各地には、古い由緒を伝える神社が多数あります。 各神社には、社殿があり、斎垣で囲まれ、境内や参道には狛犬が置かれ、常夜灯や灯篭、鳥居が建てられています。 中世まで、社殿はもとより、斎垣も鳥居も木造で朱塗りが通例でしたし、灯篭も木造でしたが、近世になって、城の石垣や城下の川岸に石垣が使われて石工の技術が向上し、神社の斎垣や鳥居も石造になり、石の灯篭や石の常夜灯が増えていったようです。常夜灯の大きさや数、古さから、それぞれの神社の歴史の一端を感じ取れます。 そこで、この付近(海田市駅を基点に概ね半径4kmの円内)にある神社の常夜灯の現状をまとめてみました。 神社が12社あり、常夜灯の合計は参道の左右に並ぶ54対と参道入口などに単独で立つ5基とがあります。 下記の表で常夜灯の建立時期に「**世紀」としてあるのは、風化などで刻字が読み取れないための推定です。建立時期の後に続く記号は基壇の最下段の一辺の長さによる区分で、S=100cm以下、M=100~180cm、L=180cm以上。丸数字は各神社毎の建立順序です。
それぞれの神社の成り立ちは立地する土地の固有の由緒や歴史を反映していますが、常夜灯についてのみ概観すると、次のようになります。 1、自然石を活用したものが出崎森神社③(下の写真左上)など4例あります。加工工数が少なくて済むので大きなものができます。 2、初期のものでも意外に大きなものがある一方、ごく最近の建立でも小さなものがあります。小さなものは形もシンプルで、基壇が2段の例もあり、大きなものは基壇を4段にしたものがあります。 3、立地点は参道の坂(石段)の両脇に建てられたものと、坂の手前や境内など平地に建てられたものとあります。大型のものは平地に建てられています。採り上げた11社は全て社殿自体が小高い丘の上に建っているので、参道に石段を伴い、その両側に常夜灯を建てる配置が見られますが、場所の制約上、常夜灯はやや小ぶりになります。 4、基壇は概ね3段ですが、坂に建てる場合は基壇の下に水平な基盤を必要とします。水平面の周りを石垣で囲ったり、小型の常夜灯の場合は直方体に加工した石材を組んで基盤とし、それが半ば斜面に埋もれている場合もあります。 なお、熊野神社(海田)には参道脇に大きな常夜灯が1対しかありませんが、境内に灯篭が6対あり、合わせると神社の規模と釣り合いがとれています。 また、規模が小さいので上表に記載していませんが、矢野・姫宮神社は安芸国神名帳に載る由緒の古い神社で、明治34年から昭和9年にかけて建立された小型の常夜灯が3対あります。 右の写真には、代表的なものを採り上げました。 岩滝神社の常夜灯については、番外5、船越の常夜灯をご覧ください。 常夜灯に限らず、刻字で石造建造物の建立時期を確認できるのは享保年間(1720年代)までですから、石造の常夜灯は18世紀始め頃から広まったようです。 数や大きさを別として、殆んどの神社では石造の常夜灯を建てることが18世紀末には一般的になっていたようです。 |