「う・・・」

意識を取り戻したカオルがいたのは、フェアリーレイク東の荒地だった。

「ダイジョウブ?」

心配そうにゴールドマンがカオルの体を支える。

「俺は・・・」

「ココにタオレテタンダヨ。」

頭に手をあてて意識を取り戻す。

「すごいな・・・」

「カオル?」

「この世界の凄さを思い知らされたよ。

どこまでもどこまでも広かった。

陸も海も、そしてそこに住む人や、生き物の心の中の広さも・・・流れる時間さえも・・・

俺が今まで見ていた世界はとても狭い世界だった。」

「カオル・・・」

「俺は宇宙をみているつもりで今までなにを見ていたんだろう。」

「・・・でも、そんなに広いこの星の上にも、たくさんの星があって、その上にも星があって、その上にも星があって、

そしてどこの星にも、気の遠くなるような長く重い歴史と、果てのない未来があって、限りなく繋がる命があって、

それで、宇宙なんじゃないかな。」

いつもと違う声に驚いてゴールドマンを見るカオル。

「ニンゲンはキヅイテナイヒトがオオイミタイダケド、ソノオモスギルジカンサエモウケトメテ、

´一瞬一瞬´をトテモダイジニイキラレルチカラをミンナがモッテルンダヨ。」

「おまえ・・・」

「?」

「ああ、そうだったんだな。」

目の前の果てしなく広い荒野を見つめるカオル。

 

「ソレでルナサンをタスケルホウホウハミツカッタノ?」

「・・・小さすぎる俺には、たとえ命をさしだしても、他人を救う力はないようだ。」

「カオル・・・ソレ・・・」

カオルの手には、銀髪の硬く太く長い毛が一本握り締められていた。




前ページ     次ページ


戻る