愛媛の名桜 I
            玉糸桜
                〈種名・シダレザクラ〉
              倒れても花を咲かせる桜
 県道23号伊予川内線を松山方面から東へ進み、東温市に入ってすぐの上村地区で、右折して坂道を登ってゆくと伝宗寺がある。桜樹は幹が地面に横たわった状態になりながらも、上を向いた枝は今でも花を咲かせている。
 玉糸桜は近くの頼朝寺(現在は無い)に親樹があった。その苗木を120年前に、現在の住職の祖父が伝宗寺に植えたと言われている。幹周1.66mの桜樹は、平成3年の台風で倒れ、その後15年間倒れたままの状態で花を咲かせ続けている。「玉糸桜」の呼び名は、柳のように垂れ下がった小枝に、5〜6個の花が玉のように群れて咲くことから付けられた。大正時代の句会でこのように呼ばれたのが始まりと言う。
 花は、淡紅色の小形の5弁が平開し、端正な形をしている。種間交雑を繰り返す以前のシダレザクラの面影を偲ばせる桜花である。倒れた親木の根元から三代目が育ちつつあるし、近くには接木した若木も移植されている。また、地域住民の有志が、玉糸桜の後継樹を育て、地域の名桜を次世代に引き継ごうと地道な活動を行っている。
                                  (樹木医 森本政敏)
【メモ】
 1.場所 東温市上村 伝宗寺
 2.昨年の満開時期 4月2日〜4日
 3.写真の撮影日 平成18年4月9日
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