飛び出したカオルは、側面の壁を蹴るとまた次の壁を蹴ってベルの周りを回る。

必死にカオルを目で追うベル。

カオルはどんどんスピードを上げる。

(スピードなら絶対に負けない。)

トップスピードになったところでベルの背中をキックで狙う。

ベルの巨体が勢いよく壁に叩きつけられる。

(手加減は無しだ。)

追い討ちをかけるようにもう一撃。

しかし今度は壁を背に身構えたベルに捕まってしまった。

必死で払いのけようとするうちにボブの時と同じ体勢になってしまった。

(くっ。だが、さっきの準決勝で、もう両腕はまともに動かないはずだ。)

壁際で力と力で押し合うカオルとベル。

ベ「くっ。」

(やはり疲れている。)

そのままおすカオル。

ベルは背中と足の踏ん張りを壁にまかせ体重を乗せる。

(!しまった。この位置はまずい。)

そのままカオルを地面に押し付けようとする。

(追い詰めたつもりが、誘い込まれた?)

一瞬力を抜いて、横に体をすべらせるカオル。

ベルの両腕から離れて距離をとる。

そのまま中央に移動する。

ベルはしばらく壁際にいたが、カオルのいる中央に歩み出た。

(そうだな。これはどっちが勝つかの勝負じゃない。)

カオルは今度は側面だけじゃなく、天井と床も利用して、スピードをあげる。

(どっちが強いかだ。)

すごいスピードでベルの懐に飛び込んでアッパー気味に拳をいれる。

(これで、決まりだ。)

だがベルは倒れない。

何事もなかったかのように今度はベルの右ストレートが飛んでくる。

ギリギリで避けるカオル。

だがかわしたはずの、カオルの鼻からはわずかにかすったのか鮮血が飛び散る。

カ「クッ。」

ベルはリングの中央に位置をとるとエアシューズを脱ぎ放り投げた。

カ「?」

そして身構える。

(そういうつもりか。)

カオルもエアシューズを脱ぎ捨てて素足で猛然とベルの正面に突っ込む。

昔の熱い血がふつふつと燃え上がってきていた。

素足のまま、中央で殴りあうふたり。

カオルのストレートがはいると今度はベルの重い鉄拳が飛んでくる。

カオルもベルも今度はお互い逃げようとはしなかった。

リング中央でただの殴り合いの応酬が続く。




    


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