メ「ええっ本名で?」

団「メノリさんの名前は知れ渡ってますから、きっとその方が観客の受けもいいはずです。」

メ「しかし・・・」

団「それに、これで最後ですし・・・やっぱりなにか問題ありますか?」

ハ「いいじゃないか。僕の名前も知ってもらえるってわけだ。」

メ「どういうことかわかってるのか?」

ハ「ああ、後世に残る。」

それよりも、もっと重大な問題があるはずなのだが・・・

ハワードと団長の間でもう話は進んでいた。

私は嫌だっ、と叫びたかったけど、楽しそうなふたりにそのセリフは言えなかった。

 

「ハワード財団と、ヴィスコンティ家。

お互いが属する組織は折り合いが悪く、血で血を洗う争いも、幾度となく繰り返されていました。」

 

「ハワード。」

「なあにパパ。」

「最近若い連中がヴィスコンティ家に興味を持っているようだが・・・」

気にせず食事を続けるハワード。

「昔から、ヴィスコンティ家とは、語りつくせぬほどの、宿怨で結ばれておるのだ。

命を狙われることも珍しくない。

お前はちゃんとわきまえておるな。」

「あなた。ハワードはしっかりしてますもの、そんな無茶はいたしませんわ。」

「うむ。」

「大丈夫だよ、パパ。

そんな、奴等とは口もきかないよ。」

「うむ。それでこそハワード財閥の嫡子である。」

 

「ハワード。」

「なんだよベル。」

「フィオが、今夜のヴィスコンティ家のパーティに行かないか?って。」

「ああ?ソイツは駄目だ。パパにもキツク止められてるからな。」

フィ「お前は相変わらずファザコンだなあ。」

ハ「僕はそんなんじゃない。パパを尊敬しているだけだ。」

胸をはるハワード。

フィ「まあいいさ。でも敵情視察ってのもしといたほうが、今後の為にもいいんじゃないか?」

ハ「偵察か・・・」

ベ「変わった料理もでるし、いい音楽が聴けるそうだよ。」

ハ「ホントか?」

 

ハ「へえ〜でかい屋敷だな。」

フィ「ハワードは来たことなかったのか?」

ハ「初めてだ。」

フィ「じゃあ色々ビックリすると思うぜ。」

ハ「ふ〜ん。」

 

舞台は華やかなパーティ会場へと移る。

穏やかな音楽が演奏されている。

ハ「へえ〜豪勢じゃないか。」

ベ「きっとあくどく儲けてるんだよ。」

フィ「そうだな。」

ハ「ふ〜ん。お、これか、変わった料理っていうのは。」

フィ「結構うまいんだぜ。」

ハ「どれ。」

口に運ぶ。

ハ「うん、コイツはいけるぞ。」

夢中でかぶりつく。

音楽が変わる。

フィ「見ろ。ハワード。

  あれが、ヴィスコンティ家のお嬢様だ。」

食べ物をほうばりながら、フィオの視線の先を見る。

落ち着いたドレスに身を包んだメノリが、音楽と共に登場した。

ゴクン

電撃に撃たれたようになるハワード。

口元を拭いて、メノリの前へと歩み出る。

ベ「ハワード。」

フィ「おい。」

メノリもハワードに気付いた。

凍りついたように見つめあう二人。

音楽も止まって、舞台もふたりにライトがあたる。

ハ「踊っていただけますか?」

メ「はい。」

メノリの手をとり、エスコートする。

ベ「まずい。」

フィ「どうしたんだ?ハワードのやつ。」

ベ「スイッチがはいっちゃったみたいだ。」

フィ「え?」

音楽が流れ出し、舞台中央で踊るふたり。

 

カ「は、ハワード財団のやつらだ。」

どもりながら剣を抜くカオル。

シオ「今はよせ。お嬢様もいるんだ。」

テーブルの布の端を踏んで派手に転倒するカオル。

シオ「大丈夫か?落ち着け。」

劇を続けながらフォローするシオン。



ル「もう。」

額を片手で抑えて、あきれながら心配する。

シャ「ホントに慣れてないのね。」

 

音楽にのって見詰め合ったままいつまでも踊るふたりはやがてバルコニーへと出て行き、

密やかにそっと口づけを交わす。

もちろんお芝居のだが・・・。




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