奥の檻の前では男達が大声で論議の真っ最中だった。
「2450万ってトコロですかいな。」
「いやあ、1800がせいぜいでしょう。」
「オイオイ、何十年ぶりの大賞金首なんだぜ。そりゃねえだろう。」
「う〜む、しかし随分年代物のようですし。」
「だから、価値があるんじゃねえか。」
「そういう見方もできますなあ。」
「宣伝効果を狙って高くしといたほうが、この街も賑わって、人が集まるんじゃねえか?」
「う〜む。」
頭脳労働者っぽい連中の真ん中で息を撒いているのが、Aランクハンターのジュウゾウらしかった。
何度か見たことのある顔だ。
奥の檻が静かに輝いている。
様子をみようと近づくと粗野な風貌の男が行く手を塞ぐ。
「おいおい人の獲物に勝手に近づかれちゃ困っちゃうなあ。」
いやらしく薄ら笑いを浮かべる。
「いや、実物がどんなものか間近で確認しておきたくて・・・」
「いろんなヤツがおこぼれに預かろうと狙っているから、油断できなくてなあ。ただじゃみせられねえなあ。」
「なにかと交換させて欲しい。」
「なにを出す?」
「情報。」
「聞かせてみろよ。」
「今はない。」
「けっ用心深えなあ。お互いにな。
ま、もっともそれが常識だよな。どっちにしろガキが有益な情報を持ってるとはおもえねえなあ。」
自分のライセンスを見せる。
「Bランク、マスターか。ふ〜ん。」
腕を組みもったいぶって考える。
「ま、いいだろう今の俺は機嫌がいいんだ。2分だけみせてやろう。」
ジュウゾウがまた元の値の釣り上げに戻ったのを見届けて、カオルは檻に近づいた。
「おい。」
「ウウ・・・ゥ・・・」
「なぜあそこから出た。出るなといったはずだ。」
「ウ・・・ウ・・・」
なんて哀れな顔をするんだろう。
もし涙が流せたら、きっとコイツの顔はしわくちゃのはずだ。
「なぜ出たんだ。」
「オレユックリユックリデタ。
スコシズツスコシズツデタ。
ダレモミハッテルモノイナカッタ。
オマエのコトバはウソダッタ
オレモウイチドハシリタカッタ。
モットモットハシリタカッタ。
外はトテモスバラシイトコロ。
デモ外はトテモコワイトコロ。
オレをミテオオゼイのニンゲンがオレをオイカケテキタ。
オレドコマデモニゲタ。デモドコマデモオイカケテキタ。
オレアキラメナカッタ。ニンゲンもアキラメナカッタ。
イロンナモノをナゲラレタ。イロンナモノがトンデキタ。
コワイコトバもイッパイトンデキタ。
コワクナッテオレウゴケナクナッタ。
サイショノヒトとオマエのイウトオリ。
オマエのコトバはホントダッタ。」
泣きじゃくっている、ようにみえるゴールドマンをカオルは憐れむ目で見つめていた。
「おい、もう2分たったぜ。」
「ああ。」
立ち上がるとカオルはそのまま部屋を出て行った。
「情報を忘れるなよ。」
ジュウゾウの声が後を追う。