愛媛の名桜 @
                    大宝寺の「うば桜」
                                   〈種名・エドヒガン〉
                             小泉八雲の小説になった桜
松山市の環状線フライブルク通りを北進し、松山総合公園手前の信号を左折して、最初の角を右折すると大宝寺に着く。境内に足を踏み入れると、庭いっぱいに広がった老桜と正面から対峙することになる。
 花は白に近い淡紅色で、エドヒガンとしてはやや大形の花弁が平開し、清楚ななかにも華やかさがある。この桜の特徴は、枝の太い部分や幹などにも直接花を付けることにある。特に地際にポツンと咲く花を、土地の人々は「乳房咲き」と称している。幹は地際から車座に六本出て珍しい形をしているが、これは根元から芽吹いた芽が成長した後に主幹が枯れたものである。
 小泉八雲の小説「怪談」の「うばざくら」は、この桜にまつわる昔話を題材にしたものである。昔、この地方の長者の娘が病にかかったので、乳母が大宝寺の薬師様に身代わりをお願いすると、子供は助かったが乳母は亡くなった。乳母の遺言通り桜の木を植えると、幹に咲いた花は乳のように白く、形は乳母の乳房のようであったと伝えられている。
                                                                  (樹木医 森本政敏)
   
 【メ モ】
 1.場所 松山市南江戸町五丁目10−1 大宝寺
 2.昨年の満開時期 3月25日〜27日
 3.写真の撮影日 平成18年3月24日
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