カ「・・・」
突き立てたはずの自分の体に手応えがない。
気付くとカオルは竜の背に乗っていた。
「私と共にいられたらおまえにもなにかがわかるだろう。」
カオルの脳裏に声ならざる声が響く。
竜はその体を宙に浮かべるとカオルと共に太陽に向かって消えていった。
カ「う・・・」
カオルが目を開けるとそこは、地上を遠く離れた遥か高い空の上だった。
下界では、いくつもの大陸と、島、人々の住む町、そして大きく広がる青い海が見えた。
カオルの心の中に、下界に住む、多くの人々、そしてたくさんの生き物の、思っていること、感じていること、
色んな感覚が自然に流れ込んできた。
竜は、空を翔けるスピードをドンドン上げる。
世界中を周る気だろうか。
カオルは振り落とされないように、その鬣(たてがみ)をしっかりと掴んだ。
いくつもの、大陸と海を一瞬で周る竜。
その間も、たくさんの生き物の意識が流れ込んでくる。
ますます加速する速度に、カオルの腕と心が耐え切れなくなってきた。
必死でしがみつくカオル。
それらは全部、永遠より長いような、一瞬よりも短いような時間だった。
どこまでもどこまでも、天を翔る竜に、カオルはついていけなくなった。
たてがみを握る手が、竜から離れる。
「うわあああーー。」
真っ逆さまに天空から地上に落ちるカオル。