愛媛の名桜 D
           池田の「芋種桜」
                  〈種名・エドヒガン〉
               農作業の目安となる桜
 内子町から国道380号線を東へ進み、大瀬で右折して県道241号線に入り坂道を登ってゆく。坂を登りきると、池田地区のほぼ全容が見渡せる峠に着く。すり鉢状の地形の向側斜面中腹に、ひときわ大きな桜が目に付く。途中に池田地区の全世帯と桜の位置を示す看板があるので、それを参考にするとわかりよい。
 幹周3.8m、樹高17m、推定樹齢300年の巨桜が、周囲の孟宗竹を覆うように淡紅色の花を地上高く付けている。近づくと巨大な幹が見えるだけで、孟宗竹と雑木に遮られて花は僅かしか見えない。少し離れた所から雑木越しに見るとき、丈の高いこの桜が最も際立って見える。
 池田地区の人達は、この桜が咲いたら芋種を伏せると言う。そのため地元では「芋種桜」と呼ばれ親しまれている。サクラの語源は、サが穀霊を示し、クラが神聖な座を示すと言われている。穀物の霊が宿る樹がサクラであるとする信仰は古くからあり、この巨桜と対面していると、芋種桜の名称もそのような信仰と無縁ではないような気がする。
                                   (樹木医 森本政敏)
   
【メモ】
 1.場所 喜多郡内子町大瀬南(池田地区)
 2.平成ヘイセイ18年の満開時期 3月31日〜4月2日
 3.写真の撮影日 平成18年3月31日
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