マッチ

 

 今日はカノジョとのデートの日。待ち合わせ場所で待っているのだが、待ち合わせ時間

はもう20分も過ぎ去っている。

「おそい。さむい。おそい。まあアイツは待ち合わせには一時間遅れたり、一時間速かったりするやつだからな。ふう」

 変わった女だと思いながら、懐を探るとマッチがでてきた。

「マッチ売りの少女……なんて話があったな」と思いながらなんとなくマッチを擦ってみた。

ぼうと火がついてあたたかいな、と思うまもなく老女が現れた。

「なんだなんだなんだ?」

「おまえさんなにか望みはないかい? なにかひとつだけお前さんの望みを叶えてやろう」

 どこかで読んだ物語のような話だ。俺はこういう時ひとつ考えていた願いがあった。

「今の彼女との待ち合わせ時間がいつもぴったり合うようにしてくれません?」

「あいわかった」

老女はそう答えると、俺は四つヶ谷の駅にいた。

「なんだなんだなんだ?」

四つヶ谷の駅はそれなりの、いつもどおりの人波だった。わけがわからなかったが俺はこのままでは彼女を困らせると思い、時刻表をチェックした。

ここから待ち合わせ場所までは一時間はかかる。その時俺は全てを理解した。

 

「今日は一時間二十分遅れるってことか……」

 



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