フェアリーレイクの宇宙飛行士訓練センターの帰り。
カオルは自分の左手を見つめていた。
「また、操縦桿を握る日がきたのか・・・」
左手の感触を確かめるように何度も握る。
「今度こそ・・・誰も死なせやしない。」
左手を強く握り締めて、操縦桿を握る、そう遠くない日をはっきりとイメージする。
今日はもう夕方、通りも賑やかで人で溢れている。
見慣れた町並みも、もうお別れと思うとなんだか名残惜しい。
「おじさん、もう少しまけてよ。」
「ええ〜弱ったなあ。」
「かわりにいいことを教えてあげるよ。
この店は品揃えもいいけど、もう少し旬のものとか、
見栄えの良くて安いものを一番前に並べると、お客が集まりやすいんじゃないかなあ。」
「へえ、そうかい。アンタ頭がいいんだねえ。」
「そんなことないよ。」
「じゃあ、30サヴァイヴのとこを23サヴァイヴだ。
買ってけ泥棒。」
「どうもありがとう。」
どこかで聞いたことのある声だ。
声の主を探す。
きれいな色の髪だけが見えた。
「じゃあ、ありがとう。」
「おう。」
声の主が歩き始めたようだ。
人混みの隙間から、一瞬だけ横顔が見える。
カオル「・・・・・・・・・ルイ。」