最初にこの星に来た時、みんなで寄り添って眠った広場。
そこがルイとの待ち合わせ場所だった。
あの頃は本当に宇宙船が手に入るものなのか、
ここで、生きていけるのか、それすらもわからない明日だった。
でも、今は・・・
あの男を連れて帰ろうとしている。
俺は自分が失った物・・・欲しかったもの・・・必要とは思っていなかったけど必要だったもの、
全てを手にいれようとしている。
誰のおかげかもわからないけど、頭に浮かぶのは、今まで一緒にこの町で生きてきたみんなの顔だった。
遠くから、昔失った友達が歩いてくる。
「・・・カオル。」
「ルイ。」
お互いがお互いを確認する。
「病院に行ってたって・・・」
「昨日から、なんだか頭が痛いんだ・・・
なにか・・・なにかを求めてるみたいなんだ。」
「・・・俺に会った時から?」
うなづくルイ。
昨日のカードを取り出す。
「ここに少しだけ写っている黒髪・・・」
カオルも自分の持っているカードを取り出す。
「僕が写ってる・・・」
幼い自分の顔を見つめる。
「お前は・・・」
「おじいさんから聞いたよ。
僕は君と友達だったみたいだね。」
戸惑いながらうなづくカオル。
「覚えてなくてゴメン。
でもカオルと友達だったなんて嬉しいよ。」
昔のルイと変わらないルイがそこにいた。
「昔の僕はどんなふうだった?」
「・・・今と変わらない。
話し方も、性格も、仕草も・・・」
「ふうん。」
「おじいさんはなんて言ってた?」
「お前の思うようにしろって。
自分の気持ちに正直じゃないと後悔するからって。
本当に優しいひとだよ。」
「・・・俺たちもう明日には、俺たちのコロニーに向かうんだ。」
「うん。」
「一生懸命お金を貯めて、みんなで励ましあって、生活して、
やっと宇宙船を手に入れて、帰るんだ。」
「うん。」
「でも、肝心のパイロットが半人前の俺だけなんだ。
知ってるだろ、宇宙飛行士の鉄則。」
「・・・パイロットは必ず2名。
なにかあった時の為に、操縦士と副操縦士・・・必ず厳守。」
「「宇宙を甘くみるな。」」
最後はふたりそろった声で言う。
「・・・・・・一緒に帰ろう。」
ルイの前に左手を差し出すカオル。
「でも僕は・・・」
「帰ろう。」
差し伸べる手のひらにためらうルイ。
迷ったままふたりの時間が流れる。
しかし・・・
その手は自分が昔、絶対つかんでいなければいけない、
離しちゃいけない手のひらだったような気がして、自分の手が、体が、心が勝手にその手を握り締める。
その手をとったルイの手を固く固く握り返して小さな声を絞り出すカオル。
「一緒に帰ろう。」