夜のとばりもすっかり降りて、辺りはいつもの静けさを取り戻していた。
ハ「あー、結局見つからずじまい、か・・・」
星「また、お目にかかる機会もあるわい。」
楽しそうに笑う星ばあさん。
ル「星おばあさん。ありがとう、ございます。騒ぎを収めるために・・・」
ハ「えええ?じゃあアレウソなのか?」
チ「ばあさんはな。あの騒ぎを鎮める為に、もうひとつ騒ぎを起こしたんや。」
「ホッホッホォッ」
ハ「チェッ、なあんだ・・・」
シ「残念だったね、ハワード。」
ア「ハワード?」
ひとすじの涙を流すハワード。
メ「なにも泣くことはないだろう。」
ハ「うるさい。僕はなぁ、ハワード財閥の御曹司なんだぞ。
コロニーに帰れば、お金なんて・・・いくらでも、どうにでもなるんだよ。」
チ「はあ?言うてることわからへん。」
ハ「僕だってなあ、仕事を探したさ。
初めはどこにいっても断られるから、選り好みしないでなんでもやろうとしたさ・・・
このハワード様が頭を下げてだぞ・・・でもなあそれでも雇ってくれるとこなんてなかった・・・
ようやく見つけた仕事もまともにできない、文句を言われる、怒鳴られて首になる・・・
結局長続きしないんだ。」
「ハワード。」
ハ「でもなあ、虫を捕まえれば僕にもお金を稼げる・・・
みんなに比べれば少ないかもしれないけど、黄金のブリキ虫を捕まえれば、いつかはコロニーに帰ることもできるんじゃないかって・・・」
シャ「それであんなに一生懸命・・・」
ハ「でもなあ、やっぱり僕には無理だったんだよ・・・お金を稼いでコロニーに帰る、なんて・・・」
カ「ハワード・・・」
みんなハワードの言葉に黙ってしまった。
ハワードもハワードなりに私と同じようにお金を稼ぐことに必死だったんだ・・・
みんなが頑張ってるのに自分だけが足手まといになってるって感じてたんだ・・・
私と同じように・・・
ア「ハワード・・・ゴメンなさい・・・僕のせいで・・・」
ハ「アダムは関係ないさ・・・僕が駄目駄目のとーんでもない駄目なやつ・・・ってだけさ。
アハハハハ・・・」
星「甘ったれるんしゃあ。」
ル「おばあさん。」
星「銭をかせぐっちゅのはなあ、毎日毎日自分のできることをして、
人様の役に立って、少しずつ仕事を覚えて、死にたくなるくらい嫌なこともあって、
それでも少しずついいことを見つけて、自分を励まし、だましだましやっていく。
それをずーーーっと続けるんしゃあ。諦める余裕なんかないわい。」
ハ「・・・」
星「若いうちはなあ、体も動く、未来もあってなんもせんでも希望もある。
辛いことがあっても仲間がおるじゃにゃあかあ。
歳とったらなあ、腰は曲がらん、目も見えん、字も読めんし、飯も食えん、
昨日のことも覚えとらんし、耳も聞こえん、周りの人間もみんなあの世へいって、
友達は腰痛と肩こりじゃあ。それでも経験と真心と人様の愛で自分で希望を見つけて毎日を生きとんしゃあ。」
みんな星ばあさんの言葉に笑っている。
星「こりゃ、笑い事じゃにゃあ。
それに、若いうちの苦労と出会いは大事な財産じゃあ。
お金なんかよりよっぽどお前さんを助けてくれるわい。」
チ「うんうん、ばあさんのいう通りや。さすがは年寄りやな。」
星「わかったらホレ、さっさと明日の準備して、風呂入って寝んかい。」
「はい!星おばあさん。」