ポ「まだまだ教えたいことはたくさんあるが、もう時間じゃな。」

シ「うん。」

ファ「後は航海中も勉強して覚えていくんだな。」

チ「ウチとシンゴにまかしとき。」

胸をはるチャコ。

シ「ふたりともほんとにありがとう。それじゃ。」

ポ「ちょっと待て。」

シ「え?」

ポ「これを着ていくがええ。」

愛用のジャケットを脱いで渡す。

ポ「数々の航海も乗り越えた縁起もんじゃ。

  おまけのポケットには、秘密のアイテムまではいっておる。」

ファ「そんな古臭い汗臭いジャケット渡して、どーすんだよ。シンゴが困るだろ。なあ?」

ポ「なんじゃとー。」

何度も聞いたどなり声が響く。

シ「ううん。嬉しいよ。

  ありがとうポルトさん。」

涙がにじむ。

チ「ほんなら・・・」

ポ「うむ。」

シ「元気で長生きしてね。」

ポ「こりゃ。最後まで年寄り扱いしおって。」

少しだけ成長した笑顔を見せるシンゴ。

 

ハ「お別れだな。」

小さな青いブリキ虫を右手の手の甲にのせる。

羽をふるわせるブルキン。

ハ「え?ついてくるって?」

体をひとつゆする。

ハ「駄目だ。

  生まれた故郷で暮らすのが、誰でも一番幸せなことなんだ。

  僕も昔は気付かなかったけど・・・

  それに・・・」

疑問符を浮かべるブリキ虫。

ハ「あのキラキラのかわいこちゃんと一緒にいたいんだろ?」

シ「かわいこちゃんって、あのゴールデンブリキ虫のこと?」

シャ「アレ、女の子だったの?」

ハ「え?なに言ってんだ。当たり前だろ?」

赤いブリキ虫に変わるブルキン。

ハ「じゃあな。」

右手を少し上にあげると、ブルキンは少しためらうような仕草のあと、空へと飛び上がって

星ばあさんのスカートにとまった。

 

星「あ・・・う・・・」

ルナ「星おばあさん。本当に色々となにからなにまで、ありがとうございました。」

ハ「おーう。メシうまかったぜ。ばあさんも元気でな。」

ベ「おりがとうございました。」

シ「元気でね。」

星「う・・・」

ルナ「これ、メノリとシャアラの印税が振り込まれる通帳です。

    受取人を星おばあさんに手続きしておきました。

    お礼にもなりませんが、受け取って下さい。」

星ばあさんの手に両手で渡す。

星「わしゃあそんなもんいらん。」

ルナ「でも・・・」

メ「もう使い道もないんです。

  もらってください。」

シャ「せめてものお礼ですから。」

みんな笑顔でおばあさんを見ている。

星「ふん。

  しゃーなくもらってやるわい。」

ひったくる星ばあさん。

ルナ「じゃあ。」

星「あ・・・う・・・」

チ「なんや言いたいことがあるみたいやで。」

(もう一日だけおってくれんかのう。)

星ばあさんは喉からでかかっている言葉が言えなかった。

星「達者でのう。」

くしゃくしゃの笑顔で最後のお別れの言葉を言う。

笑顔の端に涙がひとつこぼれる。


ルイ「それじゃあカウントダウンを始めます。」

「おー。」

座席についてベルトを締めるルナ達。

カ「180秒前。」

シ「いよいよだね。」

シャ「ええ。」

シ「少しGがかかるから、そのつもりでね。」

ハ「あん?重力は制御されてるんじゃないのか?」

シ「いいやつはそうだけど・・・そんなお金なかったじゃないか。」

ハ「なんだと。」

青ざめるハワード。

シ「散々説明したじゃないか。」

ハ「ぼかあ、聞いてないぞ。」

シ「ハワード、まさか・・・出発前になにか食べてないよね?」

ハ「あ、ああ・・・軽く・・・」

「ええー。」

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