今日もいつものようにシンゴの仕事場に騒音が響く。

しかしそれは作業の音ではなく・・・

「親父のやり方じゃ今の時代は生き残っていけないんだよ。」

「えええい、黙れっこの青二才がー。

世の中なんでも機械に頼ってたんじゃ、本当の進歩とはいえんわい。」

「だがヤツラは優秀だぜ。任せられるトコロは任せりゃいいんだよ。」

「黙れっ、黙れっ黙れーーーーっ。」

「この・・・わからずや。」

バタン

 

シ(あ〜あまたかあ。)

毎日のように繰り返される喧嘩にシンゴはまいっていた。

シ「ねえポルトさん。最近いつも同じ喧嘩だよ。もうやめようよ。」

ポ「うるさいっ。ひよっこはだまっとれ。」

シ「でも雰囲気が悪いとこっちも困るんだよね。」

ポ「全く、最近の若いもんは口ばっかり達者になりおって。」

ポ「技術屋の人間にはなにが一番大切か・・・全くわかっとらん。」

シ「なにが一番大切なの?」

ポ「この甘ったれがーー。そうやすやすと教えらんわい。自分で見つけるんじゃ。」

いつものでっかい雷が落ちた。

シ「ちぇっ。」

ふんぞり返るポルトさん。

休むことなく手を動かすシンゴ。

シ「・・・僕は家族が仲良く暮らすのが一番大切だと思うよ。」

ポ「・・・」

 

辺りも暗くなり・・・

仕事ももうそろそろあがりの時間なのにファーロさんは帰ってこない。

シ「僕ちょっと呼びにいってくるよ。」

ポ「あんな親不孝もんはほっといてええわい。」

その言葉は無視して、駆け出すシンゴ。

 

すぐ近くの港でファーロさんは遠くを見ていた。

「ファーロさん。」

「シンゴか・・・」

「ファーロさんの気持ちもわかるけど、仲直りしちゃったほうがいいよ。」

「いいんだ。あんな親父どうなっても・・・会えないほうがせいせいするさ。」

頑ななファーロさんにシンゴはポツリとつぶやく。

「ファーロさんはわかってないよ。」

「なに?」

「親と話したりうるさく言われたり喧嘩したり、それがどんなに幸せなことかわかってないよ。」

「シンゴ・・・」

「会いたくて、会いたくて・・・ヒック、それでも会えないひともたくさんいるのに・・・」

力強く見かけよりごつごつした腕でシンゴを抱きしめる。

「そうだな・・・俺は自分の夢に夢中で、周りのことまで考えてなかった・・・

俺のほうが子供だったみたいだな。」

「うえっうええっうえええーーーん。」

シンゴはファーロさんの腕の中で油まみれの作業着の端を強く握り締める。

「ゴメンな。」







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