序
「腹減った・・・」 玄徳はおぼつかない足取りで歩きながら呟いた。 考えてみればもう幾日もまともに食べていない気がする。 ならばご飯を食べればいいと普通の人間は思うかもしれが、そう簡単に事は運ばないのが世の常である。 なにせ彼の自宅の台所に食べるものがあるわけでもない。 履はここ数日全くといって良いほど売れない上、すでに持ち合わせの金もそこをついていたのだ。 金の無い人間が食い逃げをするなどという話はよく聞くが、生まれつき潔癖な彼の誇りがそれを許さない。 「俺はこのまま死ぬのか・・・」 『飢え死になんて嫌だぞ・・・』と思うが、こうなってしまった以上それも仕方が無いのだろうか、など と考えている時・・・ ドン 『あれ?今何かにぶつかったか?』 はっきりとしない意識で衝撃のあった方向を見る。その瞬間玄徳は蒼ざめた。 「貴様!何処を見ている!」 これもまた良くある話、そこには柄の悪そうな武将が鬼のような形相で玄徳をにらみつけている。 自分を誰だと思っているだの、無礼者などと喚きたてているが、実を言えば玄徳はその言葉の半分も理解し てはいなかった。 というか、空腹すぎて頭に入ってこなかった。 そんな玄徳に態度に更に激情したのか、武将は持っていた剣を鞘から抜いて振り上げる。 『空腹で死ぬよりはこっちの方がまだましか・・・』 今まさに殺されようとしている人間が考える事とは大よそ思えないようなことを思いながら、玄徳は目を閉 じる。 肩の辺りに痛みが走ったが、もう間もなくそれも終わるだろう。 『なんで・・・こんな世の中になったのだろうな。もっと民が穏やかに暮らせるようになれば・・・』 地面に倒れ付しながら玄徳は思う。 耳には回りの野次馬達のざわめきが聞こえる。 誰一人玄徳を助けようとするものはいなかった。 『誰も手を差し伸べようとしないなんて・・・嫌な世の中だ・・・』 傷ついた者に手を差し伸べる事も出来ないほどにこの国は病んでいる。 ここで死ぬことには別になんとも思わないが、玄徳にはそれが酷く辛かった。 ふと肩に誰かの手が触れた気がした。 『誰だ・・・?』 必死でそちらを見ようとするが、すでに目は霞みぼんやりとした人影しか映らない。 姿ははっきりと映らないが、恐らく子供だろうか・・・ 「大丈夫だ・・・気にすることは無い。」 だから自分の家に帰れと・・・かすれた声で必死に答える。 だが子供はその場から決して動こうとはしなかった。 『まだ・・・こんな者もいるんだな・・・』 そんな事を考えながら、そのまま玄徳の意識は深い闇へと沈んでいった。 |
壱へ |
いきなり玄徳だけ。しかもなんか別人だし。
っていうか馬超も趙雲も出てすらいない・・・(汗)
とりあえずノーコメントで・・・(をいっ)