シャ「どうしてルナがこんな目に合うのかしら・・・」

チ「シャアラ・・・」

シャ「ルナは誰にでも優しかった。

  明るくて、元気で自分の元気をみんなに分けてあげることができて・・・

  世の中には自分のことしか考えてない人もいるのに・・・」

医「死は誰にとっても平等だよ。

 遅いか早いかの違いはあっても人はいずれ死ぬ。

 誰かが代わってあげることなんてできない。」

シャ「でも、どうしてルナが・・・ルナはみんなに必要な人なのに・・・・・・」

メ「落ち着けシャアラ。まだベルの答えがでていない。」

 

カ「俺のせいだ・・・」

シ「カオル?」

カ「昼間、以前から狙っていた獲物をようやく仕留めたんだ。

 50万サヴァイヴを手に入れて俺は得意になっていた。

 でもその獲物は神聖な生き物だったんだ。

 やめたほうがいい かかわっちゃいけない

 忠告してくれた人もいるのに、俺は夢中になって追いかけていた。

 だから、そのせいでルナが今・・・」

顔を伏せるカオル。

シャアラが歩み寄る。

シャ「出しなさいよ。」

カ「え?」

シャ「出しなさいよ50万サヴァイヴ。

  こんなものいらないって返してくるから・・・

  だからルナを元通りにしてよ。 

  元の元気なルナを返してよ。」

カ「・・・・・・」

メ「シャアラ・・・」

そっと抱きしめるメノリ。

シャ「うわっうえっうえええええーーん。」

シャアラのかすれた泣き声が響き渡る。

チ「き、気にすることあらへんでカオル。

 なんかを捕まえたから、言うて関係ない誰かが死ぬなんて、そないなこと聞いたことあらへん。」

シ「そうだよ。」

医「いや。宇宙は目に見えない因果関係でつながっている。

 遠い星の別次元の出来事が、全く別の世界に影響を及ぼすこともあることが最近の研究でわかってきてるんだ。」

星「最新の研究をせんでも、昔から諺なんぞでもいくらでも伝わっておる。

 だからワシら人間は一瞬一瞬を大事に生きてきたんじゃ。」

シ「そんな・・・」

シャ「やっぱりカオルのせいじゃないの。」

メ「シャアラ!」

きつく抱きしめるメノリも泣いていた。

メ「誰のせいでもないんだ。」

ハ「おいっ。ベルが帰ってきたぜ。」

シャ「ベルッ。」

チ「どうや。なんかわかったんか?」

首を振るベル。

ベ「親方にも、その前の代の親方にも尋ねたけど・・・わからないって。」

シャ「そんな・・・」

涙が止まらないシャアラ。

メ「諦めるな。まだできることがある。フェアリーレイクの町中の年寄りをあたるんだ。

 病院、養老院。当たれるところは全部あたろう。」

チ「メノリ・・・」

メ「さあ、シャアラ。こうしている間もルナは頑張ってるんだ。

 私達は私達のできることをやろう。」

シャ「・・・・・・うん。・・・ゴメン。メノリ。」

ハ「女は切り替えがはやいねえ。」

ハワードが空気を和ませようとして言っていることにみんなが気付いていた。

ベ「よしもう一度いこう。」

「うん。」

カオルは黙って座っていた。

ハ「ほら、お前もいくぞ。

 お前が一番行動範囲が広いんだからな。

 しっかり頼むぜ。」

カ「ああ。」

力なく立ち上がるカオル。

 

しかしどこの、誰に聞けばいい?

もうすぐ大事な仲間のひとりがもう二度と手の届かない所へ行ってしまう。

それを防ぐ術は多分もうないのだ。

うつろな意識でいつもの玄関口にでていく。

いつもの台の上にぬくぬくと寝ている三毛猫が一匹。

なにが起ころうと我関せずといった感じだ。

きっと自分のこと以外どうでもいいのだ。

昔の自分みたいだ。

あくびをする三毛猫。

そういえば前にだれかが言っていたな・・・

星ばあさんより年寄りだって。

ずっとずっと昔からいるって。

「おいっ。」

カオルが大声をあげる。

「アンタか?アンタだろ。ルナを元のルナに戻す方法を知ってるのは。」

邪魔くさそうにカオルの顔を見つめる猫。

「知ってるんだろ?なにかが必要ならなんでも、俺に手に入るものならなんでも持ってくるから・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うるさいねえ。わたしゃなんにもいらないよう。

強いて言うなら静かに寝かせておくれ。」

「やっぱり知ってるんだな。」

「わたしゃなんにも知らないよ。知っているのは私じゃなくてアンタだってことぐらいさね。」

「え?」

「今日誰か変わった人に会わなかったかい?」

今日・・・今日は誰かに新しく出会った記憶はない。

あの花を狩って空を見上げて・・・

「あ・・・」

「やっぱりなにかに会ってるんだね。」

カオルはもう一度東の荒地に行く為に走りだした。

「やれやれ。お礼くらい言うもんだよ。

人間はいつも自分が一番賢いつもりで、一番なんにも知らないねえ。」

もう一度自分の専用席で丸くなる三毛さん。




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