パーティも終わり、その帰り道。
フィ「ハワードのやつが、あんなになっちゃうとは思わなかったよ。」
ベ「時々かっこつけちゃう癖があるんだよ。」
フィ「まあ、何事もなくて良かった。
ちょっとひやひやしたぜ。」
ベ「そうだね。あれ?」
フィ「なんだ?」
ベ「ハワードは・・・」
ハワードはこっそりと仲間の元を抜け出し、先ほど出会った女性の寝室の窓の下へきていた。
バルコニーにメノリが現れる。
メ「ハワード。」
ハ「メノリ。」
メ「おお、ハワード。あなたはなぜハワードなのか。」
ハ「メノリぃ〜〜。」
メ「・・・あなたはどうしてハワードなのか。
もしそうでなければ、こんな思いはせずに済んだものを。」
ハ「メノリ・・・家の争いは、僕達にはなんの関係もない。」
メ「関係ある。私はお父様には逆らえないし、お母様を悲しませるつもりもない。」
ハ「たとえどんな障壁があろうとも、僕はあなたと共にありたい。永遠に・・・」
メ(ハワードのヤツ、役に陶酔しきってるな・・・
舞台慣れした私がリードされるとは。
水泳といい、意外な才能を無駄に持ってるな・・・)
「私もだ、いつまでも、いつまでも、この宇宙の終わりまであなたと共にありたい。」
シャ「なんだかこっちが照れちゃうわね。」
ル「なんだかね・・・」
舞台袖で赤くなるふたり。
愛の言葉は空が白むまで続けられた。
興奮気味にふらついた足取りで家路をたどるハワード。
ル「出番ね。」
シャ「頑張ってねルナ。」
ハワードは大司教様の元を尋ねた。
ハ「僕はヴィスコンティ家のメノリに心を奪われてしまった。」
ル「両者にとって良くないことである。
諦めるのが良かろう。」
ハ「しかし、僕の胸の炎は消えないだろう。」
ル「どんな炎も、時が経てば、おぼろげになりいつかは消えてしまうものだ。」
ハ「たとえ、雨が降ろうが竜巻が巻き起ころうが、パグゥの群れに踏み潰されても、
この炎は消えはしない。」
ル「空気もない、宇宙空間でも、燃え続けるとでも言うのか。」
ハ「この身を燃やしてでも、思い続けるだろう。」
熱意に胸をうたれた司教様は、なんとかしてみようとだけつぶやいた。
その頃メノリも、シスターの元を訪れていた。
メ「あってはならないことだが、私の心は、敵方の男に囚われてしまった。」
シャ「しかるべき人に助けを求めなさい。
手を差し伸べてくれる人がいるでしょう。」
メ「しかし、その牢獄に鍵はない。
窓も開いているし、扉も開いたままだ。」
シャ「なら自分でたやすくでられるでしょう。」
メ「私が今まで持っていなかったが捜し求めていた大切なものが、そこには全て揃っている。
固い鎖につながれているが、それは目に見えぬ縛ることのない自由な鎖だ。
それにその無限に広い檻の中からみると、私が今まで天国だと信じて疑わなかった場所は、
小さなヴァイオリンケースの中のようだ。」
シスターはなんとかしてみましょうとだけつぶやいた。
大司教とシスターの取り計らいで、密かにふたりを引き合わせ、結婚式が行われた。
大司教と、愛するふたり、そして誰にも見えない第三者の存在のみで、式はおこなわれた。
ル「あなたは、メノリを妻とし、病めるときも、健やかなる時も彼女を愛し続け、その身を守り、
幸せにすることを誓いますか?」
ハ「はい。」
ル「メノリ。」
メ「はい。」
ル「あなたは、ハワードを夫とし、病めるときも、健やかなる時も彼を愛し続け、その身を支え、
共に幸せになることを誓いますか?」
メ「はい、誓います。」
ル「よろしい。
では神の名の元に、この指輪を。」
指輪を交換し、二度目の口付けを交わす。
ル「神よ。このふたりをお守りください。」