「う〜ん。かなり粘ったんだけど、やっぱり契約するには頭金の8500サヴァイヴが必要ね・・・」

「あ、ルナ。」

「シャアラ、仕事は終わったの?」

「うん、大変だけどこの星の本にも素敵なのがあってとても楽しいの。

私に向いてるかもしれないわ。」

「そう、よかったわね。」

(私もはやく住む所を決めて自分の仕事を見つけないといけないわね・・・)

「住む所は見つかった?」

「それがまだ・・・お金が足りなくて」

「ふーん。私はやくみんなで住む所を決めて安心して眠りたいわ。」

「そうね。」

(やっぱり危ない所は駄目かもしれないわね、でも・・・)

もう日も暮れてきて道は帰宅する宇宙人で一杯だ。

夕暮れ時のせわしさはコロニーもここも変わらない。

「今日のご飯はなににしようかしら。たまにはコロニーと同じ食事が食べたいなぁ。」

「文化が違うからそれも難しいわね。あら?」

道の向こうにカオルの姿が見えた。人混みをぬって走っている。ただごとではない様子だ。

「なにかしら・・・」

カオルの去った後をボールみたいなこじんまりとした機械がおいかけている。

追跡しているようだ。

「シャアラ、これをお願い。」

ルナはサヴァイヴの入ったリュックを渡すと

カオルの向かった方向とは少し違う方向に走り始めた。

(私じゃカオルには追いつけない。

でもこっちの路地に逃げてくれれば力になれるかも・・・無駄になるかもしれないけど・・・)

仲間の身を案じて走る。

(カオル・・・一体なにをしたの?)

 

「ハアハア。」

(クソッ、異星人でも足なら負けないつもりだが、ロボットじゃあスタミナじゃ勝てない。

・・・なんとか破壊するしかないか・・・)

手ごろな棒きれを拾い物陰に隠れヤツがくるのを待ち構える。棒術には自信がある。

「カオル!こっちよ。」

上からルナの声がする。見上げると建物の窓にルナが見えた。

壁に棒を立てかけ、足場にして窓から飛び込む。

「カオル・・・一体どうしたの?」

 

 

「ッハアはあハア・・・」

「追われているのが見えたわ。なにに追われているの?」

「・・・・・・・・・おまえには関係ない。余計なことを・・・

呼びかけなければアイツを破壊して・・・終わっていたんだ・・・」

「・・・あの機械ね・・・

でも3台は追いかけているのが見えたわ・・・エアカーも追いかけていたし・・・」

「!・・・・・・クソッ」

「ねえ一体なにに追われているの?」

「ここはなんなんだ?」

「ここは・・・私みんなで住む家を探しているでしょ。

空き家になっているところをいくつか知っているの・・・」

「ああ・・・」

「ねえ、アイツラはなに?」

「さあな、ここの警察か、もっとやばいヤツラかもな・・・」

「なっ・・・」

ルナは息を飲んだ。

カオルがどうやって稼いでいるかは知らなかったけど、こういう危ない橋を渡っていたのだ。

「お願いカオル、こんなことをしてまでお金を稼ぐのはやめて。」

「・・・・・・」

「捕まったらコロニーに帰るどころじゃなくなるわ。シャアラも心配していたわ。」

「・・・いくら貯まった?」

「え?あ、お金ね6000ちょっとよ。」

「住む所も決まっていない。家を借りたら借りたで金がかかる。

食費に光熱費、その他にも生きていくには金が必要だ。

まともにやっていたらとても宇宙船など買えはしない。」

ルナの唇が歪む。

「俺は今ひとりで一万貯めた。それでも宇宙船にはとても届かない。

こういう橋を渡りながらもっとでかい仕事を見つけていくしかないんだよ。」

「バカッ!!」

ルナは平手でカオルの頬をぶった。

「こんな仕事をして誰かが幸せになれるの?もし捕まったら仲間の皆にも迷惑が掛かるのよ。

なによりカオルが一番傷つくじゃない。」

「俺はずっとひとりでやってきた これからもだ。」

「みんなこの星に 一生懸命溶け込もうとしているのに・・・」

「・・・・・・」

カオルは一人で歩きだした。

「どこへいくの?」

 

「・・・・・・」

「みんな待っているからね・・・」

ルナは泣いていた。

カオルの言ったとおりお金が足りない。

カオルがひとりで危ない仕事をしているのも悲しかった。

でも仲間というよりも家族として生活しているつもりだったルナにはカオルの感じていたものがあまりにも自分と違い、悲しかったのだ。

 





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