チ「実はなあ・・・」

ル「なあにチャコ。」

チ「肝心要のワープ装置は、あのふたりの手で調整中なんや。」

ル「へえ。」

チ「この星の最新技術のものならもっと簡単に、安全に使えるはずなんや。」

ル「・・・・・・高いのね・・・」

チ「ああ、目ん玉が飛び出るほどや。でもなあ。」

ル「なあに?」

穏やかに尋ねるルナ。

チ「方法があんねん。」

ル「?」

チ「ウチの感情チップと、記憶メモリーはこの星では珍しいねん。

  ある会社がその目ん玉が飛び出るほどの値段で買うてくれるゆうて話がきてんねん。」

ル「チャコ・・・」

チ「まあ、聞いてんか。

感情チップはコロニーに戻れば同じのが仰山あるし、

記憶チップもコピーして持って帰って、

おんなじボディに使えば新生チャコの誕生言うわけや。」

ル「・・・」

チ「見た目も中身も今のウチと何にも変わりあらへん。

航海中のサポートもこの星のコンピューターを買うてまかせれば問題ナシちゅうわけや。」

ル「・・・・・・」

チ「どや。この提案、名案やろ。」

ニカッと笑う猫型ロボット。

 

チャコを見つめたままボロボロと涙をこぼすルナ。

チ「なんも悲しむことあらへんがな。」

ル「今のチャコはどうなるの?」

チ「コピーのメモリーに残って眠るだけや。

  いたいこともあらへん。」

ル「私は・・・」

チャコの大きな目を見つめる。

ル「私は今ここにいるチャコがいいんだもん。

いっぱい迷惑かけて、わがまま言って、喧嘩して、

ずっと私とお父さんと、みんなと一緒だったチャコがいいんだもん。

またひとりぼっちになるのはイヤだよ。」

昔のように泣くルナ。

そういえばこの星に来てからルナがウチらの前で泣いたのは見たことあらへんかったな。

ルナのふるえる体を見つめるチャコ。

チ「・・・・・・・・・わかったでルナ。泣き止んでや。

  あのふたりのエンジニアを本当に信用せえへんかったウチが悪かったわ。」

ル「どこにもいかない?」

チ「ああ、約束や。」

ル「うん。」

指きりげんまんをするふたり。

 

チ「さむうなってきたし、ルナは部屋にはいりい。」

ル「チャコは・・・」

チ「もう少し、この街の夜空を記憶したいねん。

ル「うん。」

涙の痕を拭いて走っていくルナ。

 

ぶ〜ん

チ「お?おまえも夕涼みか?」

チャコのひざにとまる。

三「ゴロゴロ・・・」

無愛想な三毛猫がチャコにすり寄ってきた。

チ「お、アンタぁ。珍しいなあ。」

チャコの膝元で丸くなる三毛さん。

星空を見上げるチャコ。

チ「ウチは大丈夫やで・・・

  もう変な提案もせえへん。

  こないに幸せでええんやろか、いうくらい心が穏やかなんや。」

穏やかに夜の空気を楽しむ温泉宿の三匹。




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