愛媛の名桜 H
                   満願寺のしぐれ桜
                                 〈種名・エドヒガン〉
                            親と子で色が異なる桜
 今治市内から朝倉地区に入ってすぐ旧道を左折し、しばらく行くと左側山裾に金比羅山満願寺が見える。昔から桜の名所として知られ、今も境内には数種類の桜がある。
 山門を入って進むと、右側の石垣に樹高六bの桜の若木があり、純白の花を付けている。樹下に「志ぐ礼桜」(しぐれざくら)の石碑が立っている。そこから石段を登り客殿庭内に入ると、樹齢200年の老桜が、余命わずかながら、残った下枝に淡紅色の花を付けている。二本の桜の色は異なるが、石垣の桜は上の桜の根から芽吹いたものと思われる。
 しぐれ桜は一見してエドヒガンであるが、よく観察すると萼筒がエドヒガンほど膨らんでいない。また、メシベの花柱の下に毛が少ない。これはヤマザクラの形質が入っている証拠で、エドヒガンとヤマザクラの自然交雑によるものと推測される。これに最初に気付いた山本四郎元今治明徳短大教授は「マンガンジザクラ」の呼称を提唱している。この珍しい種を次世代に残したいものである。
                                                                     (樹木医 森本政敏)
   
【メモ】
 1.場所 今治市朝倉下甲145 満願寺
 2.平成ヘイセイ18年の満開時期 4月2日〜4日
 3.写真の撮影日 平成18年3月30日
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