愛媛の名桜 B
         石手寺の「見返りの桜」
                〈種名・シダレザクラ〉
             加藤明成がこよなく愛した桜
 四国霊場第五十一番札所石手寺の山門をくぐり、右に折れて境内の奥まで進む。一番奥の大講堂の中庭に「見返りの桜」がある。今は主幹が折れ、幹に空洞が出来て往時の壮大さは無くなっている。それでも残った数本の枝が地面近く垂れ、小振りな淡紅色の花を付けて当時の面影を留めている。その様は糸桜の名前の通り繊細で優美である。
 その昔、松山城主加藤嘉明の子明成がこの寺の花見に訪れた時、帰去にあたってさらに桜を振り返り、その美を嘆賞したことからこの名が付いたと言われている。さらに明成は桜花折取禁止の通知状を慶長11年(1606年)に発行した。その文書が今でも石手寺に残されている。現在の桜樹がその当時のものだと樹齢4百年以上となるが、二代目であるかどうかも含めて定かでない。
 見返りの桜はシダレザクラで、その枝の形から別名イトザクラ(糸桜)とも呼ばれる。エドヒガン系の桜で長寿の樹も多く、福島県三春の滝桜のように樹齢千年を超える樹も現存している。
                                   (樹木医 森本政敏)
   
 【メモ】
  1.場所 松山市石手2―9―21 石手寺
  2.平成ヘイセイ18ネンの満開時期 3月28日〜30日
  3.写真の撮影日 平成18ネン4月1日
一覧へ戻る   << 前へ   次へ >>   TOP