「さあて、足場も出来たし、本腰をいれるかな。」

「あ、親方!」

「ん?」

親方が踏んだ足場は、さっきパイプの抜けた空間だった。

当然あるはずのパイプはそこにはない。

「うおっ。」

転落する親方さん。

ベルは角材の上に身を投げ出して、親方さんの半被の端をつかんだ。

 

 

親「馬鹿野郎共。お前らの手抜きで死ぬとこだったぞ。」

サ「スイヤセン親方。」

親「ベルの力がなけりゃ、おりゃあ今頃母ちゃんとこだ。」

サ「スイヤセン、でも、ないのはわかってたんだから俺のせいじゃなくて・・・」

親方の鉄拳が飛ぶ。

3メートルは吹っ飛ぶ。

親「気にいらねえな、その根性は。」

サ「お、親方ぁ、勘弁・・・」

歯も抜けた顔で謝る。

親「叩きなおしてやる。」

ベ「親方・・・」

ベルが止める。

親「おい、ベルをよおく拝んでおけよ。ベルがいなかったら、お前は今ごろ歯なしだ。」

「へい。」

サ「ありがとうなあ、ベル。」

「いえ、そんな。」

ベルに頭を下げる。

 

サ「おい、ベル。」

「あ、お疲れ様です。お先に失礼します。」

サ「ちょっと待てよ。朝のお礼がしたいんだ。」

「お礼なんてそんな・・・」

サ「まあ、いいからちょっとな。」

 

ゴキ

ベルの体が倒れる。

サブとその取り巻きの2人に囲まれていた。

「なにを・・・」

サ「俺はなあ、てめえが気に食わねえんだ。

親方さんはなあ、お前がくるまでは誰にでも平等に厳しいひとだった。」

取「それがてめえだけ、気に入られやがって・・・今日はとうとう命の恩人か。

ラグ星生まれのくせしやがって。」

昔の自分を思い出す。

「俺は・・・」

サ「うっせえ黙れ。」

もう一度殴られる。

サ「どうせ、パイプもお前がネジを緩めやがったんだろ。」

取「たっく賢いなあラグ星生まれは。」

サ「一石二鳥ってわけだ。」

「俺はそんな・・・」

サ「でも親方は騙せても、俺は騙せなかったってわけだ。」

バキ

サ「いいかてめえ、親方にいいやがったら、俺は積極的に手を抜くぞ。

それがどういうことか、賢いベルにはよくわかるよなあ。」

ベルは目を開いて拳を握る。

サ「お、やるってのか、ラグ星人。いいぜ。かかって来いよ。」

「俺は・・・」







前ページ     次ページ

戻る