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広島県手話通訳士協会
 この研修報告は、2008年4月広島県手話通訳派遣委員会『派遣委ニュースNO30』「に掲載されたものです。
              手話通訳士現任研修参加報告(その1)
                             08/1/23〜27(全国手話研修センター)


 
いやー寒かった! いやー楽しかった! 全国の仲間たちと泡盛を片手に酒話り(?)、元気をもらい、学んだ学んだ5日間でした。まずは、研修の機会を与えていただいた派遣委員会へお礼申し上げます。ありがとうございました。
 さて、今回の研修は「私たちの暮らしにおける司法制度について学び、聴覚障害者が関わる司法場面の手話通訳について、その留意点を学ぶとともに実技練習をする」をねらいに開催されました。
「これまでビックアイが会場だったが、今年度から研修センターになり、多くの方の申し込みがあり嬉しく思う。すばらしい講師陣からしっかり学んで、日本の司法・手話通訳士の発展のために頑張ってほしい。」と高田センター長の挨拶から始まりました。今年度の士現任研修(年3回の合計)の申し込み者は、25都道府県14政令・中核市から93名で、2回目の今回は26都道府県から38名が集まりました。


 1日目、まず「司法制度の現状と課題」というテーマで二つの講義がありました。
 『司法改革と刑事裁判』…甲南大学法科大学院 教授 渡辺 修氏
 21世紀の日本と司法改革」・「裁判員裁判の意義」・「司法改革のとりこぼし」・「21世紀型犯罪」・「21世紀の司法と『可視化』原理」について、具体例を入れながらの講義でした。特に印象に残ったのは、来年からスタートする裁判員制度の問題点として@裁判官に支配されないか。A証拠より直感に頼らないか。B刑事政策より処罰感情・同情が支配しないか。C「感情司法」にならないかを挙げられましたが、裁判官と裁判員の座席配置の工夫(「評議」という映画での座り方は、裁判官が一方に固まって、もう一方に市民が固まっているという座り方は、見えない圧力の壁ができている)や市民意識の向上、法律家の柔軟な姿勢などが進んでいけば、信頼できる裁判員制度になるだろうということです。また、遠からず被害者も刑事裁判に積極的に参加し、被告人に質問などする権限が認められる。司法改革を支える原理は、市民社会に対する刑事裁判の「可視化」だと結ばれました。

 『民事調停制度と相談事例』…北尻総合法律事務所 弁護士 工藤 展久氏
 「民事調停」とは、民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に則した解決を図ることを目的とする手続きで、一般調停の他に宅地建物・農事・商事・鉱害・交通・公害等・特定債務の調整に関する特定調停があります。
 「家事調停」とは、離婚、夫婦関係の円満調整、遺産に関する争いなど親族間の紛争について行われる調停です。他人同士の争いより、家族間同士の争いの方が難しいケースが多いようです。

 1日目の最後は特別講義「障害者の権利条約をめぐって」というテーマで高田英一氏からお話がありました。内容は、昨年5月26日広島県の手話通訳の明日を考えるフォーラムで講演された「手話通訳者に望むこと〜安藤・高田論文から障害者の権利条約〜」と類似していましたが、再度、国連の意義や権利条約によりろう者の存在が認められたこと、条約の発効に向け、国内法整備に取り組まなければならないことなど心引き締まる思いがしました。

クイズ
Q1:国連はいつできましたか?    Q2:国連に何カ国加盟していますか?
Q3:国連の目的は何ですか?     Q4:世界の言語はいくつありますか?

Q5:世界言語(世界のどこでも、いつでも、誰でも使っている言語)は何ですか?

 2日目の最初の講義は、日本司法支援センター京都地方事務所副所長・弁護士松枝尚哉氏より「国民の司法参加:市民サービス〜法テラス〜」について説明がありました。
 みなさんは「日本司法支援センター(法テラス)」をご存知ですか? 2006年に全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会を目指して発足されました。「法で社会を明るく照らしたい。」「皆様がくつろげる陽当たりのよいテラスのような場所にしたい。」という思いを込めて「法テラス」と名付けたそうです。法律相談や裁判費用援助(代理援助・書類作成援助)などを業務としています。多重債務やトラブルで悩んでいる方にご紹介ください。 [広島事務所は広島市中区八丁堀2−31広島鴻池ビル1F]

 午後からは、みなさんよくご存知の田門浩弁護士の講義で「消費生活に関わる法律の基礎知識」と「聴覚障害者と詐欺被害事例」をミニテストや具体的な事例を織り交ぜながら、楽しく学べ4時間があっという間でした。
 「消費生活に関わる法律の基礎知識」では、契約の成立や留意点・契約によって生じる義務・契約は基本的に成立すると一方的に解消はできないが、民法による契約解消規定があるとか、詐欺などは「騙された」と言っても、相手が「言った覚えはない」と言えばなかなか立証が難しいが平成13年に新しくできた「消費者契約法」により契約の取り消しが容易にできるようになったそうです。何か困った契約をさせられた場合に取り消すことができるので、あきらめず消費生活センターへ行って相談することを勧められました。
 「聴覚障害者と詐欺被害事例」では、ご自身が弁護士になられて10年目になるがろう者からの法律相談は、年間60人程度で、この間に受けた内容の70〜80%は詐欺被害に関わるものだそうです。投資勧誘・預金勧誘・商品販売・マルチ商法・詐欺的な借金・架空請求などの被害は後を絶ちません。田門弁護士の講義内容は、詳細を別な機会に載せて、聴覚障害のある方々へも伝えていきたいと思います。
  次に、裁判担当の検察官が「検察官の取調べ状況について」説明されました。特に通訳人向け取調べ時の注意点として、
(1)検察官が追及する際の問答は、その文言自体や、先後自体に意味がある。
→ 発問の都度、かつ要約せずに、通訳する必要あり。検察官の問答を離れた通訳人・被疑者間とのやりとりを極力避ける。
(2)人の供述は、知覚・記憶・表現に誤りがある。要通訳の供述は、検察官・通訳人・被疑者間にも誤りがある可能性あり。外国人や未就学者は、特に学力、語彙力、表現力に乏しい可能性がある。
→ 取調べ時に、誤解の疑いがあれば逐一検察官に知らせ、被疑者らの理解度を確認。供述調書作成時に、あえて難解用語を平易なものに変える提案もある。

と述べられました。                  
                                             (次回へつづく…お楽しみに!)

                                    中本 智子
                                             

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