   「そこにあります」
ひときれのトーストに目玉焼きを乗せ、端をくわえて部屋を駆け出る。
満恵   「・・・まったく。忙しいことですね」

玄関を出るとメイたちが待っていた。
伊吹もすでに合流していた。
セイ   「メイ!なんで起こしにこねーんだよっ!!」
メイ   「ごめん、今朝はちょっと用事があって・・・」
伊吹   「わざわざ私が起こしてやったんだ。ありがたく思え」
縄田   「そうっスよ、うらやましいっス」
セイ   「おお、ナワワもきてはは」(おお、縄田もきてたか)
縄田   「何言ってるかわかんないっス△」
このナヨっとしたビジュアル系のハデ男の名は縄田真悟(ナワタ シンゴ)。
近所に住む俺らの後輩、高校一年だ。
俺様が率いてるチーム『Make−be.lieve』のメンバーだ。
ちなみに俺らはストリートパフォーマンスのチームを組んでいる。
ローラーブレードを操って路上でアクロバットを披露してるんだ。
たまに金をくれる見物人もいるが、基本的には趣味だな。
俺達は登校時とかにも練習がわりにブレードを使ってるんだ。今もな。
時々パフォーマンス中に警官が来て邪魔されたりするが、
最近は妙な刑事さんと親しくなって容認されはじめた。
なかには話のわかる大人もいるもんだ。
おっと話がズレたな。
縄田はファッションに金をかけすぎのためいつも金欠状態だ。
後先考えないお調子者だな。
セイ   「さあ、さっさと行くぜ!遅刻しひはふ」(遅刻しちまう)
伊吹   「食うか喋るかどっちかにしろ」
メイ   「そうだよ、ハズかしい・・・」
そういうメイの胸が突然もぞもぞと動き出した。
ついに女になろうとしているのだろうか?
・・・いや、そんなわけない。
セイ   「オイ、なんかいるんじゃ・・・」
メイ   「あ・・・」
朱雀   「いい匂い・・・」
なんだぬいぐるみか。
メイの胸ポケットから赤い饅頭のようなぬいぐるみが出てきた。
・・・・・。
出てきた?
・・・・・!
なんだ!?ぬいぐるみが動いてる!?しゃべってた!??
メイ   「あ、出てきちゃダメだって・・・」
朱雀   「・・・?なんだねキミは?」
メイ   「え?」
朱雀   「なれなれしいな、キミは。キミはワタシのなんなんだい?」
伊吹   「バカ鳥、メイはお前のご主人様だろ」
朱雀   「・・・・・あ!
      メ、メイ様!!これは大変失礼いたしましたです!!」
メイ   「は、はは・・・」
伊吹   「大丈夫なのか?コイツ」
朱雀   「この朱雀、一生の不覚!!」
伊吹   「不覚だな、たしかに・・・」
メイ   「はやくおぼえてね△」
・・・・・。
なんなんだ。
なぜメイや伊吹は当たり前のようにぬいぐるみとしゃべってるんだ。
ホレ、縄田のヤツを見てみろ。
驚いて池の鯉のごとく口をぱくぱくさせているじゃないか。
これが普通のリアクションってもんだろ。どうなってんだよ。
セイ   「オイ、コイツは一体何なんだ?わかるように説明しろ」
縄田   「そうっスよ!なんで縫いぐるみがしゃべってるんスか!?」
セイ   「腹話術でも始めたのか?」
もしそうなら公衆の面前ではやらないようにちゃんと指導しなくては・・・。
メイ   「あ、セイはまだ知らなかったよね。コレは朱雀っていって・・・」
朱雀   「メイ様と同じ顔!あやしいヤツ!!」
セイ   「あン?なんだとコラ」
朱雀   「そうか、キサマ、ドッペルゲンガーだな!!!」
セイ   「ドッペルゲンガー??」
朱雀   「おのれ妖怪!!退治してくれようぞ!
      メイ様!ここはこの朱雀におまかせあれでございます!!!」
セイ   「やんのかコラ」
メイ   「あの、やめて・・・」
朱雀   「ほかの者は誤魔化せても、この朱雀の目はごまかせんぞ。
      覚悟するがいい!!」
セイ   「上等じゃねーか!やってやるぜ!!」
メイ   「やめてってば・・・」
朱雀   「我が炎により塵と化すがよい!!」
セイ   「ほざくな妖怪が!!」
メイ   「やめてってばーーーっっっっっ!!!!!」
朱雀   「メイ様!?」
縄田   「セイさんも落ち着いてくださいよ!!」
セイ   「はなせ縄田ーーーっっ!!」
伊吹   「バカ鳥はしかたないにしても、お前も少し落ち着け。
      同じバカといっても人間なんだぞ」
セイ   「伊吹・・・△」
それって酷くない?
伊吹   「鳥も落ち着け、このバカは敵じゃない」
朱雀   「敵じゃない?・・・・・そうか!!
      それじゃあこっちがドッペルゲンガー!!!」
メイ   「いいかげん怒るよ」
朱雀   「凄んでも無駄だ!ワタシには通じんぞ!」
ポカッ。
伊吹の刀が鳥の頭に振り下ろされた。
ちなみに鞘におさまったままだ。
朱雀   「いたいですよ!なにするんですか!?」
伊吹   「コイツらは双子だ。
      よってドッペルなにがしではない」
朱雀   「双子?な〜んだ、それならそうと早く言ってくださいよぉ!」
メイ   「ホントこれ以上先走ったら今度は捨てるよ?」
朱雀   「そんなぁ〜、メイ様も人がワルいですよ。冗談キツイなぁ〜」
なにじゃれあってやがる・・・。
セイ   「オイ、さっさと説明しろ」
伊吹   「コイツはメイの式神である朱雀だ。
      お前が寝てる間に儀式をおこなったんだ」
セイ   「なんだ、式神かよ。
      親父の玄武みたいなモンか。
      だったら早くそう言えっての」
やっと話がわかったぜ・・・。
朱雀   「フン、アンタが寝坊するから悪いんだ!」
セイ   「別に寝坊なんかしてねぇ!」
ムカつく鳥だ。
朱雀   「遅刻せずにちゃんと儀式に立ち会っていれば
      こんなことにはならなかったんです!
      どう考えてもアナタが悪い!」
セイ   「ちょっと待てバカ鳥!」
朱雀   「ワタシはバカ鳥じゃありません!朱雀です!!
      そんなことも覚えられないんですか?アタマ悪いですね」
セイ   「んだとコラァ!!」
縄田   「ああーーーっ!!!!!」
伊吹   「突然わめくな!耳鳴りがする!!」
縄田   「忘れてた・・・・・」
セイ   「あ」
そういえば朝飯持ったままだったな。忘れてたぜ。
俺がトーストをかじると反対側に朱雀がかじりついてきた・・・・・。
セイ   「・・・・・なんなんだよ、テメーは・・・」
朱雀   「ワタシはこの香ばしい香りで目覚めたのです。
      一口くらいもらってもバチはあたりません」
セイ   「俺の朝飯だ△」
朱雀   「ワタシも朝食はまだです」
セイ   「あのなぁ・・・」
コイツの常識にはついていけん・・・。
縄田   「・・・・・」
メイ   「それより、何を忘れてたの?」
セイ   「ほうふぁ、あんあよナワワ」(そうだ、なんだよ縄田)
朱雀   「ナワワ、ナワワ」
縄田   「みなさん、まだ気付きませんか?」
セイ   「?」
メイ   「え?」
伊吹   「何にだ?」
朱雀   「なわわ、なわわ」
縄田   「ボクら、完全に遅刻です」
セイ   「!」
メイ   「!!」
伊吹   「!!!」
朱雀   「ナワワ、なわわ」
セイ&メイ&伊吹「遅刻だぁーーーー!!!!!」

伊吹   「なんたることだ!
      何故この私が貴様らの巻き添えで遅刻しなければならんのだ!!」
セイ   「悪いのはこのバカ鳥だ!」
朱雀   「バカ鳥とはなんですか!だいたいアナタは・・・」
伊吹   「ああ〜、バカどものせいで、私の無遅刻無欠勤が〜!
      私の輝かしい経歴がバカどもの為に汚される〜」
セイ   「・・・・・うるさいな△」
縄田   「完全に遅刻だから、走っても意味無いっスよ」
メイ   「だからって歩いて行ったら生活指導の先生にしかられるよ」
生活指導・・・・・。
よりによってウチの担任だ・・・。
セイ   「ヤベー・・・」
伊吹   「・・・・・。
      セイはしょっちゅうだろうからいいが、私は・・・」
メイ   「怖そうだよね、あの先生・・・」
セイ   「メイはいいよな、アイツのクラスじゃなくてよ」
メイ   「・・・そうかな」
去年は俺とメイが同じクラスで伊吹が別のクラスだった。
だが今年は俺と伊吹が同じ生活指導のクラスで、
メイが数学教師のクラスだ。
俺と伊吹が2−A、メイが2−B。
教室はとなりだし、体育の授業は合同なんだ。
メイ   「・・・ところで、縄田君が言ってたけど、
      なんか街の様子が変だね」
縄田   「でしょ?ホラ、あそこでもおばちゃんたちが井戸端会議してますよ。
      こんな朝早くから」
伊吹   「うむ、さすがに井戸端会議の時間には早かろう」
セイ   「ほうか?へふひへふはひふほへーはろ?」
     (そうか?別に珍しくもねーだろ?)
メイ   「・・・まだ食べてたの?」
朱雀   「はしたないですね。似合ってますけど」
セイ   「なんだと」
メイ   「たのむからもう喧嘩はやめて・・・」
伊吹   「そろそろ朱雀はしまっておけ」
メイ   「そうだね」
朱雀   「あ、メイ様、なにをなさるんですか!?」
メイがバカ鳥をポケットに押し込んだ。
へっ、ザマーミロってんだ。
メイ   「ゴメンネ」
朱雀   「・・・くー・・・くー・・・」
メイ   「・・・・・寝ちゃってる・・・」
セイ   「・・・バカっぽいヤツ」
伊吹   「役に立ちそうもないな」
縄田   「ん?なんスかね、アレ」
宮下公園にさしかかった頃、縄田が何かの人だかりを見付けた。
ちなみにこの公園で俺達はパフォーマンスや練習に明け暮れている。
いわば俺らの縄張りだな。
朝っぱらからかなり騒がしいが、一体なんだってんだ?
かなりの人混みのため、何がおこなわれているのかわからない。
縄田   「今日の放課後、公園使えますかね?」
セイ   「さーな。ま、後で行ってみよーぜ。
      放課後には野次馬達も消えてるだろ」
宮下公園で何があったのかは気になったが、
当面俺達は登校しなくちゃいけない。
公園を横目に通り過ぎ、通りを右折して俺達の通う渋谷高校に到着した。
さて、これからお仕置きが待ってるぜ・・・。


東郷   「よくきたな」
セイ   「ど、どーも・・・」
伊吹   「・・・・・」
東郷 大和(トウゴウ ヤマト)・・・。
この凄まじく濃い名前と外見の漢が俺達の担任だ。
超熱血生活指導としての名声を学校内外で轟かせるスーパー教師。
スポーツ万能、根性の塊。
基本的には『良い先生』の部類に入るが、俺はどーも苦手だ・・・。
昔の青春ドラマのごとき熱さにはちょっとついていけない時がある。
無論、体育教師だ。しかし何故か国語教師も兼用している。
教養もあるんだろう。文武両道だ。
しかしこの熱血教師にも不可解な点がある。
生活指導として俺達の規律を厳しく取り締まる反面、
自分は真夏でも革ジャンに身を包み、授業中でもサングラスをはずさない。
そりゃないと思わないか?
・・・今はそんなことはどうでもいいが、
とにかくこの人はとても厳しいのでこれからお仕置きタイムだろう。
東郷   「重役出勤だな」
セイ   「は、はは・・・」
東郷   「いちおう訊いてやろう。
      理由はあるのか?」
セイ   「じ、実は・・・」
東郷   「言い訳か・・・。男らしくないな、阿部」
セイ   「イヤ、訊くから・・・」
伊吹   「わ、私は女だが・・・△」
東郷   「わかっているな?」
セイ   「わーったよ、観念するよ、します」
伊吹   「はぁ、しかたない・・・」
東郷   「グランド20周」
セイ   「20!?んなことしてたら1時間目終わっちまうじゃねーか!」
東郷   「かまわん。さいわい今は俺の授業だ」
セイ   「んなムチャクチャな・・・・・」
東郷   「さっさと行けい!!」
セイ   「わ、わーったよ!」
伊吹   「頑張ってこいよ、セイ」
東郷   「相楽・・・。お前もだ」
伊吹   「ハイ・・・」

伊吹   「キサマのせいだ!キサマのせいだ!キサマのせいだ!!」
セイ   「伊吹・・・、喋ってると余計に体力消耗するぞ・・・」
伊吹   「うるさ〜い!うるさい!うるさい!うるさい!!」
俺達はひたすらグルグル回り続けた・・・・・。
そして、一時間目が終了した・・・・・。

ヒサシ  「朝からおつかれさん、二人とも」
セイ   「ゼイ、ゼイ・・・お、オウ」
コイツは古屋 寿(フルヤ ヒサシ)。
同じクラスの友人だ。
ノリの良いお調子者だ。
イザって時に金や物を貸してくれたり、
ちょっとした頼み事なら軽く引き受けてくれるので非常に頼りになる。
クラスの他のヤツからも便利屋と呼称されてるほどだ。
しかも本人はその呼び名をエラく気に入っちまってるんだ。
俺はこのクラスではだいたいコイツとつるんでいる。
よく気が利く使える友人だ。
・・・ただし、有料だがね・・・。
伊吹   「ゼイゼイ、キサマの・・・せいだ・・・」
セイ   「まだ言ってやがる・・・△」
ヒサシ  「ホラよ」
ヒサシが俺と伊吹に何かを差し出した。
・・・・・こ、これは!
校内で販売されているというパックのお茶!!
今の俺達にとって、これほど必要な物はそうザラには無い!
見ろ!さっきまで死んだ魚の様だった伊吹の目が希望に輝いている!
きっと俺も同じ目をしているに違いない。
セイ   「ひ、ヒサシ〜、やっぱオマエ、親友じゃ〜ん」
伊吹   「かたじけない、古屋!」
ヒサシ  「おっと、一つ150円だ」
ヒサシのヤローが命のお茶をサッと引っ込めやがった。
校内の自動販売機は他と値段が違うんだ。
このサイズのお茶はここでは100円だな。
ヒサシのヤロー、はっきり言ってカナリ割高だ。
コイツ、足下を見やがって・・・。
ちっ、しっかりしたヤローだ。
セイ   「・・・・・オラよ」
ヒサシ  「まいど」
俺は観念し、投げやりに150円をくれてやった。
今の俺には少々のボッタクリは関係ない。
伊吹   「・・・・・」
伊吹はお茶とにらめっこしてるぜ・・・。
俺は伊吹とお茶のバトルを横目に、一口命の水を補給した。
伊吹   「無念・・・・・」
ヒサシ  「え!?相楽はいらないのか?!!」
伊吹   「フン、アコギな商売しおって・・・ゼイ、ゼイ。
      いつか天罰が下るぞ・・・」
セイ   「・・・・・」
伊吹は苦虫を噛み潰したような表情をうかべて押し黙ってしまった。
伊吹は貧乏なんだ・・・それも『超』がつくほどにな・・・。
セイ   「しゃーねーな、オゴってやるよ」
ヒサシ  「オッ、さすがセイ。話わかるねぇ」
伊吹   「セイ!?」
セイ   「150円だったな」
ヒサシ  「へへっ、まいどあり」
伊吹   「どういう風の吹き回しだ?雨でも降るのか!?」
セイ   「・・・いらないなら俺が飲むぞ」
伊吹   「イヤ、いる!もらう!!」
セイ   「礼のひとつくらい言えねーのか?」
伊吹   「・・・・・かたじけない・・・」
セイ   「声が小さいが、まぁいいだろ」
伊吹   「・・・・・」
花穂   「あ〜、いーなー。アタシにもオゴってよ」
突然割り込んできたこの女は水森 花穂(ミズモリ カホ)。
同じクラスのイマドキの女子高生ってヤツだ。
流行に敏感でオシャレなヤツだ。
しかも明るく活発な性格が手伝って、クラスの中心的存在にいる。
男女問わずの人気者だ。
誰に対しても親しげに接するのでやや八方美人な印象を受ける。
よく男に告白されて、あっさりフッているという噂を耳にする。
サッパリしたヤツなんだ。
最近よく俺達にまとわりついてくるようになった。
セイ   「そんな金はねえ」
花穂   「ずるーい、伊吹にはオゴれるケド、アタシにはオゴれないのー!?」
セイ   「オマエは金持ってるだろ」
花穂   「そりゃ持ってるケドさ・・・」
セイ   「んじゃオレの分けてやろーか?間接キッスになるけどな」
花穂   「エッ・・・」
伊吹   「キ、キサマ!なんというふしだらな!!そこへなおれ!!!」
セイ   「冗談だよ」
伊吹   「そのような冗談はアレだ・・・・・セ、セク、セク・・・
      セクスィー・ヘルスミントとかゆーヤツだ!!」
ヒサシ  「セクシャル・ハラスメント」
伊吹   「それだ!!」
セイ   「んなオオゲサな・・・。オゴってやったじゃねーか」
伊吹   「ソレとコレとは話が別だ!」
憤慨する伊吹の後ろで、おずおずと声をかけようとしてる女の子がいる。
悦子   「あ、あの・・・」
伊吹   「ん?」
花穂   「エッコ、めずらしいじゃん、エッコから話に入ってくるなんて」
悦子   「だって、その・・・」
彼女は同じクラスの松岡 悦子(マツオカ エツコ)。
花穂とは対照的に、控えめでおとなしい女の子だ。
休み時間はたいてい本を読んでいる文学少女。
内気なので自分から話しかけてくることはめずらしい。
シャイな彼女にとってはかなりの勇気を必要とするはずだ。
伊吹   「なにか急用かな?
      私は今この不心得者に天誅を下す事で忙しいのだが」
悦子   「だから、その・・・」
花穂   「なに〜?」
悦子   「えっと、あの・・・」
ヒサシ  「花穂、そんな問いただすなよ。怯えちまうだろ」
花穂   「別にそんなつもりじゃないよォー」
セイ   「でェ、何が言いたいの?」
伊吹   「そうだぞ、言うべき事はきちんと言わねば」
悦子   「もうすぐ次の授業が始まりますケド・・・」
セイ   「!」
ヒサシ  「しまった!!」
花穂   「ヤバー!」
伊吹   「忘れていた!」
セイ   「次って何の授業だっけ?」
悦子   「体育です・・・」
セイ&伊吹「げっ・・・・・」
つかの間の休息が終わり、いきなりダッシュで更衣室へ向かう。
伊吹と花穂も大慌てで女子更衣室へ走る。
松岡は既に着替えていたので、ゆっくり伊吹達を追いかけていく。
おそらく教室へは何か忘れ物を取りに来ただけなのだろう。
タオルか、ドリンクでも持ってんのか、それともアレか、はたまたコレか、
考えてもそれが何かまではわからない。
なぜなら俺達は既に風になっていたのだから。


神業のごときスピードで着替えた俺達はさらにグラウンドまでダッシュした。
今この瞬間、俺達はスーパーマンよりも早く着替えたに違いない。
俺達はどうにかグラウンドに間に合った。
頑張った。俺達は頑張った。
すでに皆集結している。
となりのクラスも合同なのでメイもいるぜ。
新城   「まったく、いつも慌ただしいねキミタチは。
      もっと計画性をもって行動したらどうかね?」
いきなり上から戯れ言をほざくこのヒョロ眼鏡は新城 一正(シンジョウ カズマサ)。
インテリ気取りの理屈屋だ。
なにかにつけて俺達にイチャモンをつけてくる。
こういうアホは無視するにかぎる。
セイ   「おーい、メイ」
新城   「あ、ちょっと待ちたまえ!」
セイ   「ヒサシ、遊んでやれ」
ヒサシ  「ヤだよ、めんどくせえ」
セイ   「それでも便利屋か」
ヒサシ  「こんな時だけそう言うんだからな・・・」
俺は理屈屋のおもりを便利屋に任せてメイの方に歩いていった。
途中でブキミな何かが行く手を遮る。
どうやらドアップ状態の妖怪だ。
千歳   「フフフ・・・」
セイ   「いきなりなんなんだよ、オメーは!?」
千歳   「あのね」
セイ   「顔近づけすぎだって・・・」
この不気味な妖怪は天野 千歳(アマノ チトセ)。
この学園に伝わる生きた七不思議だ。
とにかく神出鬼没で謎だらけの女。ミステリアス・ガールなんて可愛いモンじゃねー。
ブキミちゃんと呼ばれ恐れられている。
自らホラーマニアを自称し、
よく得体の知れねー生物(?)を持ち歩いてたりする。
どっから見付けてくるんだか・・・。
ちなみに全校生徒を内包した広大なネットワークをもつと噂されるほどの情報通だ。
噂好きで、いつも噂をかぎ回っている。
千歳   「今日、放課後公園行くよね?」
セイ   「お、オウ・・・」
千歳   「詳しいことわかったらおしえてね」
セイ   「な、何の?」
千歳   「それじゃ・・・」
セイ   「ちょっと待て、オーイ!」
行っちまった・・・。
なんなんだ、訳わかんねーヤツ・・・。
気を取り直してメイに話しかけに行こう。
こーゆー時は忘れるのが一番だ。

誰かがメイに話しかけているようなので、
なんとなくそいつの側頭部に跳び蹴りをくらわせ、
おそらく無意味であろう俗人の会話を強制終了させた。
これで誰に邪魔されることもなく俺様のありがたい言葉を聞けるとあって、
きっとメイも喜んでくれるだろう。さっそく話しかけてやるとするか。
セイ   「よお、メイ」
メイ   「セ、セイ・・・イキナリなにしてんの・・・」
セイ   「まあまあ気にすんなって、誰だっけコイツ?」
メイ   「・・・あのねえ」
セイ   「ああ、金村とかいうヤローじゃねーか。
      ならいいじゃん、別に」
メイ   「・・・しょうがないなぁ」
金村   「な、何すんだ!いきなり!!」
いまなんとなく俺に蹴飛ばされたこのしょうもない雰囲気を漂わせた男。
コイツは金村 修(カネムラ オサム)とかゆーケチな小悪党だ。
一年の時同じクラスだったのでかろうじて覚えている。
すぐ強い方に取り入るコウモリくん。
自分より立場の弱い者を見下してなきゃ自分を確立できない、つまらんヤローだ。
なんとなくムカつく、ヤな奴さ。
セイ   「いやぁ、ワリィわりぃ。
      実は向こうから見てたらなんとなくオマエの側頭部が異様にムカついてよ。
      よくあるでしょ?こーゆーことって」
金村   「なんだそりゃ、クソッ、ムカつくぜ」
セイ   「ワリィな、ホラさっさと行けよ」
金村はぶつくさ文句を垂れながらはなれていった。
メイ   「・・・まったく、メチャクチャなんだから」
セイ   「あっはっは〜」
山口   「す、すごいな、阿部君って・・・。カッコイイな・・・」
セイ   「あん?」
この山の様な物体は山口 耕太(ヤマグチ コウタ)とかいう名が付けられていたはずだ。
最近メイとわりかし仲が良いみたいだな。
いわゆるデブだ。
しかもハンパじゃねぇ。
少しは食事制限しねーと早くも成人病に悩まされる事請け合いだ。
メイと一緒にいるので俺もたまに話したりするんだが、
コイツのおかげでデブに対する偏見を改めることができたので感謝している。
俺は常々デブは動きが遅いとか、デブは暑苦しいとか、デブはだらしないとか、
デブは異様に汗をかいて汚いとか、デブは食べてないと死ぬとか、
デブはいつも口の周りにチョコレートをつけているとか、
デブがいつもかいている汗はラードであるとか、
デブの寝言は必ず『もう食べられないよー』であるとか、
デブの好きな言葉は『おかわり』だとか、
デブの返事は『ブヒッ』であるとか、
デブのしっぽはクルンと輪を描いているとか、
デブは肉屋の店主を異常に恐れているとか、
デブは家畜小屋に集団で住んでいるとか、
家畜小屋の主人のおじさんは優しいとか、
その奥さんは気立てが良くてほがらかだとか、勝手に思い込んでいた。
まぁその大半は正しかったりもするんだが、
全部が必ず当てはまるわけでもなさそうだということを学ばせてもらった。
山口   「僕も・・・阿部君みたいになりたいな・・・」
セイ   「・・・・・。
      まぁ、がんばれよ・・・」
俺は絶対無理だと心の中で叫んでいた。
さて、無駄話もここまでだな、そろそろ授業がはじまるぜ。
セイ   「じゃ、また後でな、メイ」
メイ   「うん、それじゃ」
俺は自分のクラスの集団にまぎれた。
少し遅れて伊吹達も出てきた。
今日は女子も合同なのか?
そういえば今日は女子も一緒にグラウンドに出ている。
ほどなくして体育担当、東郷 大和が現れた。
と同時にチャイムがなる。完璧なタイミングだ。
きっと今のいままで裏で時報を聞いていたに違いない。
東郷   「整列!!」
男子のざわめきは一瞬でやみ整列する。
東郷の恐ろしさを知っているからだ。
一方女子はいまだにざわついている。
東郷の恐ろしさを知らないからだ。
新城   「先生、質問です。
      今日はどうして女子が一緒なんですか?
      緑川(ミドリカワ)先生はどうかされたんですか?」
東郷   「それはこれから説明する。心して聞けい!!」
新城   「は、はい!」
東郷   「これからしばらく体育は男子と女子合同でこの東郷 大和が受け持つ。
      理由は緑川先生が、その・・・さ、サンキュウだそうだ!」
伊藤   「産休です。先生」
絶妙のツッコミを入れたのはBクラスの伊藤 美樹(イトウ ミキ)。
インテリ、秀才な眼鏡のお嬢様だ。
メガネっ子はメガネをはずすと超美人というお約束があるがはたしてどうだろうか?
俺は彼女がメガネをはずした顔を見たことがない。
東郷   「うむ。サンキュウだ。何がなんだか俺もよくわからんが、
      とにかく緑川先生がしばらくお休みになることだけはまぎれもない事実。
      よってこの東郷 大和が、責任を持っておまえらを指導する!」
女子達からざわめきが漏れる。
花穂   「緑川センセー産休って、知ってた?
      ぜんぜんそんなふうに見えなかったじゃん」
伊吹   「うむ、初耳だな」
千歳   「・・・私は知っていた・・・」
東郷   「静まれぃ!!」
東郷の威圧感にさすがの女子も萎縮したのか、静かになる。
東郷   「それではこれより体育の授業を始める!」
今日の授業は100メートル走だったはずだ。
こないだ俺をライバル視している同じクラスのウドの大木がほざいていた。
東郷   「本日は100メートル走をおこなう!
      各自それぞれ己が魂をぶつけあう熱きライバルと一組になり整列せよ!
      1分以内だ!始めぃ!!」
むちゃくちゃ言う先生だ。
そしてこういう時、たいがい俺の相手を務めるのは・・・・・。
佐竹   「阿部〜!勝負だぁー!!」
ほ〜ら、おいでなすったぜ。
佐竹 雅之(サタケ マサユキ)。
このウドの大木こそ、いつも俺をライバル視して勝負を挑んでくる愚か者だ。
空手部所属の空手バカ。
単純、単細胞を絵に書いたような大男だ。
近々『全国高校生老け顔グランプリ』を二連覇するらしい。
こうなったら怒濤の三連覇を成し遂げてもらいたいものである。
セイ   「なんだ、また負けたいのかよ」
佐竹   「ぬかせ!今回はお前の汚い手口にやられたりはせんぞ!!」
セイ   「ハイハイ、せーぜー頑張ってみることだな」
佐竹   「フン、吠え面かかせてやる!」
ヒサシ  「新城、組もうぜ」
新城   「ぐっ、僕の計算では僕が君に勝てる確率はとても低いから嫌だ」
ヒサシ  「へへ、やってみなくちゃわかんねーじゃん」
ヒサシのヤロー、絶対勝てる相手を選びやがったな・・・。
花穂   「エッコ、一緒に走ろー?」
悦子   「えっ、で、でも・・・」
花穂   「いーじゃん、別に。それともアタシじゃ気に入らないっての?」
悦子   「い、いえ、そ、そういうわけじゃ・・・」
花穂   「んじゃ決まり」
・・・強引なヤツだ。
コイツも勝てる相手を選びやがる・・・・・。
伊吹   「さて、誰と一戦交えるか・・・」
千歳   「やろう」
伊吹   「ヒィィィ!!!」
千歳   「やろう」
伊吹   「妖怪め!成敗してくれる!!」
なに騒いでやがるんだアイツ・・・。
・・・ってな具合に各自相手を見付けて整列した。
東郷はストップウォッチとにらめっこしてるぜ。
東郷   「・・・・・時間だ」
ちなみに並ぶ順番は適当だから、それを知らない女子はとまどってたみたいだぜ。
東郷   「先頭の者、スタートラインに立て!」
ところで、俺達は最後尾だ。
なぜか佐竹のヤツがこだわる。
メインは最後じゃなきゃいけないらしい。
東郷   「行けぃ!!」
東郷の掛け声がスタートだ。
次々にデッドヒートが繰り広げられていく。
おっ、次はメイが走るみたいだ。
相手はさっきの金村ってヤローみたいだな。
セイ   「いったれー!メイ!!そんなヤツに負けんじゃねーぞ!!ブッ殺せー!!」
メイ   「やめてよセイ、恥ずかしいな・・・」
東郷   「行けぃ!!」
スタートした。
金村のヤツ、どうみてもフライングだったぞ。
だがメイを甘く見ちゃいけねーぜ。
どんどん追いついていくだろ。
よし!抜いた!!ざまーみやがれっ!
セイ   「いいぞメイ!!」
次の瞬間、金村のヤツがメイの腕を引っ張りやがった!!
不意をつかれたメイは転倒する!
セイ   「テメーなにしやがる!反則じゃねーか!」
そのまま金村はゴールしちまった。
セイ   「おい!東郷!見ただろ!反則だ!!」
東郷   「?なにがだ阿部?」
俺は視線を東郷に向けた!
東郷はBクラスの岩本 鉄矢(イワモト テツヤ)に注意を引きつけられていた。
ヤツが何やら東郷に話しかけ、注意を逸らしていたようだ。
この岩本って不良ヤローは金村のヤツとつるんでるらしい。
どうやら計画的犯行だな。
セイ   「レフェリーのブラインドを突きやがった・・・」
佐竹   「きたねーヤローだな」
伊吹   「外道が・・・」
さっきの蹴りの仕返しのつもりか?
東郷   「次!!」
次はその岩本って不良と、Bクラス最大のスーパーヘビー級、歩く肉団子。
勝負は最初から見えている。
だが、あきらめるな!おまえはやれる!奇跡をおこせ!
お前は飛べない豚じゃないはずだ!!
勝負は予想通り、不良ヤローが50メートルは差をつけて圧勝した。
やはりただの豚だったようだ・・・。
だが情けねーぜ、あの不良ヤロー。
俺なら80メートルは差をつけて勝っていただろう。
そして次々に消化試合が終わっていく。
新城   「ヒィヒィ・・・」
ヒサシ  「悪いな、勝たせてもらうぜ!」
ヒサシは順当に理屈屋を引き離していく。
しかし次の瞬間足がもつれてころんだ。
セイ   「ぎゃははは!だっせーヒサシ!!」
ヒサシ  「ああ!!」
スローペースながら普通に走り続けた新城がそのままゴール。
セイ   「ぎゃははははは!!負けてやんのハズカシー!」
ヒサシ  「うるせーぞセイっ!」
新城   「確かに、やってみなくちゃわからないね。
      君には良いことを学ばせてもらったよ」
ヒサシ  「それ以上しゃべるな、死にたくなる・・・」
お次は花穂たちだな。
花穂   「ごめんね〜、悪いけど本気だすよー」
悦子   「あ、あの、お手柔らかに・・・」
これまた結果の見えたカードだ。
俺がコミッショナーならこんなカードは絶対組まん。
だが、さっきの新城の例もある・・・。
勝負は最後までわかんねーぜ。
セイ   「がんばれよー!松岡さーん!」
悦子   「えっ、あ、あの・・・は、はい!」
花穂   「ちょっと、アタシのこと応援しなさいよね〜」
佐竹   「水森さん、ファイトォー!!」
花穂   「あ、アリガト・・・・・△」
東郷   「セコンドアウトだ」
ボクシングじゃねーって・・・。
東郷   「GO!!」
良いスタートをきった花穂と、出遅れた松岡。
やはり勝負は見えていたか・・・。
スピードにのる花穂と、ずっとローギアの松岡。
やはりダメだ、いまにもエンストしちまいそうだ。
だが次の瞬間、再び奇跡が起こる!
ヒサシとほぼ同じあたりで花穂が転倒したのだ!
きっとヒサシの呪いだろう。
懸命に追い上げる松岡。
大金星か!?
しかし花穂は立ち上がると再び走り出しそのままゴール。
・・・やはりずっとローギアではクラッシュしても勝てないか・・・。
どうやらさっきの新城は二速(セカンド)だったことが判明した。
お次は伊吹対千歳だ。
退魔士VS妖怪。まさに運命の好カードだ。
俺がコミッショナーでも迷わずこのカードを組んだだろう。
伊吹   「手加減せぬぞ」
千歳   「ふふふ・・・」
東郷   「GO!!」
千歳はちょこまかとアニメのような独特の走法でスタートする。
走り出す手前に一瞬宙に浮いてタメを作るのがコツだ。
一方の伊吹は何故かスタートしない。
マ●ハンド(のようなもの)だ!
マドハ●ド(のようなもの)が伊吹の足首をつかんでいる。
伊吹   「な、なんだコレは!?」
その間に千歳はアニメ走法でゴール。
伊吹はスタート地点だから前代未聞の100メートル差だ。
伊吹   「ひ、卑怯な・・・・・」
千歳のゴールと同時にマドハンド(のようなもの)は地面に溶け込んでいった。
東郷   「相楽、やる気がないなら帰れ」
伊吹   「おのれぇ・・・・・」
マドハンド(のようなもの)から解放された伊吹は、
まさに疾風のごとくゴールまで駆け抜ける。
だが負けだ。
伊吹   「今日は厄日だ・・・。無念無念無念・・・・・・」
さぁて、お次はいよいよ俺の出番だぜ。
メインイベントだ!
佐竹   「ふふふ、どんなにこの瞬間を待ち望んだことか・・・・・。
      今日こそはリベンジしてやるぜ!」
セイ   「フン、かかってこいよ。単細胞」
花穂   「セイ負けちゃえー!」
ヒサシ  「転べ転べ転べ・・・・・」
セイ   「そこ!不穏なこと言ってんな!」
悦子   「・・・・・が、がんばって・・・」
伊吹   「くだらん!」
東郷   「ではゆくぞ!真剣勝負!待ったなし!・・・・・GO!!」
俺と佐竹は一斉にスタートをきった!
この馬面はデカイ図体のわりに走るのが速い。
やはり馬なのかもしれない。
あるいはストライドが大きいためだろうか。
だが、なにをやっても天才である俺が負けるわけがない。
佐竹   「うおおおおおおおおおおお!!!!」
凄まじい気合いだが、俺には関係ない。
このままカタをつけてやる。
佐竹   「ぬおおおおおおおおおおお!!!!!」
セイ   「なに!?」
なんだコイツ!
スピードが上がった!!
ウソだろ!気合いで克服できうる事じゃないと思うぞ。
それとも俺の背中にニンジンの絵でも貼ってあるのか?
やはり人との勝負に馬を投入すること自体反則なんだ。
ちくしょう、なんてこった汚いヤツめ!
そっちがその気ならこっちにだって考えがある。
凄まじい形相で迫ってくる馬面を確認し、その方向に思い切り砂を蹴り上げた!
猫なんかがよく後ろ足で砂をかくだろ。アレとおんなじだ。
巻きあがった砂埃は見事に馬面に命中した。
佐竹   「ぐおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
視力を奪われた佐竹はフラフラとコースアウトしていく。
可哀想だがランナウェイ・ホースだ。
俺はそのままゴールテープを切った!
またしても俺の勝ちだ。
佐竹   「きたねーぞ!阿部!!」
セイ   「アクシデントだ」
佐竹   「ワザとだ!!」
セイ   「どこに証拠がある?」
佐竹   「そ、それは・・・」
セイ   「素直に負けを認めろ」
佐竹   「お、おぼえてろ!次は必ず勝ってやる!」
東郷   「うむ、その心意気や良し!すばらしきライバル関係!」
やめてくれよ・・・。
佐竹   「ライバル?」
東郷   「そうだ!ライバルは真の漢となるために必ず必要な存在だ!
      互いに切磋琢磨し、漢を磨く。これぞ男道!!」
佐竹   「こ、これが男道・・・」
やめてくれ・・・・・。
東郷   「素晴らしきライバルに巡り会えた運命に感謝しろ!
      今日の日を決して忘れるな!」
佐竹   「はい!そうかライバルか、なんて素晴らしい響きだ!」
やめろって・・・・・。
佐竹   「阿部、俺はとても清々しいよ!
      今日は俺の負けだ。だが次は負けん。
      俺はもっと強くなる!
      今日はありがとう!また勝負しようぜ!!誓いの握手だ!」
ノリやすい単純バカが汗をキラキラ光らせながら
熱い血潮の滾った(たぎった)右手を差し出してきた。
佐竹   「さあ!」
セイ   「・・・・・」
俺は差し出された右手に、そっとチョキを返して身を翻す。
これで今日二連勝だ。
雑魚め・・・出直してこい。
佐竹   「・・・・・」
バカはプルプルしている。
東郷   「よぉし、本日の授業はこれまで!解散!!」
やっと二時間目が終わったぜ・・・。
これで休めるってもんだ。

お次の授業は数学だ。
はっきり言って高校の数学はムチャクチャだ。
絶対役に立たない授業ランキングのナンバーワンをいつも争っている科目だ。
使えねーのに難易度だけは異常に高騰してやがる。
ゆとり教育でどうにかしろってんだ。
佐竹   「今日の事は忘れんぞ!次こそ叩きつぶしてやるからな!」
ヒサシ  「ちくしょうチクショウ畜生・・・・・」
花穂   「最近ちょっと暑くなってきたよねー。
      体育の後だともう汗ダク〜」
各自それぞれに休憩時間を過ごしてるぜ・・・。
松岡さんは次の授業の予習してる。
偉いモンだよな・・・。
伊吹は・・・寝てる・・・。
さすがに今朝から走り通しで疲れたんだろうな。
俺も眠くなってきたぜ・・・。
全身が睡眠を欲してるようだ・・・・・。


・・・・・。
あれ、少し寝ちまったようだな。
もう次の授業が始まってるぜ・・・。
数学はBクラスの担任である秋篠 鷹久(アキシノ タカヒサ)って先生が担当だ。
この先生は生徒に無関心な事で有名だ。
だから寝てようが何してようが、授業の妨害さえしなけりゃ怒ったりしない。
ウチの担任と完璧に正反対だな。
だが授業の妨害をしたらすんげー冷たい視線で射抜かれた後、
厳しい罰を与えられるんだ。
人間味のない冷酷教師だ。
セイ   「先生」
俺は静かに席を立った。
秋篠   「なんですか?」
セイ   「ちょっと気分悪いんで保健室いってきます」
秋篠   「わかりました」
伊吹   「・・・んあ?」
伊吹も目覚めたようだな・・・。
俺は教室を出た。
たったこれだけだ。
これだけで授業を抜け出せるんだ。
こんなに簡単にサボれるんだ。信じられるか?
とりあえず俺は自分の言葉通り保健室へ直行した。

セイ   「どぉも〜」
桃井   「あら〜、いらっしゃ〜い」
この女性が我が校の誇る保険医、桃井 幸子(モモイ サチコ)先生だ。
いつもニコニコしているやさしくて面倒見の良い先生だ。
だがちょっとヌケていて、生徒の話をすぐ鵜呑みにしちまうことが欠点かな。
ま、俺にはそれが有り難いんだがね。
桃井   「またキミね〜。きょうはどーしたの〜?」
セイ   「また少し気分が悪くて・・・。
      しばらくベッドで横にならせてください」
桃井   「あらあら〜、それはたいへんね〜。
      さ、はやくよこになって〜」
セイ   「すみません」
桃井   「おねつとかはないの〜?」
セイ   「はい、たぶん」
桃井   「あらあら〜、ざんねんね〜」
セイ   「・・・・・」
この先生は時々失言をするようだな・・・。
セイ   「先生、寒いよ、一緒に寝ようよ〜」
桃井   「うふふ〜、いいわよ〜。
      でも〜、ねるならケッコンしなきゃいけないのよぉ〜。
      もしことわったらコロスからねぇ〜?」
セイ   「や、やっぱいいや、暑くなってきたんで遠慮するよ・・・」
桃井   「そぅお?ザンネンねぇ〜」
この先生はどこまで本気かわからん・・・。
とりあえず眠いし、一眠りしとこうぜ・・・・・。

・・・・・。
かすかにチャイムの音が聞こえる・・・・・。
どうやら授業が終わったらしいな・・・。
セイ   「ン〜・・・」
桃井   「あらぁ、おめざめ〜?」
セイ   「ああ、もうすっかり気分爽快だ。
      サンキュ先生。じゃ、そゆコトで」
桃井   「は〜い、おだいじにぃ〜」
俺は保健室を出て教室に向かった。
寝てる間に数学はオシマイさ。
睡眠学習ってヤツだな。違うか?


四時間目は英語だ。
コレがちょっとおもしれーんだ。
英語担当の井上 孝子(イノウエ タカコ)先生は今年大学を卒業したばかりの
うら若き新米教師なんだ。
美人ってカンジじゃないが、カワイイ雰囲気の女性だな。
制服着てこっちに座ったら絶対先生だとは思われないぜ。
きっとウチの東郷なんかは普通に出席とっちゃうね。
ところでこの先生、とても気が弱いんでチョットのことでもすぐ泣きだすんだ。
からかいがいのある性格だが、可哀想なのであんまりイジメちゃイケナイぜ。
おっと、チャイムが鳴った。
・・・・・。
だが誰も来ない・・・。
一瞬の沈黙の後、雑談タイムがスタートする。
伊吹   「セイ、貴様三時間目をサボったな」
セイ   「何を言う。睡眠学習だ」
伊吹   「教室にいなかったクセに戯れ言をほざくな」
セイ   「あ、そーか、睡眠学習してたのは伊吹だったな」
伊吹   「ぐっ・・・。
      な、なぜ教室にいなかったお前が知っている・・・」
セイ   「全知全能だからだ。我を崇めよ」
伊吹   「寝言は寝て言え」
セイ   「寝てたのはお前だ」
伊吹   「ぐっ・・・」
俺らのアカデミックな会話を皮切りに、そこここで雑談が始まっていくぜ。
花穂   「あっ、教科書ガイド忘れた〜。
      ヒサシ〜、次の英語の訳やってる〜?」
ヒサシ  「オイオイ、俺を誰だと思ってんだよ?あたりまえだろ」
花穂   「サンキュ。見せてネ」
ヒサシ  「要求の前にお礼を言うな。そして有料だぞ」
花穂   「なにソレ!ケチ〜」
ヒサシ  「だから俺を誰だと思ってんだって」
新城   「あ、あの、水森さん。僕のを御覧になりませんか?」
花穂   「えっ?いいのォ?ラッキー♪」
ヒサシ  「オイ、ガリ勉!営業妨害すんじゃねーよ!」
新城   「黙っててくれないかね?負け犬君。勉強の邪魔だよ。ね?水森さん」
花穂   「そーそー、ジャマジャマ」
ヒサシ  「て、テメー・・・おぼえとけよ」
そうこうしていると、ようやく先生がやってきたみたいだぜ。
廊下をパタパタ走る音が聞こえてくる。
井上   「お、遅れてごめんなさい!さっそく授業を始めます!」
息きらせて走ってきちゃって、健気だねぇ。
井上   「今日は、え〜と・・・どこからだっけ・・・。
      えーと、え〜と・・・・・」
もう泣きそうだ。
・・・ってゆーか、すでに泣いてきてるなこりゃ・・・。
おそらく三時間目に泣かされたんだろう。
まあ、感動のたぐいじゃなさそうだな。
それでちょっと遅れたんだろう。
井上   「あ・・・今日はレッスン2の最後だっけ?」
新城   「先生。それは前回終わりました。
      今日はその次の復習問題です」
井上   「あ、そうだったよね!ゴメンナサイ!
      じゃさっそく、最初の例文を読んで訳してみてください」
・・・・・・・・・・・・・・。
ヒサシ  「・・・誰がですか?」
井上   「あっ、ゴメンナサイ!ウッカリしてた!
      じゃあ・・・・・古屋君」
ふぅ、アブネーとこだ。
今日やるトコで俺にわかるのは二カ所だけだ。
それ以外が当たったらアウトだぜ。
ヒサシ  「はい。・・・えーっと、Make me famous.
      『俺を有名にしてくれ』」
井上   「はい正解。ちゃんと予習してきてるね」
ヒサシ  「そりゃあもう」
井上   「じゃあ次を・・・んー・・・っと、松岡さん」
悦子   「・・・・・Rest in peace.
      『安らかに眠れ』・・・」
井上   「Excellent!
      いい調子ね、じゃあ次を〜・・・」
ここだ!
ここできやがれ!!
おっ、こっち向いてるぜ!こい!!
井上   「相楽さん」
なんだよ・・・。
伊吹   「はい。・・・・・Indeed.」
井上   「そうね、じゃ訳は?」
伊吹   「・・・『左様』」
井上   「はい、よくできました」
ちくしょう、伊吹め・・・。
簡単なトコあたりやがって・・・。
伊吹は英語が苦手だからな。おそらくわかるところはここだけだったはずだ。
運の良いヤツだな。
見てみろ、これ以上ないってほどの安堵の表情うかべてやがる。
これで俺にわかるのはアト一つだ。
次だ。
次であたらなければ俺は一時間ずっと下を向いて過ごしてやる。
井上   「それじゃあ次は・・・」
こいこいこい・・・・・。
井上   「んー・・・じゃ隣の阿部君」
セイ   「よっしゃー!!!」
井上   「な、なに!?どうしたの??」
セイ   「あ、イヤ・・・なんでもないっス・・・」
イカンイカン、ついExciteしちまった・・・。
井上   「そ、それじゃあ・・・答えてください」
セイ   「オゥよ!いいかテメーら、よく聴きやがれ!
      Because St●ne Cold Said So.」
井上   「Wonderful!!じゃあ訳して」
セイ   「『石のように冷たい者はかく語りき』よォ!」
井上   「Your answer is correct.」
セイ   「フッフッフ、見たか愚民ども」
この言葉は俺の尊敬する石のように冷たいお方の名言なので知ってるんだ。
井上   「フフフ、ちゃんと予習してくれてるんだね!
      みんなちゃんとやってくれてうれしいです。
      あたしこのクラス大好き!」
花穂   「あ〜、センセー泣いてるゥ〜☆」
井上   「あは。そうだね。先生泣いちゃった。
      みんなちゃんとしてくれて、それでうれしくて・・・・・。
      ツライ事もたくさんあるケド、教師になってヨカッタナって・・・・・」
今日は嬉し泣きだってさ。
ホント、泣き上戸な人だよな。
花穂   「よかったね、センセー☆」
井上   「うん!それじゃあこのイキオイで・・・・・。
      次はちょっとだけ難しいケド、
      水森さん、やってくれるよね?」
花穂   「もっちろんだよ!えっと・・・・・
      If you smell what the R●CK is cooking.
      『ロ●ク様の妙技を味わえ』です☆」
井上   「ああ、素晴らしいわ・・・。
      あたしはこのクラスを受け持てて神に感謝します」
ヒサシ  「でも先生。花穂はカンニングっスよ?」
井上   「えっ・・・・・?」
花穂   「な、よけーなコト言ってんじゃないわよ!バカヒサシ!!」
ヒサシ  「でもホントのことじゃん」
井上   「そ、そうなの?水森さん」
花穂   「え、イヤー、まぁその・・・・・ねぇ」
井上   「し・・・信じてたのに・・・・・」
あ、ヤベーぞ。
井上   「騙してた・・・の・・ね・・・・・?ぐすっ・・・」
どうやらきちまったみたいだな。
花穂   「ヤバー・・・。ちょっとヒサシ、なんとかしなさいよ」
ヒサシ  「しらねーよ」
花穂   「あんた便利屋でしょー?」
ヒサシ  「関係ないね」
井上   「うっ・・・ううっ・・・・・・」
あ〜あ、はじまった・・・・・。
井上   「うえ〜ん」
『Cry Time』だ・・・・・。

授業は先生の途中リタイアであえなく終了。
今日はけっこうがんばってた方なんだがな・・・。
ま、とにかくこれで午前中の授業は終了だ。
メシだメシ、腹減ったぜ。
ヒサシ  「メシ買いに行こうぜ」
俺らはだいたいいつも購買部に昼飯を買いに行く。
いつも昼時は激戦区だが、今日は授業が早く終わったので余裕だな。
セイ   「よっし、行くかァ」
花穂   「あ、待って。アタシも行くよ」
セイ   「伊吹は?」
伊吹   「私は作ってきた弁当がある」
セイ   「んじゃ、ちょっくら行って来るから待ってろ」
伊吹   「いつもの事だが、どうして皆で食さなければならん」
花穂   「まあまあ、皆で食べた方がおいしいじゃん」
伊吹   「フン、別にかわらん。それより私は屋上というのが今だにげせん」
花穂   「なに言ってんの。健康的でイイじゃん」
セイ   「行くぞ、花穂〜」
花穂   「あー、待ってよォ」

だいたい学校の購買部は一階にある。
俺達二年は三階から階段で行ったり来たりだ。
ほとんど修行のようなモンだ。花穂は『ダイエットにイイ☆』とかほざいてたな。
ウチの購買部はばーさんがひとりで切り盛りしている。
昼時にはばあさんの異常なまでのバイタリティに驚かされるぜ。
老婆   「いらっしゃいませ」
さ、どれにしようかなっと。
ヒサシ  「俺、コロッケパンとメロンパン」
老婆   「200円でございます」
花穂   「アタシあんぱん」
老婆   「80円でございます」
花穂   「ハイ、ちょうどだよ」
ヒサシ  「ひとつでいいのかよ?」
花穂   「当然でしょ。オンナのコなんだからね」
セイ   「んじゃ、俺はあのパンとこのパンと・・・あとコレね」
ヒサシ  「オイオイ、最後のソレなにすんだよ」
花穂   「ヘルシーにまるかじりとか」
セイ   「おみやげだ」
老婆   「210円でございます」
セイ   「200・・・10っと、はい」
老婆   「ありが と」
ムカッ。
なぜかこのばあさんのお礼はムカツクんだ。
ま、口には出せない本音だな。
さ、とりあえず教室にもどろうぜ。
伊吹が待ってるからな。

階段を上っていると縄田が降りてきたぜ。
コイツの教室は二階なんだ。
縄田   「ありゃ、みなさんはもう買い物済んじゃったんスか?」
セイ   「おう、いまな」
縄田   「じゃ、俺も買ってきます。ちょっと待っててくださいよ」
セイ   「ヤダね。屋上で待っててやるよ」
縄田   「ちぇ、すぐ行きますよ」
俺達は縄田と別れて教室へ向かった。

セイ   「伊吹、おまた〜」
伊吹   「はやかったな」
ヒサシ  「んじゃ行こうぜ」
セイ   「あ、ちょっと待ってくれ」
俺はとりあえず佐竹の席に向かう。
伊吹   「なんだ?」
花穂   「さあ」
いま買ってきたものをさりげなく机上においてやる。
佐竹   「・・・・・なんだコレは?」
セイ   「プレゼントだ。よろこべ」
佐竹   「ナマのニンジンじゃねーか!」
セイ   「じゃあな」
きっと大好物だろう。
いいことをすると気持ちがいいぜ。
おそらく本能のままにニンジンにむさぼりついているであろう佐竹に背を向け、
伊吹達に合流しようと歩き出した時、クスクス笑いが聞こえてきた。
俺の善行を見物してたんだろう。松岡が微笑んでいる。
悦子   「クスクス」
セイ   「そんなに微笑ましい光景だったか?」
悦子   「クス、阿部君っておもしろいね」
セイ   「そうか?当然の事をしたまでだが・・・」
悦子   「見てると私まで楽しい」
セイ   「そりゃ良かった。ところで、俺らこれから屋上で昼飯食うけど、
      よかったら一緒に来るか?」
悦子   「えっ・・・。
      あ、でも、・・・・・」
セイ   「遠慮すんなって」
悦子   「・・・・・。
      ごめん、やっぱりいい。
      私、あんまり皆と騒ぐのって得意じゃないから・・・」
セイ   「・・・そっか。
      ま、気が変わったらいつでも来な。じゃあな」
悦子   「うん、ありがとう・・・」
まあしょうがない。
性に合わない事ってのは誰にでもあるもんだ。
無理させちゃかえってよくないからな。
さ、伊吹達と合流だ。
セイ   「おまたせ」
花穂   「おそーい」
ヒサシ  「早く行こうぜ。もう縄田来てるかもしんねーし」
そんじゃ屋上でメシだ。
今日は天気がいいから良い気分だと思うぜ。

階段を上ると重そうな扉がある。
これを開けば屋上に出られるぜ。
扉を開けるとそこではすでに縄田が待っていた。
縄田   「遅いッスよ。なにやってたんスか」
セイ   「お前はえーな」
縄田   「みなさんをお待たせしちゃ悪いッスから」
セイ   「誰も待ってねーけどな」
縄田   「あー、ひでーっス」
花穂   「ハロー」
伊吹   「古屋、さっさと茣蓙(ゴザ)を敷け」
ヒサシ  「はいよっと」
屋上は雨なんかで汚れている。
俺たちゃ気にしないんだが、伊吹や花穂は直に座るのを好まない。
だからいつもヒサシがビニールシートを用意してるんだ。
まるでワガママお姫様とその家来だろ。
ちなみに屋上はいつも俺達が占領しているから部外者は立ち入らない。
貸し切り状態だ。良い環境だ。
花穂   「それじゃ食べよーか」
縄田   「あれ、でもまだメイ先輩が来てませんよ」
ヒサシ  「もうすぐ来るだろ。ちょっと待ってやろーぜ」
花穂   「そーだね」
セイ   「えー、ご飯がさめちゃうよぉ」
ヒサシ  「パンだろ」
セイ   「腹減ってるんだ」
伊吹   「少しくらい待てんのか?せわしないヤツだ」
セイ   「だってランチタイムなんだぜ?腹減ってて悪いってのか?」
花穂   「アタシもお腹減ってきたなぁ〜」
ヒサシ  「友達がいの無い奴らだな。縄田、コイツらのようになるなよ」
セイ   「兄弟だもん」
縄田   「人の振りみてなんとやらっスね」
伊吹   「『我が振り直せ』だ。教養がたらんな」
そうこうしているとようやく階段から足音が聞こえてきた。
やっと来たようだな。待たせやがって。
もしここで『ヒーローは遅れて来るもんだ』などとぬかしやがったら、
俺は何のためらいもなく鉄柵の外へ放り投げるだろう。
メイ   「お待たせ」
セイ   「命拾いしたな」
メイ   「エ?何の話??」
伊吹   「バカの戯れ言だ。いちいちかまうな」
セイ   「ヒドイ・・・」
縄田   「さぁさぁ、メイ先輩、こちらへどーぞ」
メイ   「うん・・・」
・・・なんだ?
なかなか来ようとしない・・・。
なんだってんだ。こっちは腹空かせて待ってるってのに。
言いたいことがあるなら早く言えっての。
花穂   「どしたの?」
メイ   「じ、じつは、友達がついてきたんだケド・・・入れてもいいかな?」
ヒサシ  「なんだよ、そんな事か。いいに決まってんじゃん。なあ?」
花穂   「そーだよ。はやく呼んであげなよ」
セイ   「オウヨ、大歓迎に決まってんじゃん」
メイ   「よかった、それじゃあ・・・・・来てもいいってさ」
まったく、コイツは小心者だな。
そんなことを気に病む必要なんかねーってのによ・・・。
そんなに気を使って生きてると肩凝るだろうに。
ま、そこが良いトコでもあるんだがな・・・。
それにしても、俺達がそんな事気にするハズ・・・・・。
山口   「ふぅふぅ、よ、よかった・・・」
なるほど。そうきたか・・・・・。
前言撤回。
メイ   「じゃあ好きな所に座りなよ」
山口   「う、うん・・・」
デブちんは右往左往してるぜ・・・。
当然だな。いきなり好きなトコって言われてもな・・・。
こういう場合は連れてきた奴がエスコートするもんだ。
我が弟ながら気のきかないヤツだ。
俺達はまるで『ハンカチ落とし』でもしてるみたいに無言でうつむいている。
後ろでは鬼が右往左往だ。
気まずいなんてもんじゃない・・・。
セイ   「オイ、メイ・・・。なんとかしろ」
メイ   「え?・・・あ、山口君、こっち、僕の横座りなよ」
やっとだ・・・。
まったく、これだからメイは・・・って、メイの横って・・・・・。
山口   「う、うん・・・」
俺の隣じゃーん!!
あああ、まるで満員電車のようにシートから押し出されちまったぜ。
しかたない、俺だけ地べたに座るか・・・。
しかし暑いな。
なんかいきなり左側面だけ亜熱帯にいるようだ。
昼が終わるころには針葉樹林が育ってそうだな・・・。
花穂   「そ、それじゃあそろそろ食べようよ☆
      アタシお腹空いちゃったよぉ」
ヒサシ  「そ、そうだな、食おうぜ」
伊吹   「う、うむ」
縄田   「そんじゃ、いただきま〜ッス」
各自それぞれ弁当やらパンをだして食べ始めたぜ。
俺とヒサシ、花穂、縄田はパン。
メイは弁当。伊吹はにぎりめしだ。
そしてデブちんは・・・ご、五段重ねの重箱だ!!
一食でソレ全部平らげるってのか!?
冗談じゃねーぞ!
そんなことしてたら日本のエンゲル係数が跳ね上がるじゃねーか!
農家のおじさんがどんなに汗水たらして頑張っても、国内の米生産高を上回るぞ!
アメリカからの回し者じゃねーのか!?
オバQにでも喧嘩売ってんのか!??
縄田   「な、なんか凄いッスね・・・」
山口   「そ、そうかな・・・・・?」
花穂   「な、なんか胸焼けしてきた・・・★」
松岡、アンタ来なくて正解だよ・・・。
俺達が呆然と見守るなか、重箱は次々にその内容物を奪われて軽くなっていく。
早い。一口がでかいからだろう・・・。
なんか見てるだけで腹一杯ってカンジだ。
花穂   「スゴ・・・」
ヒサシ  「そ、そんなに食べたら喉つまるぞ・・・」
山口   「あ、わすれてた・・・」
花穂   「ウッ・・・」
デブゴンは鞄から3リットルのペットボトルをとりだした。
まさか全部飲み干すつもりじゃあるまいな・・・。
勘弁してくれ。
どこで売ってるんだ。
だいたいどうやったらそれだけのモンが鞄に入るんだ。
山口   「これでいいや・・・」
メイ   「さすがにすごいね・・・」
俺達が見守るなか、胃にブラックホールを持つ男は重箱を片付けた・・・。
その間俺達は一口も食べずに石化していた・・・・・。
山口   「ごちそうさまでした」
やっと終わってくれたようだな・・・。
もうこんな悪夢のような光景はお目にかかりたくないな。
さあ、気を取り直して俺達も昼食だ。
・・・と思ったら山口がじーっと向かいに座る花穂を見つめているぜ・・・。
ヒサシ  「・・・オイ」
ヒサシが小声で花穂に知らせる。
獲物を狙う視線に気付いてしまった花穂はすぐさま目を真横にそらす。
花穂   「・・・あ、アタシ・・・食べられちゃうのカナ・・・・・」
泣きそうだ。
山口   「・・・あのう・・・」
花穂   「ハイッ!」
山口   「・・・・・」
花穂   「・・・食べられる・・・アタシ絶対食べられる・・・・・」
半泣きだ。
山口   「そ、それ・・・食べないなら、も、もらってもいいかなぁ?」
デブゴンは花穂の手にある手つかずのアンパンを指さす。
花穂   「あ・・・こ、コレ?」
山口   「う、うん・・・」
花穂   「こ、こんなものでいいなら、いくらでもあげるよ!」
花穂は心底ホッとしているようだ。
まるで生け贄のようにパンを差し出した。
山口   「あ、ありがとう・・・水森さんって、やさしいな・・・」
花穂   「あ、アリガト・・・・・△」
・・・オイオイ。
まさかこのおデブさん、いまの一件で・・・・・。
ご愁傷様だったな花穂・・・。
交通事故にでも遭ったと思ってあきらめてくれ・・・。
しかしこのデブはまだ食うってのか・・・。あれで足りないってのか。
メイ   「うわっ!?」
なんだなんだ!?
デブに食われたか!?
縄田   「な、なんスか!?ソレ〜」
何か得体の知れない触手のようなモノがメイの後ろから生えている!
ソレがメイの弁当からおかずを一品抜き取ったのだ!
どうやらそれはエビフライのようだ!
メインをとられたメイはなかば茫然自失だろう。
触手の先には牙だらけの口がついている。見るからに醜悪な化け物だ!
セイ   「メイ!術で焼きつくしちまえ!!」
メイ   「わかった!・・・我が炎を受けてみよ!」
千歳   「ゴメンゴメン」
突然千歳がメイと化け物の間に現れた。
千歳   「こんなトコロに逃げちゃって・・・」
千歳はソレをヒョイっと掴み、無造作に弁当箱に放り込む。
千歳   「じゃあね」
そのまま蓋をして何事もなかったように立ち去っていく・・・。
メイ   「・・・・・」
セイ   「・・・・・」
伊吹   「・・・・・」
花穂   「ねえ!ナンなの!?いまのナンなの!?」
セイ   「忘れよう・・・それが一番だ・・・」
何もなかった。
化け物なんか見ちゃいない。
俺達は何も見ちゃいない。
メイ   「うわっ!??」
今度は何だよ?
ゆっくり昼飯食おうぜ。
朱雀   「くわぁ〜」
また変なのが出てきちまった・・・・・。
大方昼飯の匂いにつられて目覚めたんだろーぜ。
あさましいヤツだ。
花穂   「な、なにソレ〜!?」
伊吹   「そういえば、学校についてきたんだったな」
ヒサシ  「なんだよこの赤いの!?」
メイ   「ああ〜、お昼ご飯の匂いで起きちゃったんだ〜・・・」
セイ   「・・・キョロキョロしてるぜ?大丈夫か?コイツ」
朱雀   「ゴハン〜?」
花穂   「なにコレ!なにコレ!なにコレ!?かわいい〜☆」
メイ   「こ、これは今日から僕の式神として・・・」
セイ   「ペットだ、ペット」
花穂   「マジィ〜?すごいカワイイじゃん☆」
ヒサシ  「逃げねーのか?ソレ・・・」
伊吹   「大丈夫だろう。おそらく大自然では生きていけんだろうしな」
朱雀   「なんですか?あなたがたは?」
花穂   「しゃべったよ!?」
セイ   「九官鳥もしゃべるだろ。あれとおんなじだ」
花穂   「なるほど。そっか。でもスゴイ可愛い〜☆アタシもほしい」
伊吹   「悪いことは言わん、やめておけ」
朱雀   「さっきからいったい何なんだね、キミたちは」
セイ   「・・・オイ」
メイ   「・・・また記憶が消去されてるみたいだね・・・」
セイ   「コイツは脳が無いのか?」
朱雀   「失敬ですね、キミは」
俺がなにげに指さすと噛みついてきやがった。
セイ   「イデデデ!!なにしやがる!!」
朱雀   「失礼な事を言うからです」
セイ   「黙れ脳無し!」
朱雀   「このインテリジェンスなワタシのドコが脳無しなんですか!」
花穂   「そうよセイ。いじめちゃかわいそうでしょ。鳥なんだから」
朱雀   「さすが、話のわかる人だ。今日からアナタをご主人様と・・・」
伊吹   「コラコラ、貴様の主人はメイだろうが」
朱雀   「メイ・・・?」
考え中、考え中。
しばらくおまちください・・・・・。
さて、そろそろカップラーメンが出来上がる頃だな・・・。
朱雀   「・・・・・!、メイ様!!」
メイ   「キミさ・・・、いいかげん憶えるべきなんじゃないの」
朱雀   「まことにもうしわけアリマセン!朱雀一生の不覚!」
セイ   「どうしようもねーバカだな・・・」
朱雀   「なんですって?さっきからなんなんですかアナタは。
      いちいちケチつけて・・・!メイ様と同じ顔!?
      貴様ドッペル・・・」
伊吹   「これ以上繰り返すならば斬る」
朱雀   「けー!!」
メイ   「ホラ、セイだよ。ホントにそろそろ憶えなきゃ・・・」
朱雀   「ははっ。次までには何としても・・・」
セイ   「無理だろ」
朱雀   「フムフム、このマヌケはセイとゆーのか・・・」
セイ   「なんだと」
いちいちムカツク鳥だ。
串焼きにして食ってやろうか。
伊吹   「ところで私のことは憶えているのか?」
朱雀   「・・・・・わ、わずかに・・・そうだ!メイ様の侍女!」
伊吹   「誰が侍女か!だれが!!」
縄田   「ははは。それじゃ、俺は憶えてるかな?」
朱雀   「ナワワ」
縄田   「どーしてソコだけ憶えてるんだよ!」
メイ   「なんで僕よりハッキリ憶えてるんだ・・・」
朱雀   「ところで皆さんはお昼ですか?
      いいですねぇ。ワタシもお腹ペコペコです」
花穂   「あはは☆それじゃアタシのを・・・。
      あ、そーか、もうあげちゃんだった・・・」
朱雀   「無理にとは申しません」
花穂   「ヒサシ、アンタひとつあげたら?」
ヒサシ  「なに言って・・・」
花穂   「ホラ、コレあげる〜」
ヒサシ  「テメッ、なに勝手に・・・」
花穂   「まぁまぁ、いいじゃん」
ヒサシ  「よくねー!」
朱雀   「どうもありがとうゴザイマス。
      おや?あそこにお重がありますね。アレも少しいただけませんか?」
山口   「あ、あれはもう空だよ・・・」
朱雀   「なんですか、キミは。暑苦しいですね」
オマエも十分暑苦しいケドな・・・。
朱雀   「少しはダイエットでもしたらどうです?」
山口   「う・・・」
オオ、みんなが言いたかった事をアッサリと・・・。
たまにはコイツも役に立つんだな。
ところで、なんか花穂のヤツがバカ鳥を気に入ったみたいだな。
世話焼いてくれるんで助かるからいーけど。
朱雀はメイの弁当から恵んでもらったおかずで腹一杯になったらしい。
おとなしくメイの胸ポケットに入って寝たようだぜ。
食ってすぐ寝てると火の牛になっちまうぜ・・・。
山口   「・・・・・寝ちゃったの?」
メイ   「朱雀は少しでも暗いところに入るとすぐ寝ちゃうんだよ」
山口   「へぇ〜・・・」
メイ   「それより、お昼どうだった?」
山口   「うん、すごく楽しかったよ・・・。
      僕、いままでクラスメートと一緒にご飯食べたこととかなかったから・・・」
メイ   「そうなんだ」
・・・・・。
ま、楽しかったんなら良かったかな・・・。
なんだかんだで昼食も終わりだ。
少し腹ごなしでもしてこよう。
セイ   「おい縄田、ちょっと滑ってこよーぜ」
縄田   「いいっスね〜、お付き合いしますよ」
俺と縄田は素早くローラーブレードに履き替える。
さすがに縄田ももう慣れたもんだ。
これが俺達の昼のお楽しみだ。
セイ   「これでヨシっと」
縄田   「こっちもオーケーっス」
メイ   「気をつけなよ」
セイ   「大丈夫だって」
伊吹   「毎度毎度、飽きもせずよくやるものだ」
セイ   「ヒサシ、後でジュース買ってきといてくれ」
ヒサシ  「あいよ」
セイ   「んじゃ行こうぜ、縄田」
縄田   「ハイっス」
まず手始めに屋上を一回りして加速する。
そしてそのまま・・・。
セイ   「おりゃあ〜、階段滑り!!」
これはカナリの高等テクニックだ。
マネしちゃアブナイぜ。
セイ   「いくぜ〜!ついてこいナワ!」
縄田   「ちょ、早いッスよ!少しゆっくり」
セイ   「ハハッ、なさけねー事言ってっと置いてくぞ」
階段を下りてそのまま廊下を疾走する。
このスピード感がたまんねー!
廊下で各々昼休憩を過ごしてる生徒達を次々かわすこのスリルが最高だぜ!
セイ   「オラオラどけどけ!ぶつかるなよ、ナワ」
縄田   「了解ッス!」
まるで風になったように廊下を駆け抜けるこの爽快感!
何もかも忘れられる瞬間だ。
俺達は次々に階段を下り、廊下を駆け抜け一階まで降りてきた。
ここは職員室とかあるから気がぬけねーぜ。
縄田のヤツもどうにかついてきてる。
大したモンだ。
セイ   「ゲッ!」
前方に担任発見!
東郷   「むっ!コラァ!!!!
      またお前らか!廊下を走るなー!」
そのまま突っ込むぜ!
ここが腕の見せ所だ!
フェイントを織り交ぜながら東郷の右脇をすり抜ける!
どーだ!見たか!大成功だ!
セイ   「走ってませーん!滑ってまーす!」
東郷   「屁理屈言うな!バカモン!!」
ヘヘッ、東郷のヤツ、悔しそうに歯ぎしりしてるぜ。
縄田   「おりゃあ〜!」
東郷   「!!、俺に二度も同じ手が通用するかっ!!!」
おなじく右から通過しようとした縄田の首根っこを東郷がガシッと掴む!
縄田   「ああっ!?」
東郷   「ふっふっふ、甘いな」
縄田   「ひえ〜っ」
つかまったか、ドジなヤツだ。
まだまだ精進がたらんな・・・。
縄田はこれから昼休憩が終わるまでお説教だ。
修行がたらんヤツは罰ゲームだ。
縄田   「センパ〜イ、助けてくださいよぉ〜」
セイ   「達者でな」
縄田   「そんなぁ〜」
東郷   「未熟者め。覚悟はいいな?」
縄田   「ひえぇ〜っ」
縄田の尊い犠牲のもと、俺は下駄箱を通り過ぎ外へ飛び出す!
この瞬間がまたサイコーなんだ!
そのままグランドへ続く階段にある中心の手すりに飛び乗る。
あとはそのまま一気に直滑降だ!
最後は思い切りジャンプ、一回転して着地!
フフフ、決まったな・・・。
ギャラリーの注目を一身に集めたが、せっかく外に来たんだ。
ギャラリー達の熱い視線を背に俺は再び滑走する。
サイコー。

それからさんざん滑りまくって大満足した俺は教室へ戻った。
ストレスなんか一発でブッ飛ぶぜ。
どんなイヤなコトがあってもスッキリだ。
そろそろ五時間目が始まる頃だな。
もうじきチャイムも鳴るだろう。
さすがに縄田も解放されてる頃だろう。
お次は社会だったな。
ヒサシ  「お疲れ。ホラ、頼まれてたジュースだ」
セイ   「おっ、サンキュー。喉カラカラだ」
花穂   「気持ちよかった〜?」
セイ   「もうサイッコーだね」
花穂   「よかったね〜。でもアタシたちもキモチよかったよ〜。ね〜ヒサシ」
ヒサシ  「そうだな」
そうか、みんなキモチよくてなによりだ。
・・・・・。
なにっ!?
アタシたちもキモチヨカッタだと!?
セイ   「テメーら昼真っから何してたんだ!?」
花穂   「なにって・・・」
なんてこった・・・。
この俺様が爽やかにスポーツで汗を流してた時に、
コイツらは不潔にも快楽に身を任せて汗を流してたっていうのか!
不純だ!あまりにも不純だ!!
セイ   「伊吹!オマエがついていながらなんてことを!何してたんだオマエは!?」
伊吹   「なんだなんだ!?」
花穂   「伊吹は見ててくれたんだよね〜」
セイ   「みっ・・・見てただとっ!!!!?」
伊吹   「う、うむ・・・」
セイ   「オマエら・・・そーゆー関係だったのか・・・・・。
      なんてヤツラだ・・・・・人前で・・・。
      しかも伊吹は見てただと!?よく平気な顔してられるな!」
伊吹   「ま、まずかったのか?」
セイ   「当たり前だ!!
      まったく・・・どうかしてるぜテメーら」
伊吹   「??」
花穂   「普通だと思うケドな〜」
普通?
なんてことだ・・・。
世間はここまで荒廃していたとは・・・・・。
もういい、さっさと五時間目が始まってくれ・・・・・。

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