「すげえな。」
「いつまでやる気だ?」
「なんで立っていられるんだ?」
ベルの重い左拳がカオルの顔面にはいった。
(マズイ。今度くらったら立っていられない。)
半分無意識の中直感で悟るカオル。
自分の右拳をベルのみぞおちにいれるがベルは倒れない。
今度はベルの右拳がうなりをあげて飛んできた。
無意識のうちに左手で拳を掴む。
拳は止まらずカオルの頭の芯に衝撃が走るが、カオルは掴んだその手をはなさずにもう一度右拳をベルの顔面にいれる。
ベルももうろうとした意識の中でカオルの右拳を掴んだ。
さっきと同じような押し合いの体勢になったが、ふたりにまともな力は残っていなかった。
それでも最後の力を振り絞って相手をねじ伏せようとするふたり。
「おッーーと。壮絶な殴り合いから、、最後は力と力のぶつかり合いです。
ん?やはりベル選手のほうが若干有利でしょうか。」
少しずつおされるカオル。
ベルの腹に渾身の蹴りを入れて離れる。
しかし体勢を崩したのはもう体力の残っていない蹴りをいれたカオルだった。ふらふらと壁際に追い詰められる。
ベ「う、うおおおおおおおおお。」
最後の力で右拳を振りかざして迫るベル。
ベルのこぶしが自分の顔面を狙っているのがわかる。
軌道も不思議なくらいはっきり見える。
周りの時間がゆっくり感じられてスローモ−ションのようだ。
でも、俺の体は避けようとしてくれない。
(負け・・・た・・・)
カオルの意識は暗闇に捕われた。
控え室・・・
「カオル・・・」
「う・・・」
「気がついたかい?」
「俺は・・・」
「大丈夫?」
「試合は・・・終わったのか・・・。」
「ああ、終わったよ。」