漢方の養命庵 中野薬局

用語解説
熱証 からだや病気が興奮的・亢進的・炎症的な状態
寒証 からだや病気が萎縮的・衰退的・アトニー的な状態
実証 体力が充実するとともに、排除されるべき病毒(邪気)も充満していて、病気と力強く戦っている状態
虚証 体力が虚弱で、病気に対する抵抗力が弱い状態
表証 病気がまだ浅く、頭・項背部・腰部という体表部に苦痛や症状のある状態
裏証 病気がそれよりも深く、胸部・腹部など、内臓に苦痛や症状がある状態
陽証 からだや病気が陽的な状態
陰証 からだや病気が陰的な状態
燥証 体内水分の絶対量が不足している場合で、
多尿・皮膚枯燥・口渇・乾咳などの症状がある場合
湿証 体内水分が局部的に過剰の場合で、
乏尿・浮腫・腹水・胃内停水・喘鳴などの症状がある場合
升証 興奮・喀血・吐血・咳・汗の出すぎ・のぼせ・便秘・無月経など、
上に向かう症状が強すぎたり、下に向かうべきものが欠如したりする場合
降証 下血・汗が出ない・多尿・下痢・月経過多・脱力など、
下に向かう症状が強すぎたり、上に向かう症状が欠如したりする場合
散証 多汗・嘔吐・下痢・下血・頻尿・遺精など、病的に外に出る症状のある場合
収証 便秘・尿量減少・長期的過少月経・痰の出ない乾咳・発疹が出るべくして出ない場合など、
出るべきものが出ない症状のある場合

温(熱)性薬 からだを温め、新陳代謝を盛んにする薬
寒(涼)性薬 炎症を去り、興奮を鎮める薬
補性薬 からだを補い強化する薬
瀉性薬 からだに入り込み、または蓄積した余計なものを体外に駆逐する薬
燥性薬 体内の水分を排泄する薬
潤性薬 体内の水分を保留し、からだ(一部または全部)を潤す薬
升(昇)性薬 興奮・発汗・止瀉・下部出血の防止等、作用が上に向いて働く薬
降性薬 止汗・鎮吐・鎮咳・鎮静・上部出血の防止・瀉下・利尿など、作用が下に向いて働く薬
散性薬 発散・発汗作用のある薬(作用が外に向かって働く薬)
収性薬 収斂・止汗・止瀉などの作用のある薬(作用が内に向かって働く薬)

人間を生かしているエネルギー、つまり生命力そのもの。
気のめぐりが悪化すると、バランスを崩して上半身に気が上昇したり、気のめぐりに滞りができたり、気が減少したりします。
「気」の異常には気滞と気虚があります。
気滞 気が滞っている状態。
静的な滞りである「気うつ」と動的な異常である「気逆」があります。
気うつ 気がうっ滞した状態で、気力がなく憂鬱、倦怠感、日中眠い、食欲がない、便通異常、呼吸が浅い、息苦しい、腹壁全体が軟弱等の症状を特徴とします。
気逆 気が逆流し、上昇する状態で、上半身ののぼせと下半身の冷えが同時に起こるのが典型的症状で、不眠傾向、腹部膨満感、腹部の強い痛み、ゲップ、乳房の張り、イライラ感、動悸、過呼吸、頭痛・頭重感などもみられます。
気虚 気が減退・減少した状態で、原因の多くは胃腸虚弱による消化吸収機能の低下です。
疲れやすい、食欲がない、眼光や声に力がない、気力も乏しくなり、めまい、立ちくらみ、風邪をひきやすい、下痢傾向などの特徴がみられます。

(けつ)
「血(けつ)」は「気」によって巡らされている液体のこと。
栄養をつかさどり、いろいろな病気の因子からからだを守るもの。
さらに、生理的恒常性(ホメオスターシス)を守る働きもあります。
生理的恒常性(ホメオスターシス)とは、外界の環境が変化しても体内環境を一定状態に維持する作用で、呼吸、体温、水分などが過剰または欠乏に傾くと自動的に平衡状態に戻そうとするもの。
そのバランスを調節しているのが自律神経とホルモンですが、漢方では「血」の乱れが生理的恒常性(ホメオスターシス)を乱す元凶と考えます。
「血」の異常には血実、血虚、瘀血があります。
血実 血が多すぎて、充血している状態
血虚 血が不足している状態で、血色不良、皮膚の乾燥、目のかすみ、不眠、手足のしびれ、けいれん、腹直筋のこわばり、生理不順などがみられます。
瘀血 血がスムーズに流れず停滞している状態、ならびにその状態がもたらす異常。
口の渇き、下腹部痛、脇腹や腹部の圧痛、肌荒れ、肌の黒ずみ、色素沈着、手のひらの赤らみ、目の下のくま、赤黒い顔いろ、歯ぐき・舌・唇が赤い、毛細血管の露出、熱感、神経症状、月経異常、痔などが特徴です。
漢方では瘀血を重視します。

(すい)
体内にある「血」以外の水分を指します。
「気」とともにからだを巡るもので、体液や分泌液、尿や浸出液のこと。
水の異常には水毒があります。
水毒 水の停滞や偏在そのもの、またはその結果による異常症状を指します。
口の渇き、むくみ、頭重感、めまい、動悸、息切れ、咳や痰、けいれん、関節痛、手足の冷え、水太り、腹部のゴロゴロ音(腹鳴)、胃内停水など。
急性アルコール中毒、熱中症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、神経痛、腎障害、関節リウマチなどが水毒によるものとされています。

胃内停水
(いないていすい)
みぞおちのあたりを軽くたたくと、ポチャポチャと水の音がする状態。
痩せ型で胃下垂、胃アトニー(胃壁の筋肉の緊張が低下した状態)の人にみられます。
胸脇苦満
(きょうきょうくまん)
両側の肋骨の下からみぞおちにかけて、はりやつかえ感があり、押すとはりや抵抗が見られる状態。
ぜんそく、肝臓や胆道の病気のある人によくみられます。
心下痞硬
(しんかひこう)
みぞおち部分につかえた感じがあり、押すと痛みや反射的な抵抗がある状態
つかえ感がなくても、押すと痛みや不快感を感じることがしばしばあります。
消化器の病気でよくみられます。
小腹硬満
(しょうふくこうまん)
下腹部、とくにおへその下部が硬く膨れており、押すと痛みや抵抗がある状態。
これは瘀血の表れで、月経異常などの女性特有の病気や肝臓の病気でみられます。
小腹不仁
(しょうふくふじん)
下腹部に触れると、腹部の筋肉が弱く、押すとやわらかくへこむ状態。
これは虚証の表れで、足腰や下半身の弱い人、お年寄りなどによくみられます。
臍下不仁(さいかふじん)とも呼ばれます。
心下悸
(しんかき)
みぞおち周辺で動悸を触れること。