ル「これで全部かなあ?」
買い物かごの中を見てつぶやく。
メモ帳をもらったけど、ほとんどわからないから、覚えるしかないのよね。
シャアラはスゴイなあ。私も勉強しなくちゃ。
弱々しく笑う。
ル「ええと、照明灯の買え置きにトイレットペーパーの大量注文に、妖精の雫の支払いとお風呂のブラシに・・・」
?「mataattane:*」
ル「え?」
?「aisiteruyo*」
ル「あなた、さっきのコね?どうしたの?」
?「bokutoasonndeyo*」
ル「大人のひとがあなたを探していたわよ。」
?「nannteitteruno?」
ル「弱ったわね・・・翻訳機がないんだわ。アレもないとやっぱり不便だわね。」
?「tuiteittemoii?」
ル「・・・困ったわね・・・」
エリマキハシリネズミは少しも罠に近づかない。
気付いているのか、怪しんでいるのか、運がないのか。
それでもカオルはひたすら待つ・・・
そのうち無心になっているカオルの傍に寄ってきた。
カオルはさらに気配を消す為目を閉じる。
かさかさと音が近づいてくる。
そのうちカオルの膝になにかが乗ってきた。
「ちゅう。」
風景となっているカオルに気付かないのだ。
凄い能力だが、カオルの普段ものを考える時よりもうひとつ奥の誰にも気取られない秘密の部屋である考えが浮かぶ。
このまま捕まえてしまえばはやいんじゃないか?
相手は気付いていない。罠にかかるのを待っていたんじゃ、今日は逃がしてしまうかもしれない。
一瞬で捕まえてしまえば・・・嫌これは焦りか・・・?
葛藤する考えが頭の奥で数分繰り返される。
・・・
決心を固めたカオルは左手で膝の上の物をすばやくつかむ。
エリマキハシリネズミはイナズマのようなカオルの左手よりも速く飛び上がると、二本足で走り始めた。
まずい。トップスピードになられると、さすがに人間の足ではおいつけない。
普通の人間なら諦める所をカオルは瞬間的に体を移動させ、追いかけ始めた。
(どうして俺の左手はなにもつかめないんだ。)
懸命にダイブするカオル。
「ぴぎい。」
カオルの両手にかわいらしい顔をしたエリマキハシリネズミが収まった。
安堵の顔を浮かべるカオル。
「ふう。俺もまだまだだな。」