「ふっふっふ愚民共め。もし直木賞に応募すれば入選間違いなしの腕前を持つこの私が、貴様ら愚なる執筆者に、これが小説だというものをしめしてやろう」
彼の名は魔王。
3日前に、突然頭にうかんで書き上げた短編を、充分寝かせた後、投稿ボタンを押した。
ピッ
「あん? 拒否だと? 愚民共がぁ。俺様の神のごとき作品を受け入れぬとは、なんたる傲慢な」
注 短編の間(短編、中編)
:400字原稿用紙換算、10〜100枚の作品。
よくよくチェックすると、原稿枚数が足りないらしかった。
「短編に足りぬのか……短編に足りぬ短編は、一体何処に?」
ページをスクロールする。
「掌編の間? なるほど、長編どころか短編すら書けない低レベルは、低レベル同士で争えということだな。愚民共がぁー。私の作品の段違いのレベルにおそれおののくがよい」
震える手で投稿ボタンを押す。
「これで良しと作品を読むのに10分もかかるまい。お茶でも沸かして、ゆっくりと待たしてもらおう。
ふっふっふっふ
喜びと畏怖に打ち震える愚民共の姿が目にうかぶわ」
30分後
「さていったいどれほどの点数と、感想が……」
胸の高まりを抑えながら、ページを開く。
閲覧11 読了2
「少ないな…」
感想 0
「なにー。感想0だと。愚民共がぁー。ページを開いたら読まんか、読んだら読了ボタンを。読了したら、感想を書くのが礼儀であろう。愚民共がぁー」
内心ちょっとショックを受ける。
「お前らなどもう知らん。私は眠らせてもらう」
布団を被って寝る。
次の日
「昨日はなにかしたような。日本のわびさびサイトをチェックして……
いや、それよりももっと楽しいことに興じていた私がいたような気が……」 パソコンの前の小説の書き方本を見つける。
「おお、そうだ。愚民共に私の作品を見せ付けてやったのだ。さて、あれから、反応は……」
閲覧 31 読了5
「あんまり増えてないな」
感想 1
「お、お、お、来たー!!マイゴッド。感謝します。ふっふっふ、どうであった?
私の作品は。批判箇所など微塵もないであろう」
批判箇所を挙げさせてもらうと、基本的な作法と言いますか、文章の書き方や視点などがおざなりにされています。
あとタイトルの意味がわかりません。
読後感は良かったです。
評価 20点
「な?愚民共がぁー私の何処に欠点があるというのだ。タイトルの意味がわからんだと?漢字も読めんのか。
それならば、愚民にもわかるように、よし、わかりやすく「雨」としてやる。ふん、読了感は良かった?何様のつもりだ。コイツは……うん?こいつも投稿しておるな。よし、私が直々にチェックしてやろう」
注 投稿したら、他人の作品にも感想をつけましょう。
「うん? なになに? 3つの願い? ありきたりなタイトルだ。」
5分後
大変面白く読めました。
オチは最高でした。
これからも頑張って下さい。
20点ありがとうございました。
評価40点
「はっ、私はなにをやっているんだ。他人の作品を褒めている場合ではなかろう。私の作品はと」
感想 2
「おお、来たー。ふたりめの私のファンだ。なになに?」
意味がわかんない。
あんまり面白くなかった。
評価―10
顔がサーッと青くなる魔王。
「なんだと。この他人を侮蔑した文章は。しかもせっかくいただいた20点が減ってしまった。みておれ……
地にうごめくサタンの鼓動よ。我の命に応え、パソコンの前のこの愚民に邪悪なる黒いいかづちを!」
部屋中に響く黒い声…
しかしなにも起こらなかった。
「そうか、血の盟約は先月解約したばかりだった……ならばっ」
ふざけるな。
もっと教養のある文章を書かんかっ。
おまえのような愚図の感想など必要ないっ。
引っ込んでろ。
呆けっ。
「お返事完了と、ふう、これで気が紛れたな」
閲覧67 読了8 感想 3
「お、また新たな感想が。なになに……」
マナーを守りましょう。
評価−40
「なんということだ。作品ではなく人間性として私に問題が。いや、確かに魔族の文筆家としてとるべき行動ではなかった。しかたがない、さっきの私の文章は削除してお詫びを。」
申し訳ありません。
せっかく読んでいただき貴重な感想をいただいたのに。
軽率で愚かな態度をとってしまいごめんなさい。m(_
_)m
「っと。ふう、これで許して……もらえるかなあ? ちょっと作品も言われたように修正してみるか」
次の日
「昨日の続きはと……特に反応がないみたいだな」
ちょっとへこむ魔王。
また次の日
魔王の作品は、どんどん下の方へと下がっていった。
「今日も感想は なし か…」
一ヶ月後
「あれだけ意気込んだ小説書きも、あれっきりか。もう消えてなくなってるかもしれんな。ふん」
NEXT
PAGEをクリックしていく。
閲覧101 読了 13 感想5
「お、」
クリックする魔王。
文章力はまだまだと思いますが、マオウさんの優しい人柄が感じられました。
これからも心暖まる小説を書き続けてください
評価30点
面白かった
頑張って
評価10点
「愚民共がぁー。こんな言葉で、この私の熱いマグマの流れる黒鉄の心臓が揺れ動くとでも思うのか。愚民共がぁー、愚民共がぁー」
込みあがる初めての感情にほろりと一粒涙をこぼす魔王。
パソコンの文字を見つめる。
「もう一筆……挑戦してやるかな」
マオウ 初投稿作品 雨 総得点 10点