「ふあ〜あ。あれ?みんなは?」

「もうとっくに出掛けたわよ。はいこれハワードの分。」

「なんだよ、またいつもと同じかよ。僕は肉が食いたいんだ肉が。」

「朝からお肉は体にわるいわよ。」

「昼も夜も肉なんかないじゃないか。」

「そうね。」

少し微笑んだシャアラがみえた。

(こんなに笑うやつだったっけ。

コロニーにいた頃は暗くておとなしくていつも端っこにいるやつだったのに。)

「なあに?」

「な、なんでもない。」

「じゃあ、わたしももう行くね。」

「書店のバイトか?」

「うん。」

シャアラが出掛けていくのを見送って、甘いミルクを飲み込んだ。

「さあて、今日はどうしようかな。」

 

「今日の仕事はコイツをある人物に渡してもらいたい。」

「・・・・・・」

「あそこからコイツと同じものをもったこの人物がでてきたら、持ち物をとりかえるんだ。」

そういって写真をわたす。

「時間は夕方のここが一番混み合うころだ。」

「・・・報酬は?」

「無事終わったらとりかえたものを持ってもう一度ここへ来い、その引き換えにわたす。」

みかけより軽いそれを受け取って脇においた。

「中身はみないほうがいい。それとその時間までソイツを守るのもお前さんの仕事だぜ。

顔の知れた俺じゃ無理なんでな。」

そういって自分たちとおなじに見える異星人はでていった。

(見た目違うところは目だけか・・・)

眼球が真っ白で瞳孔がないのだ。どこを見ているかわからない。

「まったく気味が悪いな・・・」

 

「おい新入り、手を貸せ。」

「はい。」

「せーの。」

「ふう、おまえピケット星人にしては力があるな。」

「いえ俺は・・・」

「なんだラグ星人だったのか?」

「いえ俺はそれらとは違う星の生まれで・・・」

「流れ者か?まあ役にたつならここではなんの文句もないがな。」

「次はこの支柱だ、いくぞ。」

「はい。」

 

「あのう・・・ここで雇ってもらえませんか?」

こじんまりとした作業場でシンゴはオズオズと尋ねた。

「ああん、今はそれどころじゃないわい。」

小柄な爺さんが迷惑そうに答えた。

(ここもだめかぁ)

もう何軒目だろうか。行く先々でシンゴは断られていた。

「爺さん話だけでも聞いてんか。」

 

「駄目じゃ駄目じゃ。

猫の手も借りたいほど忙しいが、どこの馬の骨ともわからんもんを雇う余裕はないわい。」

「ウチラ漂流者なんや。

地球ちゅう星のコロニーにいたんやけど事故でこの星に流れついたんや。」

「機械いじりなら得意だし、きっと役にたってみせるよ。」

爺さんは厳しい目でシンゴを品定めし言った。

「駄目じゃ。帰れ。」

「後生やで爺さん。」

「無駄だよチャコ、他をあたろう。」

「親父、困ってるみたいじゃないか。試しにしばらく使ってみたら?」

横から若い男が現れた。

「あなたは?」

「オレはこの頑固親父の息子のファーロ。

地球のコロニーにいたんだって?」

「知ってんのんか?」

「オレは行ったこともないけどそこから来たって奴に会ったことがあるんだ。」

「えっその人は?」

「流れ者だろ。この星ではめずらしくもない。

そいつもコロニーに帰りたがっていたぜ。

宇宙船を探しているようだった。」

「やったあ、この星にぼくらの他にも地球から来ている人がいるんだ。」

「どんなひとやったんや?」

「そうだなぁ。歳はオレより上くらいの男で・・・

顔は覚えていないけどあんまり感じのいい印象じゃなかったぜ。

 できれば係わり合いにならないほうがいいとおもうぜ。」

「え・・・そうなの?」

「なんやってええわ。もしかしたらウチら乗せて帰ってくれるかもしれへんでぇ。」

「そういう期待はしないほうがいいとおもうけど。・・・で働きたいの?ここで。」

「あ、はい。」

「ワシは金はださんぞ。」

「ま、というわけで給料はオレの財布からだすことになるからたいして払えないけどいいか?」

「お願いします。僕この星の進んだ技術を学びたいんです。」

「文明の優劣なんてその方向性が違えば価値も一概にはいえないもんさ。

オレは地球の文明に興味がある。なにかないか?」

「それならウチらが乗ってきたシャトルがあるで。見てくれへんか?」

「へえ、興味あるな。」

 

 

「・・・・・・」

メノリは気になっていた。

さっきから一人の男がずっと側に立ったままこっちを見ている。もう3時間にはなる。

(なんだ?お金を入れるでもなくじっとこっちを見ているな)

蔑まれているタイプの異星人らしい。なんとなく気味が悪い。

(場所を変えるか)

「%&’#BHG♪GJ

メノリがケースを畳もうとした時、男が話しかけてきた。

(なんだ?)

*+jgd3♭再見」

ここには翻訳機がないんだ。なんて言っているか分からない。

困惑していると小さな紙切れを渡された。

読めない文字が書いてある。

そして見たことのないお札を渡された。

戸惑っているメノリを尻目に異星人は深々とお辞儀して立ち去っていった。

「なんなんだ一体。」

紙切れをよく見るとどうやら名刺らしい。

なんとなくいかがわしい気もするがとりあえず持っておくことにした。

 

ファ「へぇ コイツか・・・」

シ「うん あちこち壊れてるけど なにか使えそうなものはある?」

ファ「ちょっと調べさせてもらうよ。」

チ「でなあ ウチラさっきもゆうたとおりサヴァイヴが足りなくて困ってんねん。

なんとか高く買い取ってもらえるところはないやろか?」

ファ「うーん。お コイツは珍しいな ここはもう駄目だな・・・ これはまだ使えるな・・・ 

お、こんなものまで・・・」

チ「なあ どうやろか?」

ファ「うん・・・知り合いにみせればある程度の値がつくものもあるかもね。」

チ「ほんまか?」

ファ「そのかわり姿勢制御ユニットと重力制御ユニットとあといくつかの機動系は俺がもらうよ。」

シ「うん いいよ。」

チ「ちょい待ちシンゴ。」

シ「イタタタタ なんだよチャコ そんなに耳を引っ張らないでよ。」

チ「そんなに簡単にOKしてええのんか?高い部品ばっかり持っていかれるかもしれへんでぇ。」

シ「いいじゃないか。

働かせてもらうんだし、他の部品を買い取ってくれるところも紹介してもらえるんだし。」

 

 

ファ「ははは・・・お金に困ってるんだろ?でも君達すごいものを持ってるぜ。」

シ「え ? そんなに珍しいものがあったの?」

ファ「ああ めずらしい。」

チ「なんや?ソレは。」

ファーロさんはチャコに視線を向ける。

ファ「君 ロボットだろ。」

チ「? ああ見ての通りや。」

ファ「この星にもロボットはたくさんいるけど、君みたいな人間みたいなロボットはほとんどいない。

 話を聞いてて思ったけど、君はまるで感情を持ってるみたいだ。」

チ「当たり前やがな。ウチかて感情ぐらいもっとる。」

ファ「この街ではそこまでの人工知能はめずらしいんだ。」

シ「へえー。」

チ「ウ ウチがそないに価値があるんか・・・」

チャコは自分のピンクのボディを覗き込んだ。

 

「アイツだな・・・」

駅から大柄の写真の男がでてきた。

渡されたバックと同じ物を持っている。

人混みの中に立っているソイツに近づき、横にバックを置く。

しばらくすると、オレのバックをソイツが持っていき、ソイツのバックが残された。

バックをつかみ何食わぬ顔で立ち去る。

(チョロイもんだ)

取引場所を離れようとした時、自分と同時に動き出す存在に気付いた。

(見られていたのか?)

カオルが歩き出すと同じ方向についてくる。

(警察か?ひとりじゃないな・・・指示を出す奴、サポートする奴もいるはずだ。)

道を曲がり路地に入るとカオルはすごいスピードで走り出した。



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