根本的な原因に対応することを,疾患の治療と普通言っています。褥瘡は圧迫とズレが原因であるため,本当の褥瘡治療は圧迫とズレにどう対応するかということになります。対処方法でまず考えることは,体位変換と体圧分散用具です。体位変換とは体の位置や向きをかえることで,仰向けから横に体の向きを変えると,褥瘡ができやすいお尻に加わる圧を0にすることができます。ただし,真横だと肩や股関節から骨盤の外側が体の下になり,ここに圧がかかって褥瘡を作る危険があります。補助クッションを使いどちらか片方の体を浮かし30度体を傾けた位置にすると,骨突出がないお尻の筋肉の部分で体を支えるため褥瘡の危険は少なくなると言われています。ベッドごと上半身を上げるとき,上げ過ぎるとお尻に強い圧迫力やズレ力が生じます。上げるときは膝を先に上げ上半身が移動(下方へ,お尻の方向へ)するのを防いだり,上げたあと上半身を前方に起こし背中を浮かす「背抜き」をして,皮膚の圧迫力やズレ力を軽減させます。仰向けに戻したときも,左右に軽く体を傾けたり腰を持ち上げて「背抜き」をします。「背抜き」により,背中やお尻に生じた皮膚の歪みを無くすのです。上半身の不適切な移動を防いだり食事の食べやすさを考えると,上半身をベッドごと上げるのは,30度程度にすべきと言われています。
体圧分散用具は圧迫の程度や時間を少なくし,褥瘡の予防と治癒促進に利用できる用具です。エアやウレタンのマットレス,車いす用クッションなどがあり,(1)体圧分散(2)体位変換の効率化(3)ズレや摩擦の軽減(4)通気性改善(5)寝心地改善などの効果を持っています。ただし,医療施設だけでなく一般の方にも手が届く金額のマットレスにも,製品によって体圧分散効果に違いがあります。効果の特に優れた高機能タイプとそれ以外の汎用タイプです。エアマットレスだから大丈夫という方がいますが,そんなことはありません。ちゃんと体圧分散効果がある製品でなければ,意味がありません。体の状態に応じて高機能と汎用タイプをうまく選択することも大切です。自力で動けず骨が酷く飛び出ている方,さらに関節が曲がった状態でかたくなっている方,またすでにある褥瘡がどんどん悪くなっている方などは,高機能タイプのマットレスを積極的に使用した方が安全です。
なお,体位変換は2時間ごとに行うのが基本と言われていますが,体の具合はそれぞれの方で違いますから,2時間で絶対良いとは言い切れません。体の状態で,時間を調整しましょう。また,体位変換の間の圧迫も軽くするためには,体圧分散効果があるマットレスを積極的に利用すべきです。体位変換と適切な体圧分散用具の使用をともに行うことで,褥瘡の予防と治癒の促進を図ることができます。
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体に垂直に加わる圧迫
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体に平行に加わるズレ
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高機能型エアマットレス
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高機能型エアマットレス |