ハ「メノリのヤツどこへ行ったんだ?」
通りにでてきょろきょろと辺りを探す。
ブルキンが追いついた。
ハ「お、ブルキン。アイツの魂胆は読めてるんだ。
どうせなにか嫌なことでもあったんだろ。
みんなには当たれないから、器の大きいこの僕に八つ当たりしてるんだぜ。
全くアイツは僕がいないとなんにもできやしないんだからな。
しようのない奴だ。」
大通りの四つ角にでる。
ハ「さあてと、アイツどっちへ行ったかな?」
ぶーん
ブルキンがふらふらと真っ直ぐな道へと飛んでいく。
ハ「おい、そっちは・・・」
ブルキンが飛ぶスピードはゆっくりだが、それでもハワードの全力走よりははやい。
ハ「おーい、待ってくれよお。」
ぶーん
ブルキンが旋回してハワードの肩にとまる。
暗闇に降る雨の中をメノリは呆然と立っていた。
ハ「あの場所は・・・」
メノリはヴァィオリンを弾いて初めてこの星でサヴァイヴがもらえたあの場所を見つめる形で降りしきる雨の中をただ立っていた。
ハ「アイツ・・・」
ハワードも濡れたまま、呆然と立ちすくむメノリを見ていた。
ハ「そうだ。よーし。」
ハワードは見つけた仲間に歩み寄り声をかける。
「よっ」
雨の中で、右手の指2本をキザに頭のななめ前にあてるハワード。
「なんだ少しも入ってないじゃないか、なにやってんだ生徒会長。」
地面をのぞき込むハワード。
メノリの反応は無い。
「僕かあ?僕はなぁ。」
顔一杯に得意そうな笑みを浮かべる。
差し出したその両手にはあの時と違ってなにもない。
雨を受けるハワードの両の手のひらに雨でさびかけたブルキンがふらふらと頼りなく収まる。
少し驚くメノリ。
「・・・なんだそれだけか。とてもノルマには足りそうもないな。」
力無くだが相槌を打つメノリ。
「わからないじゃないか。ほらこの緑色の輝きのやつなんて10サヴァイヴはあるぜ。」
親指と人指し指で取り上げた、雨でさびかけてボロボロのブルキンは、微かに緑色の淡い輝きを放っていた。
「10・・・おまえにしては謙虚だな。」
「う・・・うるさい。気の毒な異星人がいてめぐんであげたからこれだけなんだ。」
メノリに顔を近づける。
「それにしてもいい音色じゃないか何人か聴いているふうな輩もいるようだぜ。」
ハワードとメノリと、そしてさびかけたブリキ虫以外誰もいない公園を見渡す。
「だがいれていかないんだ。しょうがないじゃないか。」
「わかってないな。」
ハワードは右手の中のブルキンをメノリの左肩にとまらせる。
「おまえなんかが味方してくれたって世の中渡ってはいけないんだよ。」
「馬鹿おまえは相変わらずいいとこのお嬢様だな。
世の中は仲間がいないと渡っていけないんだよ。
だから僕たちは本当の仲間になったんじゃないか。」
メノリの顔が上がる。
「ハワード・・・」
ハワードを見つめるメノリは、雨で濡れているのか、それとも泣いているのか判断がつかなかった。
「ほら、怒れよ、メノリ。」
メノリの目が点になってしまった。
メノリの肩のブルキンが大粒の汗を一滴垂らして心配そうに主人の顔を見上げる。
「あ、あれ?僕なんかおかしなこと言ったか?」
「ハワードそこは「笑えよ」じゃないのか?」
「あれ〜そうかなあ。」
「ぷック、クククククク。」
「そんなに笑うなよな。」
「アハハハハハ・・・・・・」
「あっあは、あははは・・・」
照れ隠しに笑うハワード。
「あははははは・・・」
ふたりの笑い声が夜の公園にこだました。