いつの間にかシトシトと雨が降り始めていた。

大いなる木の玄関口が開く。

ル「いらっしゃいま・・・あっメノリ。」

シャ「メノリー。」

ハワードが神妙な面持ちで腰を半分浮かせる。

メノリがみんなに迎えられる様子を確認して、席に座りなおす。

ハ「帰って・・・きたのか。」

こころの中でおかえりとつぶやくハワード。

ベ「おかえりメノリ。」

シ「いつもテレビ見てたよー。」

カ「大変だったんじゃないのか?」

ア「メノリーおかえり。」

チ「よお帰ってきたなあ、メノリ。」

メ「ああ、みんな、ただいま。」

メノリは目立たないが、綺麗な服を着て、少しお化粧がかかっていた。

シャ「メノリ、なんだか綺麗になったわねえ。」

シ「うん、大人っぽくなった。」

チ「お、ええ褒め言葉やないかシンゴ。」

ル「う〜〜ん、私も負けてられないわね。」

ベ「ルナはそのままでいいと思うよ。」

ア「うん。」

ル「えーなんで私だけー。」

ふくれっつらをするルナ。

メ「褒め言葉、私だけ・・・か。」

シャ「え?なあにメノリ。」

メ「いや、それより今日はちょっと寄っただけなんだ。」

ル「え?」

メ「この後もスケジュールが詰まっててな。すまないなみんな。」

ア「もういっちゃうの?」

メ「ああ。」

がたん

立ち上がるハワード。

ハ「なんだよソレ。

 僕達は仲間じゃないのか。

 ちょっと顔だけ見せて、またなって、お前一体何様のつもりなんだよ。」

ハワードを正面から見据えて言う。

メ「私はメノリ  ヴィスコンティだ。」

ハ「ふん、ちょっと売れてるからっていい気になって、前より高飛車なお嬢様きどりかよ。

 お前は僕達のことをなんだと思ってるんだよ。」

靴音を鳴らして、まっすぐにハワードに歩み寄ると、持っているアタッシュケースをハワードの目の前で開く。

メ「私はこのひと月で100万サヴァイヴを貯めてきた。」

チャコがテーブルの上から覗き込む。

チ「これは・・・ホンマに100万サヴァイヴ以上ありそうや・・・」

メ「これが私の努力の証だ。おまえは一体なにをしていくら稼いできたというんだ?」

ハ「う、うぐ・・・」

メ「言ってみろ、さあ。」

ハ「ぼ、僕は・・・」

メ「稼げもしない男が口だけで偉そうなことを言うな。」

ぱちーん

フロント内に頬を叩く音が響き渡る。

チ「ルナ・・・・・・」

ル「言い過ぎよ、メノリ。ハワードに謝りなさい。」

静寂が辺りを包む。

ハ「ルナ・・・」

シャ「ハワードだって、なにもしてなかったわけじゃないわ。」

シ「掃除とか、下手くそだけど料理とか、メノリのようには目立たないけど、

自分に出来ることをコツコツとみんなの為にやっていたんだ。」

カ「気付かなかったかもしれないが、遠い世界のお前に手紙も送っていた。

 下手かもしれないけどな。」

チ「ハワードはいっつもメノリのことを心配しとった。

 それを・・・見損なったでえ。メノリ。」

再び静寂が辺りを包む。

ア「メノリ・・・」

メ「私は・・・」

靴先を変え大いなる木の玄関に向かって歩きだすメノリ。

メ「私はどこにいっても嫌われものだな。」

迷いもなくみんなの温泉宿、大いなる木をでていく。

ル「メノリ、ハワードに・・・」

追いすがるルナ。

シ「もういいよ・・・ルナ。」

ベ「メノリ。」

ル「追わなくていいわベル。」

ベ「でも・・・」

みんな下を向いたまま、なにも言わなくなってしまった。

「ふっふっう、うえええーーーーーーーん。」

ル「アダム。」

「う、うっう、うええええええええーーーーーん。」

シャ「ゴメンね、アダム辛い場面をみせちゃって。」

ル「ちょっと奥で休んでようね。」

アダムを連れて、部屋に行くルナとシャアラ。

チ「アダムにはショックやったやろな。

 まさかメノリがあないなってまうとはな・・・」

シ「僕だって辛いよ。まさかメノリがあんなこと言うとは思わなかったよ。」

ハ「辛い・・・」

ハワードは凛と立ち上がってメノリの後を追う。

チ「ハワード。」

シ「行っても無駄だよ。」

ハワードの後を頼りなくブルキンが追いかける。





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