2009年7月15日〜19日、全国手話研修センターにて開催された「手話通訳士現任研修」へ参加しました
通訳士現任研修に初めて参加させていただきました。 参加者は27名。 今回の研修テーマは「聴覚障害者と労働」です。 「現在の日本の労働・福祉施策について現状と課題を学び、支援について学習する。」というねらいで開催されました。 |
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「わかりやすい労働法講座」 講師は、京都法律事務所の福山和人弁護士。問題と解答のQ&A方式で講義が進められました。有給休暇や雇用保険、労災等、よく聞く身近な事例も全ては法律が基となっていることに改めて気づきました。法律を知らないということは、自らの不利益を招き、不当な待遇に甘んじてしまうことにつながります。労働基準法の学習の必要性を実感しました。 |
「働く聴覚障害者の心の問題」
お馴染みの琵琶湖病院精神科医師、藤田保氏の講義です。不況は雇用問題やストレスを生み、労働者に様々な心的影響を与えています。また、産業社会の変化により、成果主義や正規と非正規の混在等も労働環境を大きく変えているところです。職場のメンタルヘルス活動の歩みや厚労省によるメンタルヘルスケアの推進、職場復帰支援の手引き等について紹介されました。
「聴覚障害者の職場定着の取り組み」
3つの事業体から、それぞれの取り組みについて話されました。
@特別養護老人ホーム「あすくの里」の佐藤施設長は、管理職の立場で、労働環境の改善、聴覚障害職員の集団作り、人材育成の3点が必要であるというお話でした。
A多機能型事業所「いこいの村栗の木寮」の上貞部長は、聴覚障害職員の特性(専門性)を、「(ろう高齢入所者と)通じていることがわかる」ことだと位置づけ、健聴職員と対等に働くためには、お互いに言いたいことが言い合える関係づくりが必要だと話されました。
B株式会社デンソー高棚製作所からは、人事担当の中川さんの取り組みが紹介されました。デンソーでは、1978年から聴覚障害者の定期採用が開始され、障害者雇用率は1,91%(2009)。障害者539人のうち、半数近くを聴覚障害者が占めています。2004年の「聴覚障害者支援制度」を全社で導入するまでの経緯について説明されました。
3者に共通しているのは、聴覚障害職員の労働環境の改善には、情報保障とコミュニケーション保障が必要だということです。さらに、聴覚障害職員の要望しているコミュニケーション保障とは、会議の場だけでなく、会社生活全般にわたっていること。特に緊急時の情報保障は必須課題とされています。職場での最大の問題は、コミュニケーションとそれに起因する人間関係であるとも話されました。特にデンソーの中川さんの「法定雇用率の達成≠真のバリアフリー」という言葉が印象に残りました。
職場で設備の導入や改善を図り、聴覚障害職員に対する支援制度を設けることももちろん大事なことですが、コミュニケーションは人の心に関するもの。設備や制度だけで解決できないものです。社会全体に聴覚障害者に対する理解が広まって、初めて実を結ぶのではないかと思いました。
西村 英子