カオルはもう一度東の荒地にいた。

「おいっ。でてこい。」

カオルの声が荒野に響く。

だがなにを叫んでも、風のうねりが聞こえるのみだった。

「頼むから、でてきてくれ・・・

鬼でも蛇でもなんでもいいから・・・・・・」

カオルは大地に突っ伏して心から祈った。

辺りが暗くなる。

天空を見上げると長い細いものが降りてくる。

カオルの目の前に風を巻き上げて現れたのは一匹の巨大な竜だった。

「ドラゴン・・・」

ボ「ひゃっほうーとうとうでてきたぜー。」

ブ「長いことはってたかいがあったな。」

ジ「あのゴウツクバリのジジイが言ってた通りだねえ。」

どこかで見かけた記憶のある3人組が岩場の影から、現れた。

ブ「ん?てめえは・・・」

ボ「あーーっ。てめえは細目野郎の仲間の・・・」

ジ「あたしたちの賞金を持っていったやつだね。」

ブ「ほう。ハンター酒場でもみたことがあるな。

 確かBランクのマスターだろ?」

カ「・・・」

ブ「おっと、今はそんなことはどうでもいい。

 伝説のドラゴン様が現れやがったんだ。 

SSSランクで存在すら確かでないっていうな。」

ジ「他のハンター共は散々馬鹿にしてやがったけど・・・」

ボ「本当にいやがったってわけだ。」

ブ「ああ、見たっていう証拠を持ち帰っただけでSランクに昇格は間違いねえ。

 捕まえて持ち帰れば・・・」

ジ「死ぬほどの金が手に入るってわけだ。」

ボ「俺たちのコロニーへ帰るのも簡単ってわけだ。」

「へっへっへっへ。」

カ「くっ。」

ボ「おっ。俺たちとやろうってのか?」

ジ「ここにはルールなんて優しい鎖は・・・」

左手の鞭を一振りするジルバ。

ジ「ないんだよ。」

にやりと笑うジルバ。

ブ「そんなガキ放っておけ。それより・・・」

レーザーガンを竜の眉間にあわせる。

ブ「こいつをどうやって持って帰るかだ。」

カ「やめろ。」

ジ「ボウヤは引っ込んでな。」

右手の毒針銃をカオルに向ける。

ボ「ブリンドー。やっちまいな。」

ブ「へっ。」

 

ブリンドーの銃からレーザーが放たれる。

目をそむけるカオル。

ドラゴンは なんの反応も見せず、そこに鎮座していた。

ブ「こいつ・・・」

ボ「なにやってんだ。ブリンドー。」

ジ「どんどんぶち込みな。」

ブ「てめえ。」

何十発も撃ち込むブリンドー。

しかし手応えはない。

カチッカチッ

ブ「エネルギー切れか。ジルバお前も撃て。」

ジ「それが・・・さっきから撃ってるけど・・・」

ブ「ちっ。」

舌打ちを打つ。

ブ「ならこの爆弾で・・・」

ボ「それも通用しそうにねえぜ・・・」

ジ「じゃあ、どうするんだい。」

ドラゴンは息を吸い込むと軽く鼻息を吐く。

「うわあああー。」

吹き飛ばされる3人組。

カオルと巨大すぎる竜だけが残された。

カ「頼む。大切な仲間がしにかけてるんだ。

 そいつはみんなにとって必要な人間なんだ。

 俺がアンタの仲間を殺したせいだっていうのなら、ソイツじゃなくて俺の命を持っていってくれ。」

ドラゴンはなんの反応も示さない。

カ「頼むよ。」

風だけが鳴いている。

カ「・・・・・・なら、証拠をみせてやる。」

カオルは愛用の黒曜石のナイフを取り出すと、自分の目の前で自分に向けて構えた。

カ「ここで、俺が俺を殺してやる。だから・・・」

竜の目がカオルを睨む。

覚悟を決めたカオル。

「サヨナラだ。みんな・・・」

鋭い刃を自分の胸に突き立てる。







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