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Our Way To Love 4


 編み物をするといっても、どうしても家に帰ってからの数時間しかなくて、予想外に手間取っていた。
 ラクロス部の練習試合も近く、クラブのある日は疲れ果てて編み棒を持ったままベットの上で寝ちゃってたこと もあった。
 そして、それ以上に進まなかった原因は・・・・・。
「はぁ」
 そのことを考えると、いつもため息がでてしまう。
”唐沢さんに好きな人がいるなんて知らなかったな”
 あの時の渡会さんの言葉が頭をよぎる。
 私の、好きな人。
 先輩が?
 そう言われるまで、そんなこと今まで思っても見なかった。
 真咲先輩は、いつもやさしくて、一緒にいると楽しいし、お兄ちゃんがいたらこんな感じかなとか思ったことはあ るけど、それ以上の好意を自覚したことはなかった。でもマフラーの話をしたときに感じた胸の痛みも、私の気持 ち。
 自分で自分の気持ちが分からない。
「はぁ」
 そうして気が付くと編み棒を持った手が止まっている、その繰り返し。
「あー、もうっ! こんなんじゃ駄目駄目!」
 明日はもう先輩の誕生日。
 時間がない。
 私は髪をぐっと結ぶと、背筋をぴんと伸ばしてベットの上に座りなおす。
 編み棒を構えると、何も考えないようにしながら手を動かし始めた。

 ただ、無心に。


   翌朝、あくびを噛み殺しながら教室に入ると、渡会さんが私の顔を見て眉をひそめた。
「あ、おはよう」
「おはよう。徹夜したわね?」
「やっぱり、わかる?」
 私の返事に渡会さんは、大きくため息をついた。
「そんなに目が真っ赤で、クマまで作って・・・魅力激減かも」
「半減じゃなくて、激減なの?」
 自分の席へと歩きながら、渡会さんの言葉にちょっと傷つく。
 そ、そんなにひどいのかなぁ・・・・。
 自分の机の上に鞄を置いて、中からハンドミラーを取り出してみる。
 うーん、目はいつもよりちょっとだけ赤いだけだし、クマもそんな大騒ぎするほどでもないと思うんだけど。
「ちょっとだけ、とか思ってるでしょ」
 目の下のクマを指でなぞっていると、ハンドミラー越しに渡会さんが覗き込んだ。
「! び、びっくりした」
「そのままでいると、夕方にはすごいことになっちゃうよ」
「えっ? 本当に?」
 私の反応に、再び渡会さんは大きなため息をついた。
  「HR終わったら保健室に行って寝なさい」
「はい?」
 私よりかなり小柄な渡会さんを、思わずぼーぜんと見下ろしてしまう。
「1時間目、若王子先生の授業でしょ。ちゃんと言っておいてあげるから」
「で、でも」
 いくら寝不足とはいえ、自分が悪いんだし。そんなことで授業休むなんて・・・・。
「唐沢さんがそんな顔でマフラー渡したら、先輩はどう思う? 俺の為に!って喜んでくれるタイプじゃなさそうだから、 無理させたんじゃないかって心配しちゃうんじゃないの?」
「あ・・・」
 その後は何も言えなくて、大人しく渡会さんの言うとおりにするしかなかった。
 ちなみに若王子先生には、
「放課後、将来のかかった大事な勝負があるんです。だから、午前中は彼女を休ませて上げて下さい」
 と言ったらしい。
 渡会さんの理由もすごいけど、
「やや、それは大変です。そういう理由なら仕方ないですね。唐沢さんには絶対に勝つようにと、伝えてください。」
 とあっさり許可した若王子先生はもっとすごいと思う。
 でも将来のかかった大事な勝負って、なんだかなぁ・・・・・。

 渡会さんのはからいで、午前中の授業は全部サボって保健室で熟睡してしまった私。昼休み開始のチャイムとともに目を覚まして、 保健室の先生が苦笑してた。

つづく

  

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