「・・・・・・・・・」
「引き分けだよ。」
「・・・引き分け・・・」
「覚えてないの?」
(かろうじて覚えている。最後の最後で、自分の負けを悟ったことを・・・)
「俺がカオルを壁際に追い詰めてこぶしをいれようとしたら、
カオルの右足が凄いスピードで飛んできて、俺は意識を失ったんだ。
負けたと思って目を覚ましたらカオルが倒れてて、
レフェリーの人が「おめでとうございます。
両者ノックダウンによる引き分けです。それにしてもすごい試合でしたねえ。」って。」
「引き分け・・・」
「ああ。」
「賞金はどうなるんだ?」
「150万ずつだよ。」
「結局300万か。」
「そうだね。」
「・・・ベルは強かったな。」
「カオルこそ・・・強かったよ。」
「俺は・・・」
(最後の最後で自分の勝ちを諦めたんだ・・・でも俺のこの体は最後まで諦めなかったのか・・・)
「勝負はおあずけだね。」
「・・・・・・」
「負けないよ。」
右の拳を出すベル。
「俺も負けない。」
自分の拳をベルの大きな拳にあわせる。
ガラガラガラ
「ただいまー。」
ル「お帰りーキャアー。」
悲鳴をあげるルナ。
ル「どちらの星の方ですか。」
物陰から顔を出しておそるおそる尋ねる。
ベ「俺だよ。」
カ「カオルだ。」
ル「だってその顔・・・ふたりとも腫れ上がっちゃって。
一体今日はなにをしてたの?」
ベ「ちょっと・・・殴り合い・・・に巻き込まれて・・・」
カ「ああ。」
ル「ふ〜ん。ふたりをそんなにするなんて、相手の人はよっぽど強かったのね。」
ベ「うん。」
カ「強かったな。」
顔を見合わせて笑うふたり。
ル「?」
ベ「お土産だよ。」
カ「俺も・・・」
戦利品の入った分厚い封筒をふたつ、ルナの優しい手に渡す。